サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
パリ五輪
www.foreignaffairsj.co.jp
すべての道は北京に通ず ―― 習近平の遠大なビジョンのリスクと機会 China's Imperial President Xi Jinping Tightens His Grip 経済的な成功にもかかわらず、中国が政治的に漂流しているタイミングで習近平は国家主席に就任した。政治腐敗問題とイデオロギーの形骸化に苦しむ中国共産党は大衆の信任を失い、社会騒乱も深刻化している。依然として見事な成長軌道にあるものの、中国経済は柔軟性を失い、先行き不透明感が高まっている。グローバルな経済大国としての地位を確立しながらも、その実力に見合うような影響力を行使できていない。こうした停滞を前に習近平は、彼のため、共産党のため、そして中国のために権力の強化を模索するようになった。共産党の伝統的な集団指導体制を拒絶し、厳格な中央集権型政治システムにおけるより大きな権限を持つ指導者として自らを位置づけた。だが彼
「私は移民に開放的だ」と自負しているヨーロッパ人でさえ、「イスラム系移民はそのアイデンティティを捨てて、ヨーロッパの習慣を身につけるべきだ」と考えている。右派のポピュリストはこうした市民感情を利用して、「(移民に寛容な)リベラルで多様な社会という概念」とそれを支えるリベラル派をこれまで攻撃してきた。だがいまや、極右勢力は「言論の自由を否定し、シャリア(イスラム法)の導入を求め、ユダヤ人、女性、同性愛者に不寛容な国からの移民たちが、ヨーロッパの秩序そのものを脅かしている」と主張し始め、リベラルな秩序の擁護者として自らを位置づけ、これまで攻撃してきたユダヤ人を連帯に組み込むようになった。問題は、ユダヤ人とイスラム教徒を交互に攻撃して秩序を維持しようとするやり方が単なる政治戦術にすぎず、このやり方では未来を切り開けないことだ。むしろ、ヨーロッパ人が自画像を変化させ、自分たちの社会が移民社会である
3本の矢すべてが標的を射抜けば、安倍政権が強気になってもおかしくはない。だがすでに2本の矢は大きく的を外している。財政出動による景気刺激効果は、赤字・債務削減を狙った時期尚早な消費税率の引き上げによって押しつぶされ、構造改革は曖昧なスローガンが飛び交うだけで、具体策に欠ける。量的緩和も、他の2本の支えなしでは機能しないし、物価上昇の多くは円安による輸入品の価格上昇で説明できる。結局、自信を取り戻すには、有意義な構造改革を通じて停滞する日本企業の競争力を回復するしかない。そうしない限り、一時的な景気浮揚策も結局は幻想に終わる。問題は、安倍首相がもっとも重視しているのが経済の改革や再生ではなく、安全保障や歴史問題であることだ。
21世紀の資本主義を考える ―― 富に対するグローバルな課税? Capital Punishment ―― Why a Global Tax on Wealth Won't End Inequality 西ヨーロッパが19世紀後半に享受した平和と相対的安定は、膨大な資本蓄積を可能にし、先例のない富の集中が生じ、格差が拡大した。しかし、二つの世界大戦と大恐慌が資本を破壊し、富の集中トレンドを遮った。その後、新たに平等な時代が出現したが、1950年から1980年までの30年間は例外的な時代だった。1980年以降、拡大し続ける格差を前に、19世紀のような世界へと現状が回帰しつつあると考え、格差をなくすために、世界規模で富裕層の資産への課税強化を提言する専門家もいる。しかし、大規模な資産税は、資本主義民主体制が成功し繁栄するために必要な規律と慣習とうまくフィットしない。もっとも成功している
プーチンはウクライナの混乱と流動化を注意深く見守っているはずで、拙速な行動は控えるだろう。欧米の政策にロシアを関与させ、それがウクライナをめぐる米欧とロシアの主導権争いではないことをモスクワに認識させなければならない。ウクライナがさらにカオスに陥っていけば、欧米とロシアの双方にとって非常に厄介で危険な事態に直面する。プーチンも軍事介入は望んでいないはずだ。だが、介入せざるを得ない事態にウクライナが陥る恐れはある。誰もが、いまは非常に危険な状況にあるとみなし、慎重でなければならないと考えている。
中国の台頭で変化した日ロ関係 ―― 和解を模索しつつも、不透明な未来 Gang of Two ―― Russia and Japan Make a Play for the Pacific いまや中国の台頭が、あらゆる地域関係を緊張させている。ロシアはオホーツク海、北極海での中国の活動に神経をとがらせ、一方の日本は尖閣問題を憂慮している。東京は、尖閣問題をめぐって軍事衝突が起きるのではないかと憂慮している。中国だけでなく、韓国との関係も不安定化し、東京はアメリカとの同盟関係を補完するために、北東アジアでもう一つの友好関係を確立したいと考えている。こうした中国の台頭に伴って変化する地域環境のなかで、2013年に開かれた日ロ「2プラス2」会合は、両国の関係を先に進める大きなステップだったとみなせる。日ロ間の懸案である北方領土問題にも変化の兆しがある。ソチオリンピック後に、プーチンは日本を訪問
ルーズベルト米大統領にナチスドイツに関する情報分析機関を立ち上げるように求められたウィリアム・ドノバンは、フランツ・ノイマンを筆頭とする「マルキストのユダヤ系ドイツ人思想家」たちにその分析を依頼した。彼らによれば、「ナチスの急進的反ユダヤ主義は、可能なかぎり多くのドイツ人をナチスによる犯罪の共犯者にすることが狙いだった」。彼らは「自分の手が血にまみれていることをドイツ人が認識していれば、連合国と最後まで戦い抜く」とナチスは考えている、と分析していた。こうして、ノイマンと彼のチームは「反民主的な集団が残存するのを許さない絶対的な勝利でない限り、結局は先の敗戦の再現になる」と提言した。ナチズムの基盤をいかに根絶するかについては、「まず連合国が連帯を維持することが不可欠だ」と指摘した上で彼らは次のように提言した。「ドイツを占領し、第三帝国の犯罪の責任を負うべきエリートたちを去勢し、ナチス党を非合
イランは対話・交渉路線を模索する ―― 最高指導者ハメネイの思想 Who Is Ali Khamenei? ―― The Worldview of Iran's Supreme Leader イランの最高指導者、アヤトラ・ハメネイは聖職者としては、一風変わった過去を持っている。青年期に世俗派の反体制指導者たちと交流し、イスラム革命前に彼らの思想を吸収しているだけでなく、西洋の文学を耽読する文学青年でもあった。レフ・トルストイやミハイル・ショーロホフの作品を絶賛し、バルザックやゼバコの小説を愛読した。なかでもビクトル・ユーゴの『レ・ミゼラブル』が大のお気に入りだった。ムスリム同胞団の思想的指導者サイイド・クトゥブの著作からもっとも大きな影響を受けているとはいえ、ハメネイは、科学と進歩は「西洋文明の真理」であり、イランの民衆にもこの真理を学んで欲しいと考えている。彼はクレージーでも、支離滅裂
<超高齢社会と社会保障の重圧> 日本ほど急速に高齢化が進んでいる国もない。1985年から現在までに、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は10%から25%に増え、2060年までにはその比率は40%に達すると考えられている。しかも、それまでに、日本の人口は現在の1億2800万から1億を下回るレベルへと低下すると予測されている。(訳注 65歳以上の人口が総人口に占める割合によって、7%―14%が高齢化社会 14%―21%が高齢社会、21%以上が超高齢社会と区別されている) 高齢化という人口動態上の変化は比較的最近の出来事だが、すでに日本の財政に大きな重荷を作り出している。2014年には日本が抱える公的債務がGDPの240%に達すること、この対GDP比債務比率がギリシャのそれよりもはるかに高いことは広く知られている。だが、日本が抱える債務の一部が、年金財源の収支ギャップに派生していることはあ
<貿易と領有権論争> 冷戦期の米ソは相互確証破壊論を前提に、核戦争を回避することに慎重に配慮してきた。核戦争が起きれば、ともに滅ぶ運命にあることを米ソは理解していた。現在、日中間の緊張が高まりをみせているが、相互抑止の経済バージョンが不安定な現状の維持に貢献している。 2012年秋、日本が1世紀以上にわたって実効支配している諸島をめぐって日中の対立が激化するなか、中国市民の多くは日本製品をボイコットし、反日デモに参加するために街頭へと繰り出した。中国政府が煽り立てた部分もあるこの大きな混乱を前に、日本政府は「輸出市場として中国に依存していることを逆手にとって、中国は日本に領土上の妥協を強いるつもりではないか」と懸念していた。 すでにアメリカはこのタイミングで、(「尖閣諸島は日米安保条約第5条の明確な適用対象 となる」と表明して)日本への防衛コミットを確認していた。こうした状況ゆえに、日
CFR Interview エドワード・スノーデン問題を法的に検証する ―― 情報収集関連法の曖昧さとテクノロジーの進化 Extraditing Edward Snowden エドワード・スノーデンがアメリカに送還されるかどうか。これは、現在、彼が(アメリカが犯罪人引き渡し条約を結んでいない)ロシアにいるだけに、法的プロセスというよりも、高度な政治プロセスになる。彼の発言からみても、スノーデンが、政府が所有する情報を盗み、機密情報をNSA(国家安全保障局)の監察官ではなく、それを漏らすべきではない相手に提供し、手続きを踏み外していることはほぼ間違いない。したがって、彼が公開した情報で存在が確認された監視プログラム(プリズム)に仮に違法性があるとしても、スノーデンは内部告発者保護法の適用対象にはならない。したがって、告発とはみなせない。だが、アメリカで裁判にかけるとなると陪審制度という非常
懐にある以上のカネは使うなという緊縮財政の思想は直感的な説得力をもっている。だが、ユーロ危機後のヨーロッパのケースからも明らかなように、緊縮財政は機能しない。この1世紀を振り返っても、政府支出を減らして成長を呼び込めた歴史的な事例は存在しない。大恐慌期に各国で実施された緊縮財政は状況をさらに悪化させ、最終的に日独を戦争へと駆り立ててしまった。緊縮財政は失業と低成長をもたらし、社会格差を増大させるだけで、それが消費を刺激し、成長を促すことはあり得ない。唯一機能するのは、経済ブームに沸き返る大国を輸出市場にもつ小国が緊縮財政を実施した場合だけだろう。むしろ、政府は民間部門が債務をなくせる環境をつくり、公的支出を維持する必要がある。そうすれば、民間部門が成長するにつれて、税収も増大し、債務や赤字を削減していけるようになる。シュンペーターの言う「創造的破壊」を可能にするのは、「ケインズ主義の浪費」
岐路にさしかかった日本の外交・安保政策 ―― 変化した国際環境で問われる日米同盟の価値 Japan’s Cautious Hawk 日本は、外部の国際環境を所与のものとみなすことで、日本人が「時流」とよぶ国際的な流れに乗るために、現実的な調整を試みてきた歴史を持っている。そしていまや、中国の台頭、北朝鮮の核開発、アメリカの経済的苦境という国際環境の変化を前に、「東アジアにおけるアメリカの軍事的優位はどの程度続くのか」という疑問を抱いた日本人は、これまでの計算を見直しつつある。米中が対立しても、それによって必ずしも日米関係が強化されるわけではなく、現実には、自立的な安全保障政策を求める声が日本国内で高まるはずだ。鍵を握るのはアメリカがどのような行動をみせるかだ。日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは信頼できると日本人が確信すれば、東京の外交政策が現在のトラックから大きく外れていくこ
根本的な疑問は、なぜ、イスラエルに反撃されるとわかっていながら、ハマスが挑発行動をとったかだ。二つの理論が考えられる。・・・・写真はイスラエルへのロケット攻撃を準備するハマスの戦士たち。 イスラエルとハマスの間で紛争が起きているのは、ハマスがそれを求めたからに他ならない。2010―2011年のハマスによるロケットと迫撃砲によるイスラエル攻撃は比較的小規模だった。だが、今年に入ってハマスはイスラエルに対する攻撃を一気に強化した。11月上旬には100回を超えるロケット攻撃をイスラエルに試みている。 どうみても、これはイスラエルの反撃を促すための巧妙な挑発行為だった。攻撃の回数と頻度が増してくれば、いかなる政権であっても、イスラエル政府が市民を守るために行動を起こさざるを得なくなるのは明らかだった。数百発のロケット弾を撃ち込まれても、イスラエルが何の反応もみせなければ、ハマスは、さらに要求をつ
<ブラジル経済の実像> ごく最近まで、投資家と専門家たちのブラジル経済への見方は「強気」一色だった。ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ(ルラ)大統領の見事なリーダーシップのもと、ブラジルは新興市場諸国のなかでも、特に責任ある経済政策をとる模範国として知られるようになった。ハイパーインフレを抑え込んで債務を削減することで、ブラジルは2008年の金融危機を他国よりもうまく切り抜け、この5年にわたって年平均4%の経済成長を実現し、最近10年間で約3000万のブラジル人が中間層の仲間入りを果たした。ブラジルのことを「混乱しているグローバル環境のなかでも経済を拡大させ、他のラテン・アメリカ諸国では増大する一方の所得格差を減少させることに成功している」と評価する専門家は多い。 この10年におよぶ成功によってブラジルはもっとも注目される新興市場国の一つになった。株式市場も世界有数のパフォーマンスを
<相手の意図はどこにあるか> 大国とは曖昧な言葉だが、中国はいかなる基準に照らしてもいまや大国という名に値する。広大な国土と戦略的ロケーション、人口の規模とダイナミズム、経済の価値と成長率、グローバル貿易に占める大規模なシェア、そして強大な軍事力と、すでに中国は世界各地にかなりの利害を有する数少ない国の一つになっている。当然、世界各国と国際機関は、好むと好まざるとに関わらず、中国の動きに注目せざるを得ない。もっとも重要なのは、中国がアメリカの優位を脅かす唯一の国であると考えられていることだ。事実、台頭する中国が近隣諸国を飲み込み、いずれ、グローバルな覇権国としてのアメリカに取って代わるとさえ考えられている。 しかし、中国のことを拡大志向の膨張主義国家とみなす一般認識には根拠がない。この数十年間で、中国のパワーが相対的にかなり拡大したのは事実だが、中国の外交政策の目標は防衛的なもので、冷
<他の霊長類と人類を比較すると…> 「すべての生物種はユニークだが、なかでも人類はもっともユニークな生物種だ」。進化生物学者のセオドシウス・ドブザンスキーはかつてこう述べ、事実、人類社会はこれまで他の生物種と違うことを誇りにしてきた。しかし、他の霊長類の研究によって「人類が他の生物種とは例外的に異なっている」という概念の基盤はますます揺らぎ始めている。 だが、悪いことばかりではない。人類が例外的に他の生物種と異なるという認識が変化してきた結果、人体の機能にかかわる医学領域での進歩がもたらされ、例えば、ヒヒの心臓を人間に移植して数週間は生存できるようになった。そもそも、人類のRh因子による血液型の名称にしても、実際には人類に似た血液タイプを持つアカゲザル(Rhesus Monkey)に由来している。 人類がユニークであるという俗説を信じたい人には困惑を禁じえない事態だろうが、いまや知識
<日本のナショナリズムは悪か> 二〇〇一年十二月、日本の海上保安庁は、奄美諸島近くの東シナ海の領海を航行する不審船の情報を入手した。このイカ釣り漁船とおぼしき船の構造はいかにも奇妙で、漁具も見あたらない。通報を受けた海上保安庁は巡視船を派遣し、この船を止めて調査しようとした。だが、不審船は停船の呼びかけに応じなかった。追跡を始めた巡視船は、ついには中国の排他的経済水域にかなり入り込んだところでこの船に機関砲で砲撃を加え、交戦が起きる。後に北朝鮮の工作船だったことが判明するこの船は、追跡を逃れようとして、自爆と思われる爆発を起こして沈没し、乗組員は死亡した。 一部で報道されたとはいえ、このエピソードは欧米ではたいした関心を集めなかった。だが、それまでの領海侵犯への対応に比べ、日本の海上保安庁がこの事件をめぐってはいつになく果敢な対応を見せたことは大いに注目に値する。事実、日本の専門家は、
日中両国でナショナリズムが台頭し、しかも地域的なパワーバランスの変化が進行している。これが歴史的な確執を蘇らせている。尖閣諸島をめぐって日中間の緊張がかくも高まっているのは、このためだ。・・・国民感情そして野党勢力が作り出す圧力からみても、日本政府にとって、立場を後退させることは選択肢にはならないだろう。一方で北京も手を縛られつつある。国内の抗議行動をあまりに手荒に弾圧すれば、対日懐柔路線をとったとみなされるし、一方で、このまま混乱が続けば、中国の社会的安定が損なわれ、国際的イメージに傷がつく。・・・
日韓関係の緊張と言っても、それが、関係の本質を脅かすことのないたんなる政治ショーにすぎないこともある。だが、最近の展開は違う。韓国政府は6月29日に、世論、野党勢力、メディアの反対に屈し、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の調印を先送りし、さらに、物品役務相互提供協定(ACSA)の締結の検討も棚上げすると表明した(その後も、韓国大統領が竹島を訪問し、日韓関係は紛糾している)。結局、(北朝鮮の脅威を含む)「安全保障課題を共有する(日韓という)二つの民主国家の関係強化に向けた前向きで現実主義的な試み」が、またしても「政治と歴史の複雑な遺産の犠牲にされてしまった」。・・・過去を克服するために、日本と韓国は切実に(未来志向で現実主義的な)政治家のリーダーシップを必要としている。ワシントンも日韓の歴史問題を解決するか、少なくとも非政治化できるような「日韓がともに受け入れられるような宣言」を
「ヨーロッパ」の寿命をあと3カ月とみているのはジョージ・ソロスだけではない。市場も同じ見方をしている。そして、ドイツの政策決定者の脳裏にあるのは、債務を抱え込んだゾンビがますますおぞましい姿で復活してくるという悪夢のシナリオだ。・・・依然としてドイツの銀行のスペイン債務へのエキスポージャーは大きく、スペインで銀行破綻が広がればドイツの銀行も道連れになる。こうして、ドイツはこれまでの路線を少しばかり見直しつつあるが、危機の結末を変化させるほど十分な変化ではない。ドイツは依然として反インフレ路線にこだわり、リーダーシップを引き受けるのを嫌がっている。1929年の恐慌が大きな広がりをみせたのは、イギリスには国際経済システムを安定化させる能力がなく、アメリカにはその責任を引き受ける意図がなかったからだ。このままでは1930年代の間違いを繰り返し、ECBがイギリスの役割を、ドイツがアメリカ人の役回り
<アラウィ派のジレンマ> シリアで民衆蜂起が起きて以降、アラウィ派はバッシャール・アサド政権を支える上で大きな役割を果たしてきた。シーア派の宗派の一つとみなせるアラウィ派の国内人口に占める比率は13%。だが、シリアの軍隊、情報サービス、シャビハという名称の体制に忠実な武装組織の多くはアラウィ派で構成されている。 たしかに、シリアでの紛争が長期化するにつれて、一部のアラウィ派が政府に背を向け始めている兆候もある。だが、彼らのほとんどは依然としてアサド体制を守ろうと戦い続けている。その理由は、現体制によるこれまで、そして現在の残虐行為の報復として、いずれスンニ派の報復がバッシャール・アサドだけでなく、アラウィ派にも向けられることを恐れているからだ。こうした危機感に根ざすアラウィ派の体制への忠誠は歴史的なルーツをもっている。 続きはSubscribers' Onlyで公開>>
キケロ兄弟の選挙戦術 ―― 現代に生きる古代ローマの知恵と戦術 Campaign Tips from Cicero ―― The Art of Politics, From the Tiber to Potomac 紀元前64年、共和制ローマの弁護士、雄弁家として知られるマルクス・トゥッリウス・キケロはローマの最高権力ポストである執政官に立候補する。当時、キケロは42歳。頭脳明晰な彼はすでに大きな名声を手にしていた。 通常なら、貴族階級の生まれではない人物が執政官候補とみなされることはない。だが、この年の他の候補たちは魅力のない人物ばかりで、少なくともキケロの弟クィントゥスは、うまく選挙戦を展開すれば、兄マルクスが執政官に選ばれる見込みはあるとみていた。当時、ローマ市民の男性は投票権を持っていたが、投票システムは複雑だった。 富裕層が大きな力を持っており、選挙で勝利を収めるには
漂流するアメリカ政治 ―― 共和党穏健派の衰退と党派対立 The Missing Middle in American Politics 「ドグマ的、イデオロギー的な政党は、国の政治的・社会的な基本構造を破壊する恐れがある・・・イデオロギーに凝り固まった政策を掲げる政党は政府を行き詰らせて危機に陥れる」。右寄りへシフトした共和党を嘆いて、ミット・ロムニーの父で共和党穏健派だったジョージ・ロムニーはかつてこう警告した。そのドクマ的な保守主義を、自分の息子が受け入れ、アメリカ政治が極端な党派対立に陥っている現状を父ロムニーはどう思うだろうか。かつては豊かな発想力をもつ共和党穏健派が、共和党と民主党の妥協点を見出す役割を果たしてきた。だが、穏健派の消失とともに、その機能を現在の共和党は失っている。穏健派を失った共和党は「筋肉質の体はあっても頭を持たない」存在と化した。共和党保守政権は、有権者の
<学力国際ランキング> モーラン リポートでは国際比較も強調されている。国力を構成する一つの要素である教育に関してアメリカが他国に後れをとっていることが分かる。この問題はどれほど深刻なのか、他国はどのように教育にアプローチしているのか。 ライス 他国と比べてアメリカは明らかに後れをとっている。このランキングでは17位、あのランキングでは30位というのがこの国の教育の現実だ。他の先進国と比べてもアメリカがここまで劣っている領域は他にない。数学と科学の能力テストの芳しくない結果をわれわれは真剣に受けとめなければならない。 しかしパラドックスもある。多くの人が指摘するように、アメリカは依然として世界でもっとも革新的で創造的な社会をもっていることだ。フェースブックやツィッターが生まれている。アメリカはどうやってこのような技術革新を生み出しているのだろうか。 まず考えられるのは、このような創造性
<フランスの少子化対策> 人口の減少に頭を抱える先進国が出生率を引き上げるには、他の国でこれまでにうまく機能したやり方に目を向ける必要がある。男女間の格差に真剣に取り組まず、女性のための適切な社会サービスの提供に熱心でなかったイタリアや日本のような国は出生率を上昇させることに失敗している。一方、フランスやスウェーデンのように、包括的で一貫性のあるうまく考案された出産奨励策をとった国では、時間はかかったものの、出生率の低下を覆すことに何とか成功している。 19世紀に出生率の減少を初めて経験したのがフランスだった。これは、自分の農場を数多くの子孫たちに分け与えることのできない小規模の土地所有者たちが、子供の数を意図的に減らし、中間層が少数の子供にだけ資産を投資することで、さらに上流の社会階層の仲間入りをしたいと考えた結果だった。 こうして人口増大ペースが鈍化してくると、フランス政府は少子
謝罪と反動の間 戦後の西ヨーロッパで(独仏間の)和解がすすんだのとは対照的に、第二次世界大戦の終結から60年以上を経過した今も、東アジアの国家間関係は冷え切ったままだ。 ドイツは数十年という時間をかけてナチスという過去に対峙し、その過ちを謝罪してきた。いまやドイツはヨーロッパの貿易と外交を主導する国として頼りにされ、ドイツ部隊は他国の部隊ととともに国連や北大西洋条約機構(NATO)の活動に参加している。 2004年に旧連合国はノルマンディ上陸60周年記念式典にドイツのシュレーダー首相を招待した。かつての敵国の指導者たちと並んだシュレーダーは、これを「ドイツがファシズムから解放された日」として祝った。フランスとドイツの指導者が式典で抱き合う写真を載せたフランスの新聞は、この記事に「第二次世界大戦最後の日」と見出しを付けた。 アジアはこれとは対照的な状況にある。 日本の近隣諸国は、20世紀前半
日本はこれまで最先端の原子力技術の開発を試み、この領域のリーダーになることを目指してきたが、フクシマを経たいまや、原発施設の再稼働に向けて社会の支持を得られるかどうか、先の見えない状況に追い込まれている。・・・現在日本は、(原発停止による電力生産の低下を火力発電で埋め合わせようと)より多くの液化天然ガス(LNG)を輸入しているが、LNG価格はかつての3倍のレベルへと上昇している。しかも、(日本の現実を考えると)原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていけるとも思えない。原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていこうにも、日本は風力、ソーラー、地熱など再生可能エネルギーの促進を阻む構造的な障害を持っているからだ。電力会社も関係省庁も大規模な電力生産施設を好む文化的体質を持っており、風力やソーラーなどの基本的に「分散型」の技術導入には難色を示す傾向がある。こ
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『Foreign Affairs Japan』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く