サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
ドラクエ3
www.foreignaffairsj.co.jp
<なぜ民主主義は生き残れたか> 1930年代のヨーロッパを見守っていた知識人の多くは、「未来は共産主義かファシズムの手の内にある」と考えていた。実際、「左はスターリンのソビエトに、右はヒトラーのドイツとムッソリーニのイタリアに固められ、(政治的に)包囲されていた西ヨーロッパのリベラルな民主主義に生き残るチャンスはない」と考えても不思議はなかった。すでに中央・東ヨーロッパ諸国の多くは、権威主義体制か、さまざまな形態のファシズムに屈していた。 大恐慌という未曾有の危機への対策をみても、(議論と合意を必要とする)リベラルな社会が実施できるささやかな対策よりも、共産主義やファシズム体制による上からの大胆な施策のほうがはるかに効果的であることが立証されつつあった。当時から21世紀初頭にいたるまで、イベリア半島のタホ川から、エブロ川、ドナウ川を経て、ポーランドのヴィスワ川にいたるヨーロッパ全域が民
<政治プロジェクトとしてのユーロ> ユーロプロジェクトはいまや「失敗した実験」とみなすべきだ。共通通貨が1999年に導入されてわずか12年後に現実となったこの失敗はアクシデントでもなければ、官僚の管理ミスの結果でもない。それは、経済的に多様な国家集団に単一通貨を強要したことの必然的な結末だ。ヨーロッパの数カ国におけるソブリン危機、主要銀行の不安定化、ユーロゾーン全域での高い失業率、そして多くの諸国を苦しめている巨大な貿易赤字。これらはすべて単一通貨ユーロが引き起こした悪影響の一部だ。 調和に満ちたヨーロッパを形作るという政治目標も実現できなかった。フランスとドイツは、救済策をとる条件として、ギリシャとイタリアに痛みを伴う緊縮財政措置を導入するように強制する一方、欧州中央銀行(ECB)の役割、金融支援をめぐる重荷をいかに分担するかをめぐって激しく対立した。 ヨーロッパをEMU(経済通貨
ワシントンの政治・軍事指導者たちは、ドローン(無人飛行機による)攻撃プログラムは対ゲリラ戦略において大きな成功を収めていると考えており、攻撃の巻き添えになって死亡した民間人も2008年5月からの2年間で30人程度だと主張している。だが、パキスタン人の多くは、ドローン攻撃によって多くの民間人が犠牲になっていると考えている。パキスタンの部族地域で暮らす人々の75%が「アメリカの軍事ターゲットに対する自爆テロは正当化される」と考えているのも、こうした現地での認識と無関係ではないだろう。一方、パキスタン政府は、ドローン攻撃によって自分たちの敵であるパキスタン・タリバーンの指導者も殺害されているために、アメリカによる攻撃を黙認している。この複雑な現状の透明性を高める必要がある。部族地域の武装勢力に対するドローン攻撃がアメリカとパキスタン双方の利益であることをアピールし、ドローン攻撃をめぐるパキスタン
2011年10月、上海の不動産開発業者が突然高級マンションをそれまでの3分の1の価格で販売し始めた。沿岸部の温州や石炭資源地帯である鄂?多斯(オルドス)では、不動産価格の暴落によってクレジット危機が起き、ビルの屋上から飛び降り自殺をする者が相次ぎ、国を脱出する者もいる。いまや中国の不動産バブルははじけつつある。これまで住宅市場を支えてきたのは強気の不動産開発と中国の個人投資家たちだった。ごく最近まで不動産開発業者は、建設が終わらぬうちにすべてを完売できる状態にあったし、個人投資家は一人で複数、ときには数十もの住宅やマンションを投資用に買い上げてきた。投資家の多くは、さらなる値上がりを見込んで、これらの空き物件のまま維持し、各地にだれも住んでいない住宅や団地などの広大な「ゴースト地区」が出現していた。だが、開発業者は住宅在庫を維持していくための融資を調達できなくなり、2011年夏までには、つ
シリアへの軍事介入を求め始めた反アサド勢力 ――「保護する責任」とアラカルトの軍事介入 Syria: Military Intervention A La Carte いまやシリアの反体制派集団は国際社会に対して軍事支援を強く求め始めている。「自由シリア軍=FSA」のリヤド・アル・アサド大佐は「必要なのは国際社会が(われわれの地上での軍事活動への)後方支援を提供してくれることだ。さらに飛行禁止空域の設定、バッファー(緩衝地帯)の形成、そして現体制にとって重要とみなされる戦略ターゲットへの空爆も望んでいる」と発言している。だが、民間人に対する攻撃がこれ以上エスカレートし、外交的、経済的制裁ではアサドの行動を変えることができなければ、軍事介入を選択肢の一つとして検討せざるを得なくなるとはいえ、話は簡単ではない。反体制派が外国に対して「軍事支援を選択的に」求めているからだ。彼の発言は、いまや鮮
<アメリカのアジア重視路線> 10月14日のニューヨーク経済クラブにおける演説で、ヒラリー・クリントン国務長官は「世界の戦略、経済的中枢は東へと移動しつつある」と表明し、アメリカのアジア・シフト路線を明確に打ち出した。国務長官の発言は、アジア諸国が中国の台頭、そして、アメリカのアジアへのコミットメントの先行きを懸念するなか、「太平洋国家としてのアメリカの役割」を再確認しようとするワシントンの試みの一環だった。バラク・オバマ大統領も、アジアの首都を歴訪し、ハワイでのAPEC首脳フォーラムのホストを務める際に、このメッセージを表明する予定だ。 この地域政策の中枢は貿易領域にある。米韓自由貿易協定への米議会の承認を取り付けたオバマは、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への合意をとりまとめることで、アメリカのアジアにおける経済的役割を明確に確立したいと考えている。現在、オーストラリア、ブル
<分水嶺としての1978年> かつてはこうではなかったのか。「昔みたいにはいかない」というのは本当だろうか。1978年当時と現在の生活を比べてみれば、どう感じるだろうか。 教育があり、ある程度快適な生活を送っている、アメリカのどこかで暮らす中産階級のカップルは、1978年当時どのような生活を送っていただろうか。現在の生活と比べて、当時の生活はどの程度不便だっただろうか。 男性は、茶色がベースで金色のアクセントが入った襟の大きなポリエステルのプリントシャツをはおり、べっ甲フレームのメガネをかけていた。女性はハイウエストのナイロン地のVネックドレスに、上げ底のクロッグが定番だった。 朝のコーヒーはマックスウェルハウスのドリップコーヒー。乗用車はAMC・ペーサーのハッチバックで、エアコンは壊れ、テープデッキはテープを巻き込み続ける代物だ。女性たちは、夕食を少し気の利いたものにしたいときには
<プーチンの登場とFSBの台頭> 1990年代初頭時点で、FSBの前進であるFSKは効率的な組織とも有力な組織ともみなされていなかった。多くの間違いを犯したが、なかでも、1994年にはチェチェン共和国の首都、グロズヌイの攻略に失敗するという失態を演じた。FSKは、分離主義勢力の指導者ジョハル・デュダエフを相手に3列縦隊の戦車部隊を送り込んだが、この部隊はチェチェン側による待ち伏せ攻撃を受け、戦車部隊はグロズヌイの町で炎上した。モスクワは、この失敗を前にFSKの能力を大いに疑問視するようになった。 FSKの名称がFSBに変更された後も、失態は続いた。今度の敵はロシアの犯罪組織だった。1996年、FSBはマフィアグループを追い込もうと内部に特別チームを立ち上げた。だが、このチームは、情報サービスのなかでもっとも乱暴かつ残忍で腐敗していると広くみなされるようになった。 1998年には、この
金融覇権の交代か、それとも第二次グローバル金融危機か ――Gゼロの世界における欧米経済危機と中国の思惑 ゼーリック世銀総裁は「世界経済は新たな危険水域に入った」と表明し、日米欧の先進国が早急にそれぞれの課題を克服しなければ、世界経済はさらに深刻な危機に陥っていくと警告した。日本もアメリカも巨大な債務と財政赤字という時限爆弾を抱え、かたやヨーロッパはギリシャのソブリン危機によってユーロ圏全体がクレジットクランチに陥る瀬戸際にある。そして、中国の温家宝首相は「中国は欧州を支援する」と表明したと報道されている。だが、問題は、本当に支援するかどうかだ。<イギリスからアメリカへ> 仮に中国がイタリアやギリシャを含むヨーロッパの周辺国の国債を大量に引き受ければ、それは、アメリカから中国への金融覇権の移動に向けた非常に大きなステップになる。だが、この役割を中国が引き受けるかどうか定かではない。 20世
<改革へのさめた感情> 2000年末、すでに長い間リセッション(景気後退)に苦しんできた日本人は、さらに悪いニュースによって追い打ちを受けることになる。日本のさらなる衰退が差し迫っていると予測するリポートが発表されたからだ。米中央情報局(CIA)が発表した「グローバルトレンド2015」は、中国の台頭ペースを考慮すると、日本は「(アメリカとヨーロッパに次ぐ)世界第三の経済大国としての現在の地位をいずれ維持できなくなるかもしれない」という予測を示した。 このリポートが発表される数カ月前にも、アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、日本国債の格付けを2度連続して引き下げたばかりだった。かつては高い評価をほしいままにしてきた日本の国債も、いまではポルトガル国債と同じ程度のリスクがあると見なされている。 日本国内でも、この二つのニュースは、こうした否定的評価につながる日本
CFRインタビュー 9・11後の10年とこれからの10年 ――課題は外的脅威から国内問題へ Lost U.S. Opportunities After 9・11 テロから10年という節目を迎えて9・11に再び関心が集まったが、人々はこれまでも9・11という文脈のなかだけで暮らしてきたわけではない。たしかに、飛行機による移動、情報活動、国土安全保障など、9・11によって変化したものもある。だが、歴史家が9・11以降の10年間を後に描きだすとすれば、9・11だけでなく、技術革新、2000年のドットコムバブルの崩壊、2008年の金融危機、現在われわれが直面している財政・債務危機、中国の台頭、さまざま戦争、そしてアメリカ政治の統治問題を歴史的文脈に位置づけて解釈するはずだ。われわれの生活レベル、アメリカの生活の質、そして世界でリーダーシップを発揮していく能力に対する最大の脅威は国の内側に存在す
<中国がヨーロッパを買い漁る?> 7月に債務・財政危機に陥ったギリシャへの追加支援策にEU(欧州連合)が合意したことで、ギリシャがディフォルトに陥り、それが他のユーロ圏諸国へと飛び火することを恐れていた市場もある程度落ち着きをとり戻したかにみえる。しかし、EUの追加支援だけがギリシャ問題への唯一の解決策ではないだろう。2011年6月には、想像できない国の指導者が、異なる解決策を示唆する言動をみせていた。 2011年6月にヨーロッパ各国を歴訪した中国の温家宝首相は、各国の首都で必ず二つのことを強調した。ユーロゾーンの安定が中国にとっても非常に重要であること、そして、中国がヨーロッパの友人であることだ。 実際、北京にとって、ヨーロッパは自己利益と利他主義がうまく重なり合う場所だ。仮に中国が発行済みギリシャ国債の半分を買い上げれば、ユーロゾーンのソブリン危機を解決できるだけでなく、中国の名
ヨーロッパの連邦予算、ユーロ共通債、各国の予算についての厳格な調整に向けて、今後12ヶ月間に進展がなければ、ユーロは消失し、ドイツでさえもユーロから離脱するだろう。・・・だが、欧州経済よりも、アメリカ経済のほうがはるかに深刻な状態にある。かりにアメリカが欧州連合のメンバーだとすれば、アメリカの危機は、イタリアの危機以上に深刻な状態にあり、レベルでみれば、イタリアとギリシャの間にある。アメリカは先進国のなかでは最悪の経済状態にあるし、日本と比べてさえ、さらに劣悪な状態にある。但し、相対的には衰退していくとしても、今後もアメリカは長期にわたってナンバーワンの座を維持していくはずだ。とはいえ、アメリカは自国のためにも、世界のためにも統治を改善する必要がある。 <国家連合から連邦国家への離脱を> ―― (ギリシャの)ソブリン債務がヨーロッパの他の周辺国に飛び火するのを避けるために、ヨーロッパが取り
この10年間、外交官たちは、これまでのように情報を相手国政府の高官や中級官僚との公的なやりとりにばかり依存するのではなく、重要な情報を人権活動家、反体制派、政策面で反発している(抑圧)政権内の反政府派から入手するようになった。こうした文書には、中国の反体制派、中東の反体制派が自国の政府について何を言ったかが示されており、そこには個人名も示されている。・・・ より多くの情報が今後公開されると考えられている。中国や中東諸国のように人権概念を重視しない諸国は、文書に名前のある人物の一部を検挙し、弾圧するかもしれない。(J・ベリンジャー) 聞き手はバーナード・ガーズマン(cfr.orgのコンサルティング・エディタ-) <さらに公開されれば情報源が危険にさらされる> ―― あなたが今も国務省の法律顧問だとしよう。司法長官が「ウィキリークス問題にどう対処すべきか」とあなたにアドバイスを求めてきた。さて
「日本政府には、『自分の責任において決断する』と言える人が誰もいない」・・・震災直後の5~6日間、政府内の原発危機「担当者は誰もいなかった」。これは、元米国外交官、ケビン・メアがウォール・ストリート・ジャーナル日本語版に最近語ったコメントだ。(「普天間から福島まで、代償の大きい日本の優柔不断=メア氏」) メアのコメントは、震災が起きた当時、われわれの多くが漠然と感じていたことが真実だったことを裏付けているように思えるし、これは、これまでも多くの外国人オブザーバーが、日本政治の問題として指摘してきたポイントでもある。 例えば、K・V・ウォルファレンは1986年に、日本には「国家的意思決定の最終責任を引き受ける政府が存在しない」と痛烈に批判した。 MITの日本問題の研究者、リチャード・サミュエルズ他も、次号に掲載する論文で次のように指摘している。「改革によって(官僚主導から政治主導への)制
朝鮮半島は一触即発の状況にある ―― 北朝鮮は核実験を準備し、韓国は核開発を議論している (部分公開) No Good Option on North Korea 朝鮮半島は依然として緊張している。北朝鮮は、早ければ2011年の夏にも3度目の核実験を実施する可能性があるし、韓国に対してさらに大きな攻撃をする恐れもある。北朝鮮は、「おとなしくしているかと思えば、次に挑発行動をとるというサイクル」で動いていることを忘れてはならない。一方、韓国では、チョンアン号事件、ヨンピョン島砲撃事件以降、政府だけでなく、市民も北朝鮮に対する強硬路線をとるように求めるようなった。すでに、韓国が核開発を試みるべきかどうかも議論の俎上(そじょう)に載せられている。独自に核開発を試みるべきか、あるいは、アメリカの戦術核の再配備を求めるかどうかをめぐって熱い論争が起きている。かたや北朝鮮はますます核兵器を維持して
「南シナ海での中国の行動は、この国が今後影響力を高めていくにつれて、国際的にどのような行動をみせるのかを占う水晶玉のようなものだ。残念なことに、これまでのところ、好ましくない未来が映し出されている」(J・クランジック) ―― 豊かな石油資源が眠っていると考えられる、南シナ海の領有権をめぐって中国と近隣諸国の対立がエスカレートしつつあるが、現状をめぐる重要なポイントはどこにあるのか。 各国が南シナ海の領有権をめぐって異なる解釈をし、衝突している。これ自体重要な展開だが、中国にとって一連の行動は「自国が大国であることをみせつけるための第1ステップ」としての意味合いもある。南シナ海での中国の行動は、この国が今後影響力を高めていくにつれて、国際的にどのような行動をみせるのかを占う水晶玉のようなものだ。残念なことに、これまでのところ、好ましくない未来が映し出されている。 ―― 南シナ海問題の基本に
<補助金頼みのクリーンエネルギー> 近年、劇的な成長を遂げてきたクリーンエネルギー産業もいまや大きな危機に直面している。エネルギー産業を主導してきた主要国の多く、特にヨーロッパ諸国では、政府の補助金を追い風にクリーンエネルギー産業はこれまで25%の成長を遂げてきた。だが、これ以上、補助金を出し続けるのは(経済的)政治的に不可能になりつつある。 世界的にみても、2010年のクリーンエネルギー産業への投資はこれまでになく高いレベルに達したが、その5分の1は政府の景気刺激策によるものだった。 これによって、クリーンエネルギーに関するバッドニュース到来のタイミングが先送りされていたにすぎない。この20年にわたって、設置される風力タービンの数が増え続けてきたアメリカでも、2010年には新たに設置されるタービン数は減少へと転じ、これまでに比べて半減している。いまや主要なクリーンエネルギー装置メー
<ビンラディン事件の波紋> オサマ・ビンラディンは、パキスタン軍の主要な訓練センターに隣接する地域に潜伏していた。あらゆる側面からみて、彼は傍目にも明らかな場所で6年間にわたって生活していた。パキスタン軍はアルカイダと共謀していたのか、それとも単にビンラディンが潜伏していたコンパウンドを見落としていたのかは、これまでのところ分かっていない。 しかし、仮に軍が彼の居場所を知っていたとしても、少なくともパキスタンの文民政府には情報を伝えていなかっただろう。一方、軍がまったく手がかりをもっていなかったとすれば、それは、軍にとってアルカイダのボスを見つけるのが最優先課題ではなかったからだ。 いずれにしても、このエピソードは、テロに対して異なる認識をしているパキスタンの軍部と文民政府間の著しい力の不均衡を改めて浮き彫りにした。私が、フォーリン・アフェアーズの論文で指摘したように、パキスタン人民党
<バイオマスの可能性> 石油は紛争を引き起こす火種であり、その理由は明白である。すべての人々がエネルギーを必要としているのに対して、世界の交通・運輸用の資源が、比較的少数の国々に集中的に存在しているからだ。世界に残された石油資源の三分の二以上は、(カスピ海周辺地域を含む)中東地域にある。つまりこれは、その他の世界が、この地域にありがちな略奪者や、基盤の弱い独裁者に依存していることを意味する。 この好ましくない依存の構図が存在するために、アメリカの軍事戦力は湾岸地域につなぎ止められ、外交政策目標も妥協を強いられている。それだけではない。開発途上国は、高価なドル建ての石油輸入に必要な資金を捻出するために、低価格で消費財や農産物を売らざるを得ず、その結果、こうした国々は大きな債務を抱え込んでしまっている。 加えて、石油は環境問題とも折り合いが悪い。温室効果ガスの増大が壊滅的な気候変動を引き起こす
アラブの民衆はすでに自分たちのやり方で変化を実現しつつある。 ―― ビンラディンの訴求力はもはや中東には存在しない アラブの春(民主化運動)によって、すでにビンラディンが掲げてきたイデオロギーへの信頼性は大きく失墜している。 アルカイダは多元主義と代議制という民主的政治思想のことを、西洋の「欺瞞に満ちたうぬぼれ」とこれまで長く批判してきた。神の心をおそらくは知っている人物に権限を与えることを認め、西洋に対する暴力抗争を展開し、イスラムの文化宗教コードを徹底することが、不満を募らせる中東の若者の一部に唯一の希望を与えていたのは事実だろう。だが、このアルカイダのビジョンには政治的開放、多様な意見への寛容性、人々への経済的エンパワーメントという要素が欠落していた。 一方、チュニジアからイエメンまでのアラブの民衆は、政治的弾圧、言論の自由の欠落、経済的苦境をもはや受けいれないことを言動で示
アメリカとパキスタンの緊張が高まるなかで、ビンラディンの死亡を伝えるニュースが流れた。これによって両国の関係は崖から突き落とされるかもしれないが、一方で、両国の戦略利益をうまく調整できるようになる可能性もある。 一部のパキスタン人は、アメリカが無人飛行機を用いたパキスタン領内での対テロ作戦を実施していること、そして、強盗とみられる二人組をアメリカ人のレイモンド・デービスがパキスタンの町中で射殺した事件に強く反発し、憤慨していた。そこにパキスタン領土のアボッタバードの住宅でビンラディンが米軍部隊によって殺害される事件が起きた。 これらがパキスタンの主権を踏みにじっていると問題にされていた。しかも、仮にテロリストが波状的な報復攻撃に出るとすれば、パキスタンはその報復攻撃の対象の一つにされる。当然、ビンラディンの殺害が、パキスタンの安全保障利益に合致するかどうか疑問に思う人々がいるとしても不思
フォーリン・アフェアーズ・ジャパンのホームページ上で発表した東日本大震災に関する論文を 3つのカテゴリーにまとめて掲載しております。
少なくとも、フクシマ第一原子力発電所の6機の原子炉の4機はもはや修復不能の状態にある。ブルームバーグニュースによれば、ダメージを受けた原子炉を格納する施設にコンクリートを流しこんで施設そのものを封鎖するという案も浮上している。日本政府はいまも原子炉のダメージの詳細を把握できずにいるし、原子炉から放射性物質が依然として漏れ出しているのではないかと懸念されている。 地震と津波災害はフクシマ第一原子力発電所に壊滅的なダメージを与えただけではない。フクシマ第一発電所以外にも、稼働停止に追い込まれている地熱発電所や原子力発電所は数多くある。日本はこの状況に計画停電で対処しようと試みてきた。 だが、「失われた電力生産能力、停止に追い込まれている発電所の生産能力を別の方法で埋めあわせない限り、工場の稼働率も低下し、自動車をはじめとする数多くの製品を生産できなくなる。人々は消費を控えるようになり、日本
日本の原発危機の教訓 ――世界は原子力から離脱すべきか、いなか The Dilemma of Nuclear Energy 日本の原子力産業が全面的な危機に直面するなか、世界でも原子力エネルギーの安全性と現実性に関する懸念が広がりをみせている。中国は原子炉開発計画を凍結し、ドイツは七つの原子炉を閉鎖し、既存の原子力施設の操業認可期限の延長を検討する路線に3カ月のモラトリアムを適用した。 メルケル独首相は、この政策シフトはドイツが「少しでも早く再生可能エネルギーの時代に到達するために」必要だったと述べている。 だが、アメリカのステファン・チュー エネルギー省長官はこうした立場に冷水を浴びせかけた。「魔法の杖のような代替策が存在することを夢見ても、人々が暮らす住宅の空調を動かす電力を提供できるようになるわけではない。行くべきところへわれわれを導いてくれるわけではないし、雇用を提供する生産活動
CFRブリーフィング 放射能汚染と安全基準の曖昧さ ―都市を放棄するか、それとも、1万人に1人を超えるガン発症を受け入れるか How Much Radioactive Contamination is Too Much? 最初は、フクシマの原発に比較的近い地域で生産されたホウレンソウとミルク(原乳)から、その後、東京都の水道水からも乳児の飲用基準を上回るレベルの放射性物質(放射性ヨウ素)が発見された。この展開は、私が2002年に(核汚染を引き起こす)ダーティボムを調査したときのことを思い起こさせる(ダーティボムに関心がなくても、最後まで読んで欲しい。この話は現在、日本で起きていることと関係がある)。 当時私は、ダーティボム攻撃の結果どのような事態が起きるか同僚とともに調査していた。放射性物質を拡散し、その地域にどの程度、安全基準を上回る汚染が起きるかをシュミレーションした。結果は、気が
<マクロ経済の混乱は最小限で済む> ―― 地震と津波が日本経済に短期的、長期的に与える影響はどのようなものになるだろうか。 一般に、先進諸国で災害が起きた場合には、二段階での作用がある。第一段階は混乱だ。道路は破壊され、電力供給が不安定化し、人々は職場にも行けなくなり、必然的に経済生産は低下する。第二段階になると、壊れた道路や電力網その他の復旧が試みられ、このプロセスでは、生産は増大する。つまり、長期的、例えば9カ月後には第一段階での生産減少は、第二段階での生産増によって埋め合わせられる。 考えるべきは、今回の日本での災害がこの標準的なパターンに当てはまるかどうかだ。短期的には日本経済は非常に困難な状況に直面するだろうし、原子力危機と放射能の漏洩は深刻な状態にあるとはいえ、このパターンに当てはまらないと考える理由はない。 大規模な放射能が大気中に拡散する恐れがあるし、そうなれば原発に
<何が問題だったのか、最悪のシナリオは何か> ―― 福島第1原子力発電所で何が起き、どのような対策が行われているのか。 映画「パーフェクトストーム」のような自然災害が原子力発電所を襲ったと考えるべきだ。この140年の記録をみても、日本は数多くの地震に見舞われてきたが、地域的にみても、原子力発電所の基準からみても、今回の地震は想定外の大きさだった。その後、非常に大きな津波が原子力発電所を襲い、外部からの電力供給が途絶え、サイト内の緊急ディーゼル発電機も動作しなくなった。 原子炉を停止した場合には、核燃料棒のなかの放射性物質の崩壊熱が生じ、この作用を取り除き、熱を下げなければならない。だが、電力がなければ冷却装置を使えない。崩壊熱を取り除くのにポンプを用いて水を入れるしかない。 そうしない限り、温度を低く保つために原子炉の中央に入れられている水が沸騰し始める。水がなくなり、燃料棒がむき出しに
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『Foreign Affairs Japan』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く