ジビエとは、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉のことです。日本ではシカやイノシシによる農林被害が深刻化していることから、それらの捕獲が推進されています。副産物となるジビエは、地域特産品やジビエ料理など食用として利活用が広がっています。一方で野生鳥獣は、人に健康被害をもたらす病原体(細菌、ウイルス、寄生虫等)を保有していることがあり、食用として利用する際には注意が必要です。今回は住肉胞子虫についてご紹介します。 住肉胞子虫で食中毒? 食中毒の原因となるものに寄生虫があります。住肉胞子虫(Sarcocystis fayeri)もその1つで、食物連鎖を利用して生きる寄生性の原虫です。これまでに国内では、住肉胞子虫を原因とするシカ肉による有症事例が5件報告されています。いずれも、生または加熱不十分なシカ肉の喫食が原因でした。多くの場合、喫食後数時間程度(4~8時間)で一過性の下痢、嘔吐等の症状があらわ