神名龍子 マーガレット・ミード(Margaret Mead,1901~1978,米)という文化人類学者がいた。彼女はサモア諸島におけるフィールドワークによって、サモアでは競争も抑圧もなく性が解放されているがゆえに青年期のストレスや葛藤がないということを『サモアの思春期』(蒼樹書房1976,“Coming of Age in Samoa”1928)という本にまとめた。また『3つの原始社会における性と気質』では、彼女が研究した社会の一つ(チャンブリ族)における「女性の男性的性質」と「男性の女性的性質」とを誇張して発表した。 前者は「人間の在り様は生物的(遺伝的)に決定されるのではなく文化的に規定される」という誤った主張の根拠となり、後者については「男女の性別役割が逆転している社会が現実に存在する」という、これも誤った主張の根拠とみなされている。これは、どちらもミード自身の研究に重大な誤りがあ