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夏の料理
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<サッチャーやブレアと異なり、党内説得から逃げたメイ首相の危険な賭けだったが、英保守党は6月8日の総選挙で見事に失敗した。これから、EU離脱交渉に影響するだけでなく、北アイルランド和平問題などが再浮上する可能性もある> 6月8日に実施されたイギリス総選挙の結果は、多くの者に驚きを与えることになった。メイ首相は、政権基盤を固める賭けに出て、見事に失敗をした。そして当初の予想よりもその敗北は、はるかに大きなものとなった。それまで下院で過半数を超える議席を確保していた保守党は、その賭けの失敗の代償として過半数を失ってしまったのだ。 【参考記事】英総選挙で大激震、保守党の過半数割れを招いたメイの誤算 テリーザ・メイ首相が4月18日に総選挙実施を発表した直後は、最大24ポイント差と、世論調査の政党支持率で保守党は労働党を大きくリードしていた。それゆえ当初は、メイ首相とその周辺は楽観ムードに包まれてい
4月15日に平壌で行われた故金日成国家主席の生誕105周年を祝う軍事パレードの様子 Damir Sagolj-REUTERS <緊張が高まる朝鮮半島情勢。トランプ政権の政策はまさに「力による平和」のアプローチである。その戦略、狙いとは?> 今年の1月20日にアメリカでトランプ政権が成立し、北朝鮮情勢についてアメリカが従来とは異なるアプローチをとるようになり、軍事力行使もオプションとして視野に入れていることが明確となってきた。ところが日本国内では朝鮮半島情勢に関する緊張感が欠落しており、従来と同様の情勢が続くことを前提に、朝鮮半島有事がすぐ近くまで迫っていることについてほとんど言及されることもなかった。 3月2日付けのウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事で、「米政権、北朝鮮への武力行使も選択肢に」という報道がなされて、アメリカ国内ではかなり広く、その可能性が示唆されるようになった。それで
3月29日、ブリュッセルでメイ首相の離脱通知文を渡されたEUのトゥスク大統領(左) Yves Herman-REUTERS <EU離脱通知を行ったメイ首相だが、離脱をスムーズかつ双方の利益になるように進めたいと考えているのはイギリスだけ。EU側にそのような意図はあまりなく、イギリスにとって厳しい交渉になりそうだ。今後はどのようなシナリオが考えられるか> 2017年3月29日。この日はイギリス史にとって、決して欠かすことのできない決定的な日となった。イギリス政府が正式に、EUに対してリスボン条約50条に基づく離脱通知を行い、EUがそれを受理したのだ。これによって、2019年3月29日にイギリスがEUから離脱することが確定した。イギリスの40年を超える欧州統合のプロジェクトからの離別を意味することになる。 イギリスのメイ首相がブリュッセルのEUに送った通知文の文面は、実に奇妙なものであった。第
<アメリカの理念が死んで、トランプが勝利した。1980年代に新自由主義の代償として生じた社会の分断。あと必要なのは、低所得層や貧困層の怒りの感情の受け皿だけだった。今回、民主主義は深刻な隘路に陥ったが、この先にあるものは一体何か> ドナルド・トランプが大統領に選ばれました。このニュースは世界中を震撼させ、ヒラリー・クリントン陣営に悲劇をもたらしました。 私は、トランプが大統領選挙に勝利したことで、アメリカの理念が死んだというのは間違いだと思っています。むしろそれは反対で、アメリカの理念が死んだことで、トランプが大統領選挙に勝利したのだろうと思います。それではアメリカの理念とは何か。 1980年代に新自由主義という新しい潮流が生まれ、レーガン大統領の下で「小さい政府」のレーガノミクスが誕生して、新しい時代が到来しました。それは、ジョンソン大統領が唱えた「偉大な社会」や戦後イギリス政府が確立し
FROM LEFT: Agencja Gazeta/Slawomir Kaminski/via REUTERS, Mike Segar-REUTERS, Lean Daval Jr-REUTERS <フィリピンのドゥテルテ大統領が「アメリカは出て行け」と言い、アメリカのトランプ大統領候補が「アジア防衛は無駄だ」と言う。これにより、アジア太平洋地域のパワーバランスが大きく動き、まずは南シナ海、その後は東シナ海の尖閣諸島を中国が掌握することさえ現実になりかねない> 「ドゥテルテ比大統領、米との軍事同盟転換を示唆」(ウォール・ストリート・ジャーナル) これは、今後のアジア太平洋地域のパワーバランスや安全保障環境を大きく動かしかねない、とても大きな決定だ。あまり、日本では広く報道されていないが、今後の東アジアの戦略関係を考えると、一つの大きな転換点となるであろう。 気になるのは、ドゥテルテ大統領と
<第一次大戦により、オーストリア帝国は国家解体に至ったが、その指導者達は国が解体するとは夢にも思っていなかったはずだ。100年が過ぎた今、ナショナリズムに突き動かされたイギリスがEU離脱を決めたが、その指導者達もまた、意図せぬかたちでイギリスを解体させようとしている>(写真は、第一次大戦時のハプスブルク帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世夫妻を描いた絵画、ウィーンのオークション会場にて) 今からちょうど100年前のこと。1916年に、68年間皇帝に君臨してきたハプスブルク帝国のフランツ・ヨーゼフ1世が死去しました。これは第一次世界戦中のこと。 第一次世界大戦は、ご承知の通り、サラエボ事件を契機としたオーストリアのセルビアへの最後通牒から始まります。ハプスブルク家は、ヨーロッパでも名高い名門の王室。長年、神聖ローマ帝国の皇帝に就き、神聖ローマ帝国終焉の後は、ハプスブルク帝国の皇帝としてヨーロッパの
安保関連法が施行された3月29日、新聞各紙は一面で大きく取り上げたが、「専守防衛を転換」と大きく見出しを打った朝日新聞の論じ方ははたして正しいのか 2016年3月29日、昨年の9月に国会で採択された安保関連法(「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」の2本の法律により構成される)が施行されることになった。この日の新聞各紙の朝刊では、これについて一面で大きくとりあげており、その意義と意味について論じている。しかしながら、法案が国会を通過した昨年9月にそうであったように、全国紙においては朝日新聞と毎日新聞は批判的あるいは懐疑的な論調であり、他方で読売新聞、日本経済新聞、産経新聞は肯定的な論調である。 どのような新聞を読むかによって、同じ法律の施行について対極的な印象を持つことは必ずしも悪いことではない。賛成派と反対派に分かれるということは、政治の多くの争点でそうであるように、自然なことであろ
昨年夏に安保法制批判のデモを行った学生団体SEALDsは「対話と協調に基づく平和的な外交・安全保障政策」を訴えているが、現実にはそれがいかに困難かを北朝鮮の核・ミサイル問題――特に中国が自制を求めたにもかかわらず止められなかったこと――が示している(SEALDsがデモで使用していたプラカード) Thomas Peter-REUTERS 新年早々の1月7日に、アメリカのシンクタンクのジャーマン・マーシャル・ファンド(GMF)上席研究員のダニエル・トワイニングは、「アンハッピー・ニュー・イヤー」と題する興味深いコラムを寄せていた(注1)。トワイニングはアジアの安全保障問題に精通した優れた専門家で、日本の安全保障政策についても冷静で公平な視点から鋭い洞察を示すコラムを、これまで書いている。 トワイニングはこのコラムの中で、2016年に想定される10の地政学的リスクを列挙して、新しい1年もまた多く
平和を求め、デモという政治参加が行われたのはよいことだったが(9月9日、雨の中のデモ) Issei Kato - REUTERS ■民主主義の新しいかたち 国会のまわりでは、大変なデモが行われています。安保関連法案に私は賛成の立場ですから、それらの人々とは立場は異なりますが、日本が民主主義国であり、デモが法律で認められており、選挙以外の方法で自らの主張を訴えるためにも、このような政治参加が行われていることはよいことだと思います。 かつてフランスに一年間滞在して、ときどきパリの街中でデモ隊が行進しているのに出くわして、日本でもこういうデモがもっとあればよいのに、と思っていました。確かに2005年には、サルコジ内相の発言に激怒した人々がパリ郊外で暴力的行動をとった事件もありましたが(このときもたまたまパリにいました)、それでもフランスでのデモはおおよそ、平和的で、理性的で、オープンです。成熟し
なぜ根拠のない予言と安保関連法案への感情的な嫌悪感が広がってしまったのか(8月30日の国会周辺デモ) Thomas Peter- REUTERS ■魔女狩りの世界へ? 2015年8月30日に、安保関連法案の廃案を求める大規模なデモが国会周辺で行われた。安保関連法案を批判する人々の熱情はエスカレートして、感情的な叫び声が鳴り響いている。一部の声は、もはや理性的な主張の域を超えてしまった。 テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」が安保法制に関する憲法学者へのアンケート調査として、「一般に集団的自衛権の行使は日本国憲法に違反すると考えますか?」という質問をだした。これに対して井上武史九州大学准教授が、「憲法には、集団的自衛権の行使について明確な禁止規定は存在しない」と答え、「それゆえ、集団的自衛権の行使を明らかに違憲と断定する根拠は見いだせない」と述べると、その後になんと怒りの感情をあらわにし
2015年8月6日の午後、戦後70年談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」の座長である西室泰三日本郵政社長と、座長代理である北岡伸一国際大学学長が、首相官邸で安倍晋三首相に報告書を提出した。この報告書は、半年ほど前の2月25日の第1回会合において、安倍首相が懇談会で議論する論点として提示した5つの点を中心にして、懇談会としての提言を示すものである。 その内容は、想定されていたよりも踏み込んだ記述が数多く見られる。そこでは、「日本は、満州事変以後、大陸への侵略を拡大し、第一次大戦後の民族自決、戦争違法化、民主化、経済発展主義という流れから逸脱して、世界の大勢を見失い、無謀な戦争でアジアを中心とする諸国に多くの被害を与えた」と書かれている。また、「植民地についても、民族自決の大勢に逆行し、特に1930年代後半から、植民地支配が過酷化した」と述べられている。これまでにない、強い表現だ。日本
なぜこうなってしまったのか。実に奇妙な事態になってしまった。これほどまで熱く平和が語られ、これほどまで厳しく政府への批判がなされる中で、日本が選択すべき安全保障政策についての具体的な提案や主張がほとんど見られないのだ。 安全保障政策の選択を間違えれば、その国の安全は崩れてしまい、国民の生命を守ることはできない。国際政治の歴史をこれまで研究し、また大学で教える立場にある者として、歴史上多くの国が安全保障政策の選択を間違えたことで、国民の生命を犠牲にして、不毛な戦争を招いてきたことを学んできた。経済政策を一つ間違えても国が滅びることはあまりない。しかしながら、安全保障政策の一つの誤りが、国家の存亡に直結した例は溢れている。74年前に日本は、安全保障政策の選択を間違えて、平和を破壊し、膨大な数の国民の生命を奪い、またアジア太平洋地域に破滅的な惨状をもたらした。これほどまで重要な安全保障政策につい
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