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トランプ政権以降、アメリカの入国管理は厳格になっている(画像はイメージ写真) anouchka/iStock. <近年、アメリカに入国しようとする日本人が「別室送り」になって取り調べを受けるケースが多数報告されるようになった> 日本とアメリカの間では、1988年にビザ免除が開始されて以来、人の往来はスムーズになりました。当初は、何も準備は必要なく、入国時にフォームに記入して、入管でスタンプをもらえば良かったのです。その後、21世紀に入ってESTAという「事前承認を得る」プログラムというのが始まります。これはテロ容疑者などブラックリストに乗っている乗客をチェックするためのものであり、一旦登録が受理されれば特に問題はありませんでした。 いずれにしても、日本のパスポートは世界で一番「滑りがいい」と長い間言われていたなかで、日本からアメリカへの渡航の際に「引っかかる」ケースというのは、多くのはあり
<可能な限り難民を受け入れようというアダムス市長の姿勢を市民も支持している> 2022年の春以来、ニューヨークには続々と移民を乗せた大型バスが到着しています。そのほとんどは、南部国境を越えてアメリカにやってきた「難民申請者」ですが、中南米から直接ここへやって来たのではありません。多くの場合は、フロリダ州とテキサス州から「転送」されてきたのです。 この2州の知事は保守系であり、トランプ前政権と同じく壁を完成させて南部国境を閉鎖せよという主張をしています。また、不法越境ではなく難民申請を求めて国境についたホンジュラスやベネズエラなどの人々についても、テキサスやフロリダとしては面倒を見る必要はないとしているのです。 そこで、この2州は、難民申請者をニューヨークなどに「送り込み」始めたのでした。トランプ政権の不法移民摘発と追放の政策に反発し、「自分たちのコミュニティーは少なくとも不法移民の基本的人
<現代アメリカのフェミニズムを前面に押し出しつつも保守派の攻撃を回避したのは見事だったが> 映画『バービー』が日本でも公開されました。そのスタートは決して大ヒットという勢いではないようで、公開直後の興行収入ランキングでは「8位」となっているようです。原因としては、原爆ツイートの炎上もあると思いますが、日本における女性の権利獲得という状況が、あまりにも遅れているということもあると思います。 日本の場合は露骨な昇進差別、セクハラ、パワハラ、マタハラといった不公平な扱いなど、個別の戦いが切実という現実があると思います。そんななかでは、いくら女性の権利を主張したメッセージ性のある作品でも、個々の人への「刺さり具合」というのは、色々ということなのでしょう。韓国での苦戦と同様の構図があるのではないかと思われます。 それはともかく、この『バービー』は、2023年現在のアメリカにおける「フェミニズム」のメ
<海外視察に行ったら仕事以外してはいけないといった杓子定規な考え方では、現地の文化・社会を理解することはできない> 自民党の「党女性局」の政治家ら38名がフランスへの海外視察の際に「エッフェル塔での記念写真」などをSNSに投稿して批判を浴びました。この問題については、この視察が「少子化対策を学ぶ研修」であったことを無視して、その成果を問う以前に視察そのものを否定するように世論を誘導するのは乱暴だと思います。 この視察旅行ですが、フランスの少子化対策ということであれば、当然次の3点が含まれると思います。「手厚い現金給付」「婚外子の社会的受容」「3歳児からの義務教育」という3つです。いずれも、日本でも検討が必要な政策であり、政策当事者の声を聞くことだけでなく、賛否両論の生の声を聞くこと、そして制度改正の成果を実際に目撃することは良い参考になるでしょう。 そこで見聞きしたこと、経験したことを、今
<原爆開発をテーマにしたこの作品を、被爆国日本は当事者として評価する権利がある> 現在、世界で最も注目されている映画監督の1人、クリストファー・ノーラン監督(『ダークナイト』『インターステラー』)の最新作『オッペンハイマー』がアメリカで公開されました。7月21~23日という、最初の週末の興行収入は8250万ドル(約117億円)と、科学者の伝記映画としては例外的なヒットとなっています。 内容は、アメリカ陸軍による原子爆弾開発計画「マンハッタン・プロジェクト」のリーダーを務めた物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描くものですが、単に原爆開発のストーリーだけでなく、非常に複雑な構成が取られています。主人公の半生に加えて、後に「赤狩り」の犠牲者として追及を受けた尋問の様子、さらに彼を陥れた黒幕に対する議会の審議という3つの時間軸がモザイクのように散りばめられ、それぞれが緊張感のある対話劇にな
<宗教的タブーや菜食主義など、外国人観光客の食のニーズに体系的に対応しなければならない時期に来ている> 日本へのインバウンド観光客が激増しています。京都や鎌倉など観光地では、交通機関の慢性的な混在が発生していますし、羽田など空港の混雑も前代未聞のレベルです。コロナに関する入国規制が撤廃されたことに加えて、そもそも円建てでも安い物価が、1ドル140円台という円安で、ドルなど外貨に換算すると更に安くなる状況が後押ししていると思われます。 その実数ですが、毎月増加傾向にあります。2023年4月の時点では一カ月200万人に迫っており、この分だと年間では2500万人というペースです。ちなみに、コロナ禍前の2018~19年には年間3000万人を超えていたのですが、現在の数字は中国人旅行者が完全に戻っていないなかで、やはり驚異的と言えるでしょう。 そこで気になるのが「食」への対応です。何だかんだ言って、
<以前の「ニューヨーカー」は郊外に転居してしまい、都市経済の回復はなかなか見通せない> 2020年春以降、コロナ禍によるロックダウンが、ニューヨークを直撃しました。正確に言うと、この街には二重の衝撃が走ったと言うことができるでしょう。国境が事実上閉鎖されたことによる、国際観光都市という機能の消滅と、テレワークの一般化による昼間人口の消滅という衝撃が重なったのです。 その結果として、半数以上のレストランが廃業に追い込まれ、ホテル業界と公共交通機関も大きな打撃を受けました。都市の経済ということでは、現在でもニューヨークはコロナ前の水準への回復は見通せていません。アメリカ全国ということでは、経済の指標は明らかに好調です。ニューヨークに本拠を置くような金融や情報系の産業も、一部の銀行を除けば好調です。 ですが、いわゆる「ニューヨーカー」はマンハッタンから1時間ぐらい離れた郊外に転居して、夫婦ともに
<本来ならシステムを作る段階で名前、住所のデータ様式は統一しておく必要があった> マイナカードの運用がうまく行っていないようです。これについて河野デジタル相は、「日本の住所はヤバい」とか、「マイナを推進したのは旧民主党」だなどという発言をしています。どちらも間違ってはいませんが、責任回避のように聞こえる発言は、かえって信頼を悪化させるだけと思われます。 かといって、河野大臣のように実務への理解能力のある閣僚を外して、理解も説明もできないような政治家が担当大臣になるようなら、迷走は深まるばかりになる危険があります。河野大臣は今こそ「突破力」を発揮して、この問題への信頼回復を果たして頂きたいと思います。 具体的にどうやって信頼回復をするのかというと、大規模なDXの推進を「人海戦術」でやるなどということはあってはなりません。そうではなくて、できるだけデータをクリーンにして、シンプルかつ強力なシス
<まるで開拓時代のような共和党の「自己責任論」と、教育の権利を侵害する規制緩和は認めないとする民主党のせめぎ合い> 昨年以来、アメリカの各州では「児童労働」についての議論が盛んになっています。児童労働(チャイルド・レイバー)といっても、アメリカが世界各国の人権に関心を向けているとか、あるいは、アメリカ国内でも、違法なブローカーなどが海外から未成年者を不法に連れてきて強制労働させるといったケースではありません。 各州において、普通に住んでいるその州の子どもたちの「労働」をどうするか、議論が白熱化しているのです。具体的には、14歳から17歳、アメリカの高校1年生から4年生を対象とした話です。 アメリカの高校生が、働く、つまり日本風に言えばアルバイトをするというのは、日常の光景です。日本の場合は、一般的に首都圏など都市部では見かけますが、地方に行くと校則などで禁止されている場合が多いようです。反
<地方の視点で改革を打ち出せるか、実行可能な政策を示せるか> 4月の統一地方選で予想をはるかに超える善戦をした維新の会は、この後、もしかしたら今年のどこかの時点で実施される解散総選挙では、全国レベルで候補を用意する構えです。では、維新の会が本当に全国で勝てるのか、そして全国政党となって例えば連立政権などの軸になれるのかというと、そこには大きな問題があります。 それは、地方政策が確立していないという問題です。 これは、維新の会が大都市圏以外の選挙区でも勝てるのかという問題だけではありません。実際に国政において主要な勢力となった際に、この国をどのような方向に持っていくのかという重要な政治姿勢の問題でもあります。 維新の会としては、自分たちには地方政策はあり、既に公表しているという姿勢です。具体的には、(1)道州制を実施し、さらに自治体の統合を行う、(2)消費税の徴税権を地方に移管するなど地方の
<共和党候補のうち支持率で断トツトップのトランプに対抗するため、デサンティスはさらに保守的な姿勢を打ち出している> フロリダ州のロン・デサンティス知事は、24日水曜にツイッターの音声配信という形で、2024年の大統領選に立候補すると正式に宣言しました。形としては、一方的な演説ではなくイーロン・マスク氏との対談という形態でしたが、配信にトラブルがあり、最初から「コケた」感じのスタートでした。 有力候補として待望論のあったデサンティス候補ですが、当面は共和党内の予備選で勝って統一候補となるのが最優先事項です。ところが、現時点における共和党内の支持率レースでは、ドナルド・トランプ前大統領が圧倒的な差をつけて1位を走っています。政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」が公表している「主要な世論調査の平均値(5月22日までの14日間の集計)」では、 ▽1位 ドナルド・トランプ......53.2
<各大学の「ネガティブ」な反応は、まるで黒船を恐れる幕末の日本のよう> アメリカのベンチャー企業、OpenAIが2022年11月30日に公開した対話型オープンAI「ChatGPT」は、人類の知的活動における生産性を飛躍的に高める可能性を秘めていると考えられます。話題になるのは当然と言えます。 ところがこの4月、新しい学年、年度を迎える中で日本の多くの大学では、大学として「利用の禁止、制限」をするというメッセージを発信しているようです。報道によれば、例えば、上智大学は「リポートや学位論文でChatGPTなどのAIが生成した文章や計算結果などを、教員の許可なく使うことを禁止」と、ここまでは当たり前ですが、「使用が判明した場合、厳格な対応を行う」というネガティブな告知を行っています。 4月7日に行われた京都大学の入学式では湊長博学長が、AI生成の論文には問題が多いと述べ、「文章を書くということは
岸田首相は荒井元秘書官のLGBTQ差別発言に関連して自らのNYでの体験に言及した Kim Kyung-Hoon-REUTERS <被差別体験が政治家を志す原点だとしても、日米同盟強化を打ち出すのならその屈折を引きずるべきではない> 岸田首相は、自身の「(同性婚を認めると)社会が変わってしまう」という発言や、荒井勝喜元首相秘書官をLGBTQへの差別発言で更迭したことに関連して、2月8日の衆議院予算委員会で、「私自身、ニューヨークでの小学校時代に(日本人という)マイノリティーとして過ごした経験がある」と述べました。 この発言について、岸田氏は「まだ、こだわっているのか」という印象があります。というのは、このニューヨークでの小学校時代の経験について、かつて岸田氏は「政治家を志した原点」だと述べていたからです。 岸田氏は、2020年9月に出版した著書『岸田ビジョン』の中で、「アメリカでの差別体験」
<米中間選挙の争点でもあった人工妊娠中絶の権利。既に13州が中絶を完全に禁止していた> 1973年に確定したロー対ウェード判決により、アメリカでは人工妊娠中絶の権利が保障されていた。 だが共和党は徐々に保守系判事を最高裁判所に送り込み、特に2017年に発足したトランプ政権は、保守派判事を3人任命。これで最高裁判事の構成は保守5、中道1(ジョン・ロバーツ長官)、リベラル3となって保守派が多数を占めた。 この時点でロー対ウェード判決の変更は時間の問題となっており、今年6月についに変更された。これによって、各州は中絶禁止法を制定することが認められたのである。 現時点では13の保守州が中絶を完全に禁止しており、深刻な社会問題と化している。(編集部注:11月5日時点) レイプや近親相姦の結果の妊娠でも中絶は認められないばかりか、母体の生死に関わるケースでも、証拠不十分だと中絶手術を実施した医師は逮捕
<災害に乗っからなかった姿勢は評価できるが、その「弱腰」は後々問題になるかも> 先週、9月28日(水)にフロリダ半島西岸に上陸したハリケーン「イアン」は、被害規模はもしかしたら米史上最悪とも言われています。その一方で、現場のフロリダ州のロン・デサントス知事(共和)は「ミニ・トランプ」と言われており、「マスク強制の禁止」「教育現場でのLGBTQカミングアウトの禁止」さらには、「ホンジュラス等難民の北部リベラル州への送りつけ」など極端な保守政策で人気があり、11月の中間選挙では自身の知事選を含めて、民主党とは「正面衝突」の構えです。 その知事選でデサントス知事は、ここで再選されることで保守派の代表として大統領の座を狙う構えです。現時点ではトランプの出馬の可能性は五分五分からやや遠のきそうな気配であり、仮にトランプ不出馬の場合は、統一候補の座に一番近いのは彼という見方は相当にあります。民主党とし
<バイデン政権の不人気から中間選挙で優勢と見られていた共和党だが......> アメリカの政局は、まず残り3カ月強となった11月の中間選挙が注目されます。中間選挙といっても、上院の3分の1と下院の全員が改選される大規模な国政選挙です。同時に知事選、地方議会選などが重なる地区もあります。また、中間選挙が終わると、2024年の大統領選の投票までは残り2年を切ることとなり、今度は大統領選が本番を迎えます。 このアメリカの政局ですが、現在では3つの力学が働いていると考えられます。まず、1つ目はバイデン政権与党の民主党と、野党・共和党の対決です。こちらは、バイデン大統領の支持率がじわじわと低下しています。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」による世論調査の平均値では、支持が37.4%、不支持が56.8%となっており、完全に危険水域です。このバイデン不人気を受けて、中間選挙では下院は共和党が優勢
<トランプ前大統領という対応の難しい政治家を相手に、見事に振る舞ったという評価は高い> 亡くなられた安倍晋三元首相に対して、国内における弔意には温度差があるようです。多くの場合、安倍氏の生前の政治的姿勢に対する賛否が、そのまま弔意の強弱になっているように見えます。その全体を平均すると、国を挙げての弔意であるとか、静粛な服喪というのとは程遠い印象です。 一方で、私の住んでいるアメリカもそうですが、G7諸国に加えてQUADの豪州とインド、台湾そして他のNATO諸国における同氏への評価は非常に高いです。中国とロシアに関しても、弔意の表明としては丁重なものがありましたし、弔意の表明が難しい環境にある韓国でも尹大統領は日本大使館への弔問を行っています。 そこには、かなり顕著なコントラストがあります。理由としては、自国民の視線と、国外からの視線の距離の違いがあります。例えば、オバマ米大統領は、アメリカ
<市場原理で価格が変動することがアメリカでは許容されているが、格差社会が露骨に価格に反映されることは良いことではない> 商品を買って楽しむのではなく、転売目的で仕入れるために買い占めに走る行為が日本では後を絶ちません。いわゆる「転売ヤー」の問題です。買い占め行為が横行することで、消費者が適正な価格で商品を入手できなくなるわけで、社会的には迷惑行為以外の何物でもありません。 このような転売目的の買い占めについては、アメリカでもゼロではありませんが、大きな社会問題にはなっていません。反対に、転売目的のオークション出品というのは普通のことですし、スポーツの試合やコンサートなどイベントのチケットについても、再販売市場があり、転売をするのも、それを買うのも、転売に関する社会的な批判は限られています。 では、アメリカの場合は、問題はないのかというとそうではありません。まず、イベントのチケットですが、2
<米音楽業界は、サブスクを楽曲紹介のツールとして割り切り、ライブやツアーでマネタイズするビジネスモデルになっている> 6月22日に久々のオリジナルアルバム『Softly』をリリースするミュージシャンの山下達郎氏は、サブスクは「おそらく一生やらない」と語っているそうです。サブスクとは、ストリーミングによる音楽を無制限に聴取できる会員制のサービスで、具体的にはApple Music、Amazon Music、Spotifyなどを指します。 今回の『Softly』も基本的には物理的なCDのディスクとビニールと言われるLPレコードでの発売になります。この「サブスク拒否」について、山下氏は、アルバムリリースに先駆けて、Yahoo Japanのインタビューに応じて、次のように語っています。 「だって、表現に携わっていない人間が自由に曲をばらまいて、そのもうけを取ってるんだもの。それはマーケットとしての
<保護責任が厳しく問われるアメリカでは、子どもを一人でお使いに出すことは「非常識極まりない」はずだが......> 日本のNTV系列が放送している長寿番組『はじめてのおつかい』の中から、諸条件に合致したエピソードの放映権がNetflixに売却され、この4月1日から「Old Enough」(「(単独行動をするには)十分に大きい」)というタイトルで世界各国で視聴されるようになりました。一番幼い場合は3歳児未満という幼児が、親に頼まれて「一人でお使い」に行くというリアリティー・ショーですが、アメリカでは大変な話題になっています。 アメリカでは、州によって若干の違いはありますが、基本的に13歳未満の子供に対しては保護者の監視が義務付けられています。ですから幼児に一人で街路を歩かせていることが判明した場合には、その幼児は即座に保護され、保護者は逮捕されるばかりか、そのような「危険な状態を見て見ぬふり
<多国籍企業の利益や株価が膨張する一方で、国内産業には原油高・資源高のコストが重くのしかかる> 20世紀後半の1973年、ニクソンショックによって世界の通貨が変動相場制に移行して以降の約40年間、日本経済は円安と円高に一喜一憂していました。円高を恐れ、円安に安堵する、そうしたクセはこの時期から、日本に染み付いていったのです。当時の日本経済は、輸出向けの製造業が牽引していた時期だったからです。 考えてみれば当たり前のことです。当時の日本の製造業のトップは自動車産業であり、その最大の市場はアメリカでした。仮にアメリカで2万ドルで売っている車があるとします。その車種が、日本から完成車を輸出している場合のコストが、仮に1ドルが100円の場合に120万円だとします。ドルで見たコストは1万2000ドルで、粗利益は8000ドルになります。(実際は、その利益の一部は問屋とディーラーに分配されますが) これ
<戦争への関心は強いが米軍の直接関与には反対、その姿勢では民主党、共和党の支持者間で大きな差はない> ウクライナ戦争が勃発して2週間が経過しました。この間、アメリカでは、同じ自由陣営ということからウクライナへの共感が高まっており、反対にロシアのイメージは最悪になっています。まずこの点については「ブレ」がありません。その一方で、NATOが戦争に巻き込まれるのを警戒し、ウクライナへの支援は「間接的に」行うというバイデン政権の姿勢は支持されています。こちらも「ブレ」はありません。 こうしたアメリカ世論の現状は、複数の世論調査の結果が示しています。 まず、「ニューヨーク・タイムス(電子版)」が3月12日に配信した記事『アメリカの有権者は、今や、ウクライナをフランス、ドイツ、日本と同等の好感度で見ている』というネイト・コーン氏の記事では、オンライン世論調査機関の「ユーガブ」が継続的に調査している「国
バイデンはウクライナを支援する立場を示しつつも、米軍派兵は行わないと明言した Saul Loeb/Pool/REUTERS <ロシアの侵攻をめぐるアメリカの世論は左右、上下の軸で分かれている> ロシアによるウクライナ侵攻のニュースは、連日アメリカのメディアで最大限の扱いが続いています。CNNなどニュース専門局だけでなく、3大ネットワークも「メインキャスター」クラスが西部リビウを拠点にレポートする一方で、戦争報道のノウハウを持った記者は、首都キエフから緊迫したレポートを送る態勢が取られています。 例えばですが、CNNのエリン・バーネット(その後、21時間かけて越境して帰国)、アンダーソン・クーパー、私が著書を翻訳して紹介しているNBCのリチャード・エンゲルなど、アメリカのテレビジャーナリズムにおけるビッグネームたちが、ウクライナから直接レポートしているわけで、これは説得力があります。 こうし
<トランプ以降の分断社会とコロナ禍で疲弊しきったアメリカ人の心を包み込んだ、日本文化の成熟> 濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』は、すでにカンヌ映画祭で脚本賞や国際映画批評家連盟賞などを、そしてゴールデングローブ賞では非英語作品賞を、そして世界各地の映画賞で「作品賞」の栄誉に輝いています。ですから、3月に受賞が決まるオスカーでは、少なくとも外国語映画賞の候補には入ると思っていました。 ところが、先週のニューヨーク・タイムズに、カイル・ブキャナンというロサンゼルスをベースにする批評家のオスカー候補の予想が出て、そこでは濱口監督の名前が監督賞候補に挙がっていたのです。それだけでも驚きなのですが、実際に2月7日に候補作のリストが発表になると、外国語映画賞、監督賞だけでなく、作品賞、脚色賞の候補にまでなっており、合計4部門にノミネートということになりました。 濱口監督の作風、つまり丁寧に時間を
気象学のような「古典物理学」がノーベル賞で評価されるのは珍しいという(昨年12月に米ワシントンで受賞メダルを受け取る真鍋博士) Kevin Lamarque-REUTERS <大学入試対策の結果として、日本では文系志望の学生が物理、化学を敬遠するようになってしまった> 大学入試の季節がやってきました。今年の場合は受験生にとっても、実施側の大学にとっても、寒波とコロナ禍への対応が特に大変だと思います。大学入試と言えば、ノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎博士と対談した際に、博士が入学試験や科学教育について語っておられたことが気になっています。 この対談では「問題を提起する能力が日本の教育には必要」だという議論がされて、このメッセージを中心に朝日新聞の記事でも取り上げられています。 記事の中でも真鍋博士が「入学試験のための勉強」を批判されているコメントが紹介されていますが、対談の中ではもう一つ
日本では夏以降、集中的に現役世代と若者の接種が進んだ(写真は東京の大規模接種会場、21年8月) Issei Kato-REUTERS <政府もメディアもある程度「ワクチン忌避」の世論があることを想定し、敵対せずに包摂する姿勢で臨んだ> 2021年春の状況がまるでウソのようです。3月から4月の時点では、アメリカでは全国各地に「メガセンター」と称する大規模接種会場が設置されて、1日300万人といったハイペースで接種を行っていました。 これに対して、日本では2021年1月に河野太郎氏がワクチン担当大臣になって初めて接種の実務が動き出したような印象があり、4月12日に高齢者の優先接種がようやく開始された際には、都市部では不足が目立つなど混乱も起きていたのを思い出します。 アメリカでは、その後7月4日の独立記念日を「コロナからの独立」だとして祝うなど、ワクチンの効果は出ていましたが、この時点でも日本
<当選回数の多さで決まる党執行部の党議で拘束するのは、議会民主制を弱体化させるだけ> 議会など廃止すべきで、ネットを利用した直接民主制が理想だなどという言論が流行した時代がありました。ですが、直接民主制というのは、極端な減税とバラマキの双方を可決して国家を破綻に追い込み、最後にはポピュリズムが暴走して外部に敵を求めて戦争に訴え、本当に国を滅ぼす危険が予想されるなど機能不全の問題を抱えています。そうしたこともあってか、この種の言論は雲散霧消していました。 そんなわけで、民意と政策の間に代議員をはさむ間接民主制が、当面はベストという理解は揺らいでいません。今回の衆院選もその間接民主制という思想のもとに行われています。 そうなのですが、有権者の間には代議員、つまり国会議員を通じて民意が政策に反映しているという実感は弱いと思います。具体的には、例えば特定の小選挙区において、ある候補者がその選挙区の
<リベラルな地域でも警察官の意識は非常に保守的で、根強い政治不信もある> アメリカでは、2021年の2月以来、新型コロナウイルスの予防ワクチンの接種に「猛烈な」勢いで取り組んできました。ですが、7月以降はどんどん接種のスピードがダウンする中で、デルタ株の感染拡大を許すことで「第4波」が猛威を振るうことにもなりました。 最新の接種率ですが、モデルナ/ファイザーの2回接種、もしくはJ&Jの1回接種を受けて接種を「完了した」人の全人口に占める割合は、57.62%に過ぎず、日本の67.21%と比べると、10ポイントも低いという恐ろしい状況になっています。 中でも、最悪はワイオミング州の42.44%で、下から順にアラバマ、ミシシッピ、ノースダコタ、ルイジアナ、アーカンソー、アイダホ、ウェストバージニア、ジョージア、テネシー、オクラホマ、ミズーリ、サウスカロライナ、インディアナ、モンタナと、15州が5
<地球温暖化理論の事実上の提唱者である真鍋博士の受賞という快挙なのに、背景にある気象研究に関して日本の報道があまり盛り上がらないのはなぜなのか?> プリンストン大学では、多くの関係者がノーベル賞を受賞したことで、華やいだムードになっています。金属元素を含まない「有機分子」を触媒として使うことで、左右対称でない分子を作るなど「不斉有機触媒」の開発をしたデイビッド・マクミラン教授が化学賞を受賞しました。また「最低賃金の導入」などを自然実験のように見立てて進める経済学を提唱した3人の経済学賞受賞者のうち2人は同大の出身です。 フィリピンのドゥテルテ大統領を批判し続けるなど、勇気あるジャーナリズム活動で平和賞を受賞したマリア・レッサ氏も同大卒業生です。なかでも、現在は同大の上級研究員である真鍋淑郎博士の物理学賞受賞は、温暖化理論の事実上の提唱者ということもあり、大きな話題になっています。 この真鍋
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