サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
TGS2024
www.shippai.org
過去のデータ改ざん、隠ぺいを報告するよう全国の電力会社に指示した経済産業省原子力安全・保安院に対し、北陸電力志賀1号機で、1999年の第5回定期検査中に、想定外に制御棒3本が引き抜け、原子炉が臨界状態となったという事象が報告された。その時、原子炉自動停止信号が発信されたにも拘わらず、制御棒は約15分間挿入されないままであった。これに対し、原子力安全・保安院は臨界事故を厳重注意するとともに、志賀1号機について事実と根本原因の究明、抜本的な再発防止策の報告を指示した。北陸電力はこの指示を受け、志賀1号機を停止し、安全の総点検を実施した。 2002年に発覚した東京電力保全データねつ造事件以来、次々と明るみに出た他発電所での似たような事件により、原子力発電に対する信頼が失われゆく中、想定外の臨界を隠ぺいしたこの事件は大きな波紋を呼んだ。北陸電力は行政と社会に対してその信頼回復のために詳細なる説明を
【概要】 小泉改革の象徴的存在として、「師匠」村上世彰氏らとともに一世を風靡した堀江貴文氏は、1996年に資本金600万円で設立した有限会社を、 わずか10年でピーク時株式時価総額1兆円近くのライブドアグループへ急成長させた。しかしその急ぎ過ぎ、手段を選ばない事業拡大の途上、 証券取引法違反容疑で二度にわたり逮捕され、グループは本業ともいえるインターネット関連事業を残す形でほほ解体された。 人生の目標は成功、成功とはより多くの金を稼ぐこと、と言い放ち、しかしそれで得られるのが、貧乏人とは違う世界で、 好きなものを食べ、いい女を、、、と公言する何ともやるせないその哲学は、ベンチャーの旗手として活躍する原動力にもなったが、 法律違反でなければ、見つからなければ、何をやっても稼ぐが勝ち、という倫理性の欠如ゆえに多くの個人投資家や機関投資家などに多大の損失を与えた。 本稿ではライブドア事件とはなん
JR西日本東海道線塚本―尼崎間で、フェンスを乗り越え線路の敷地内に侵入し遊んでいた市立中学生2人の内の1人が、フェンスに面した最も外側の下り線路内で大阪発姫路行き「新快速」(3643M)にはねられ重傷を負った。負傷した中学生を救助するため、線路内に入った淀川消防署の消防・救急隊員6名の内2名が後続列車の京都発鳥取行きの特急「スーパーはくと11号」(61D)に接触し、1人は死亡、もう1人は重傷を負った。駅員や後続の特急「北近畿17号」(3027M)の運転士の連絡ミス、運行を指令する指令員の判断ミスなどで、救助作業中の安全確保が適切でなかったためである。 石垣の上のフェンス(高さ1.1m)を乗り越え、JR西日本東海道線塚本―尼崎間の線路の敷地内に侵入し遊んでいた市立中学生 2人の内の1人がフェンスに面した最も外側の下り線路内で大阪発姫路行き「新快速」(3643M)にはねられ重傷を負った。負傷し
米国ワシントン州のタコマに新しいつり橋が完成したが、完成後わずか4ヶ月のち、毎秒19m/sの横風のために崩壊してしまった。幸い、人命の損傷はなかった。 図1に示すように、米国ワシントン州北西部の入り組んだ湾の海峡部を跨ぐ形で、1940年3月9日に、タコマ橋は完成した。図2に示すように、タコマ橋の中央スパンは853mだが、橋床の幅は車道2車線と両側歩道とあわせて11.9mしかなく、長さに比べて幅の狭い橋であった。 そして施工完成直後から、風が吹くと上下動が大きいことがわかり、その解析と補強方法の検討とが風洞模型実験によって進められていた。 11月7日、振動が激しいという報告が現地からあったため、風洞模型実験を担当していたワシントン大学のフォーカーソン博士とそのグループは、16mmフィルムを用いて橋の撮影を実施した。 最初のうちは、図3上のように、中央スパンは全体で9個の山谷を有し、蛇が蛇行す
1985年8月12日、日本航空123便羽田発大阪行B-747型機が離陸12分後、高度7,200mに達した辺りで後部圧力隔壁の破壊とそれに伴って生じた垂直尾翼構造の破壊により姿勢制御が不能となり、およそ32分間の迷走飛行の後、群馬県上野村御巣鷹山に衝突し、乗員乗客524名のうち520名が死亡する航空機の単独事故としては世界最大規模のものとなった。 事故の直接的原因は機体後部圧力隔壁の破壊であり(図2参照)、大量の高速の空気が流出し、圧力隔壁の後ろにあった集中油圧制御装置と補助エンジン(APU)を破壊し、さらに垂直尾翼のボックスビーム(尾翼に作用する曲げ・ねじり荷重を支える箱型重要構造)を破壊したために垂直尾翼構造のほとんどが失われ(油圧制御配管は4系統あるがそれを集中制御している油圧ユニットが破壊されたため)、舵面制御用の油圧も失われて制御不能に陥った結果、直ちに空中分解することはなかったも
大鳳は排水量34,200トン、水線長253メートル、速力33.3ノット、飛行機搭載数53機で、日本海軍が建造した最強の航空母艦と称せられていた。大鳳は1941年(昭和16年)7月、川崎重工(神戸)で起工した。建造中に緒戦以来の諸戦訓の対策が実施され、工事を極力急いで1944年(昭和19年)3月に完成した。したがって、あらゆる点で最も実戦的な不沈航空母艦と期待されていた。 1944年(昭和19年)6月19日、航空母艦大鳳は日本海軍の信望を一艦に集め、第一機動艦隊の総旗艦として、初陣のマリアナ海戦(あ号作戦)に参加し、第一次攻撃隊を発進させた。その直後、大鳳に米海軍潜水艦アルバコーアの放った魚雷一本が命中した。魚雷の命中によってガソリンタンクの継手が緩み、揮発油ガスが漏洩した。不運なことに、雷撃のショックで前部エレベータが故障し、この開口を塞止したため、揮発油ガスが格納庫内に充満した。数時間後
三菱自動車のリコール隠し発覚の発端は、トレーラーのタイヤハブの破損事故である。2002年1月10日に、重機を運ぶ大型トレーラーから走行中にタイヤがはずれて転がり、歩いていた主婦にぶつかり、死亡した。一緒に歩いていた長男と次男も軽いけがをした。 トレーラーのタイヤハブの破損が原因である。三菱自動車製の大型車のハブ破損事故は1992年以降に計57件発生し、うち51件で車輪が脱落した。三菱自動車は一貫してユーザー側の整備不良としたが、同社から商用車部門を引き継いで分社化した三菱ふそうトラック・バスは2004年3月、製造者責任を認めて国土交通省にリコールを届け出た。さらに、同年5月、関係者5名が道路運送車両法違反(虚偽報告)容疑で、関係者2名が業務上過失致死傷容疑で逮捕され、法人としての三菱自動車も道路運送車両法(虚偽報告)容疑で刑事告発される結果となった。すなわち、企業の責任が正面から問われる構
2000年3月27日北海道有珠山で、火山性地震が始まり、地震の回数が日増しに増加した。3日後、有珠山西側で新しい断層、地割れが見られた。次の日、3月31日の13時7分西山山麓から23年ぶりに噴火し、噴火による降灰は虻田町、壮瞥町、大滝村のほか、苫小牧市、千歳市など広範囲に及んだ。4月2日、金毘羅山で泥流、噴石を伴う2度目の噴火が発生し、熱泥流が洞爺湖温泉街に迫った。その後も熱泥流により橋の流出もあった。 噴火の原因は、有珠山の地下10km余りのところに存在していると推定されるマグマに、もっと深いマグマの発生源からここにマグマが供給されて、噴火したものと推定される。 これだけの規模の噴火にもかかわらず、迅速な情報提供、各関連部門の連携、ハザードマップの作成や住民の災害に対する普段の意識付けなどによって、1人の犠牲者も出なかった。なお、住宅被害は、全壊234戸、半壊217戸。道、市町村の被害金
1954年1月10日、ローマを離陸した与圧客室を持つ世界最初のジェット旅客機コメットG-ALYP機が、地中海エルバ島近くの高度約8,000mに達したところで与圧の繰返しによる疲労破壊で空中分解事故を起こし、35名の搭乗者全員が死亡した。 コメットは世界最初のジェット旅客機で、英国デハビランド社において第二次世界大戦の末期に開発され、1952年5月に就航した。その第1号機である英国航空のコメットG-ALYPが1954年1月10日、ローマのチアンピーノ空港を離陸して北上中、地中海エルバ島近くの高度約8,000mに達したところで空中分解事故を起こし、水深180mの海中に墜落した。乗員6人、乗客29人の全員が死亡した。海底から機体を引き上げて調査した結果、自動方向探知機のアンテナ窓に、疲労破壊の起点が発見され、与圧の繰返しによる疲労破壊という原因が解明された。 コメット1型機(G-ALYP)を図2
本データベースの記述は各事例の分析当時に得られた情報を元にしております.それ以降に判明した事実や新たな知見は反映されておりません.
オハイオ州、ミシガン州、ペンシルバニア州、ニューヨーク州、バーモント州、マサチュセッツ州、コネティカット州、ニュージャージー州、オンタリオ州(カナダ) 真夏のアメリカ北東部8州とカナダ南東部1州で、電力供給支障が約6180万kw、停電人口約5000万人、被害額40~60億ドルと、北米史上最大の停電となった。米国オハイオ州北部ファーストエナジー(FE)社の発電所で送電線に障害が発生したのをきっかけとして、送電線の樹木との接触による遮断などで、電力系統内で電力動揺が発生し各州の発電所が次々と電力供給を停止したことが原因である。電力インフラストラクチャーの脆さを見せつける結果となった。今回のカスケード現象(連鎖的に伝播する現象)で生じた停電の範囲を図2に示す。 2003年8月14日12:15、FE社の信頼性コーディネータ(MIMO)の状態予想機能(SE)が停止する。SEの異常に気付いたアナリスト
2002年7月,富士通がパソコンおよびPCサーバ内蔵ハードディスク装置の不具合について公表した。高温多湿下においてHDDを利用していると,HDDコントローラLSI(他社製)の端子間が短絡し,HDDの動作に支障を来たす。無償交換など対策のため約100億円規模の費用が発生した。使用開始から半年~1年後にLSIのパッケージ内のピン間短絡で故障が発生した。このLSIの端子間短絡は、赤リンを含む住友ベークライトのパッケージ封止材が原因。これに対して,封止材を提供した住友ベークライトは「パッケージ組立メーカーの認定を受けた材料を提供している」と正当性を主張,責任の所在をめぐり法的紛争にまで発展した。封止材メーカー,パッケージ組立メーカー,LSIメーカー,HDDメーカー,そしてパソコン・メーカーと,エレクトロニクス業界におけるサプライ・チェーンの中で,複雑に水平分散化した業界構造が一因にある。 問題とな
失敗知識データベースの構造と表現 (「失敗まんだら」解説) 平成17年3月 独立行政法人科学技術振興機構(JST) 失敗知識データベース整備事業 統括 畑村 洋太郎 さまざまな失敗が多発する最近の日本を見ていると、まるで失敗のオンパレードである。なぜこのような失敗が多発するのか? そしてその失敗を起こさせないようにするためにはどうすればいいか? さまざまな組織や人が、この種の失敗が起こらないようにと一生懸命考え行動している。その最も一般的な例が失敗事例集、不具合事例集、事故事例集などを作ることである。そしてまじめな企業、組織はどこも懸命にこの種の失敗事例集を作っている。しかしそれらは少しも生かされていない。失敗事例集を作る者から見れば、十分にそれが仕事の中に生かされ、失敗を未然に防ぐことを期待しているのに、それらが生かされず同じ失敗が繰り返されるのはなぜだろうか? その原因の1つは"失敗
科学技術分野の 事故や 失敗の 知識と 教訓
平成3年3月14日14:05頃に、広島市高架式軌道「新交通システム」工事現場において、長さ63.4m、重さ60トンの鋼製箱桁が、10m下の県道に落下して、民間人10人を含む15人が死亡し、8人が重軽傷を負う大惨事となった。 ・ジャッキ受台は、H型鋼を3段同じ方向(通常は井桁状)に積み重ねた。また、H鋼には補剛材がついていなかった。 ・補強されていない部分が直接ジャッキを受けたため、桁が変形した。 ・主桁を支えていた3台のジャッキのうち2台のいずれかで支点反力が変化し、その瞬時、いずれかで耐荷力を超えた。 ・残りの1台も反力を支えきれなくなり、2台のジャッキの受台がほぼ同時に倒壊した。 ・橋桁は橋軸回りに半回転しながら、県道に落下し、信号待ちしていた11台の車両を押しつぶした。
第一勧業、富士、日本興業の3銀行のシステムを「みずほ銀行」として一本化するシステム統合で、統合の方針決定が紆余曲折し、システム統合のスケジュール・統合作業が遅れて、予定していたシステム稼働テストの開始がずれ込み、十分な見極めができないまま開業したため、開業初日から現金自動預入払出機(ATM)の障害が発生、さらに公共料金の自動引き落としなどの口座振替に遅延が生じるトラブルが起きた。トラブル発生後も対応が遅れるなどで、口座振替の遅延が拡大、大混乱となり最大級の大規模システム障害に陥った。 第一勧業、富士、日本興業の3銀行が再編して誕生した「みずほ銀行」は、営業初日(2002年4月1日)に現金自動預入払出機(ATM)の障害が発生、さらに公共料金の自動引き落としなどの口座振替に遅延が生じるトラブルが起き拡大した。口座振替に遅延は4月1日だけで105,000件に達し、翌日以降の積み残しとなり、連鎖的
ナノ・マイクロ加工・力センサ・加工の知能化・医学支援工学・技術の伝承と教育の方法論.失敗知識活用研究会を通じた失敗学の構築.実際の設計研究会.創造設計原理の研究.
組立完了した大形タービンの安全および性能確認のため試運転していたところ、直径(最大)1,778mm、胴部長さ3,590mm、重さ50トンのロータが突然破裂し、破片が飛散した。死者4名、重軽傷者61名の犠牲者を出した。 タービンの大形化・大出力化のなかで、それまで高圧1軸・中圧1軸・低圧2軸だったものを、図1に示すように高圧と中圧を併せて1軸・低圧2軸として軸数を減らし、さらに最終段ブレード(翼)の取付け部のリング部材を一体化して大径化することになった。タービンロータは外周にブレードを植え付けた高速回転体である。 組立完了したタービンを、安全と性能の確認のために、定格速度(3,000rpm)の20%増しの速度(3,600rpm)まで回転数を上げる120%過速度試験を行なおうとした。 ところが、速度を上昇させている途中、3,540rpm(定格の118%)で突然ロータ
2016年2月7日付け、日経新聞朝刊に、再建への道程(6)フクシマは「想定外」かという記事が掲載され、以下のように始まっている。 『東京電力・福島第1原子力発電所は、津波による浸水で電源を失い原子炉を冷却できなくなって核燃料が溶けた。事故は本当に「想定外」だったのか。東電が用心深く判断し発電所に備えがあれば、事故の拡大を防げた可能性がある。』 失敗学会「津波対策研究会」も、日経担当記者も、同じ結論に達した。さらにIAEAもその最終報告書で巨大津波は予測できたと明言している。 古川元晴氏による疑問提起の論文を受け、吉岡律夫さん、淵上正朗さん、私の4人を中心に、1.福島での巨大津波の予見可能性と、2.どうすれば、福島事故を過酷事故にせずに抑え込むことができたか、を検討した。失敗学会やその他有識者からの助言を得ながら、結論にたどり着いたのが、昨2015年9月30日の報告書 である。 昨年の年次大
【概要】 2007年5月5日(土)、午後0時50分ごろ、大阪万博記念公園に隣接する遊園地で立ち乗りジェットコースター風神雷神IIが走行中、 左側車輪ブロックが突然脱落し、2両目車両が左に大きく傾いた。この2両目前方の乗客が保守通路手すりに頭部を強打して死亡し、 残り乗客19名も病院に搬送された他、事故を目撃した人のうち、15名も気分を悪くするなど負傷者と記録された。 各車輪ブロックには5つの車輪があり、これを止めていたナットのところで車軸が折れ、しばらく走行した後、車輪ブロック全体が脱落、 左側支えを失った車両が大きく姿勢を崩した。 原因は車軸に金属疲労で深い傷があったところ、軌道が上向きから下向きに変わるところで、傷が進行中の車軸断面で、 かろうじてつながっていた部分が曲げ力に耐え切れずに引きちぎれた。この遊園地では、装置検査の頻度、検査そのものも不十分で、 同アトラクションを15年間走
1 No.68、2011-12-20 発行 我々はどこで間違えたのか?(福島事故の検証) 2011 年 12 月 10 日、失敗学会の年次大会で、講演とパネル討論をした際のスライド等を元に、 「我々はどこで間違えたのか?」ということを以下にまとめました。講演で回収したアンケート 用紙には、100 人近い方が、色んな意見や質問を書いて下さり、大変、有難く思っております。 これまで、多くのメモを書いてきた理由は、福島 3 号機・5 号機の設計に携わり、何らかの責 任ある人間として、何かできることはないか、という思いからです。講演のタイトルの「我々」 とは勿論、私も含んでいます。 所で、今回の震災や事故で何度も「想定外」という言葉を聞きました。原発が人工物である以 上、今回の事故が人災であることは明白です。しかし、世の中の事故には、人類が未知の事象も ありえます。従って、 「それは想定されていた
【概要】 2006年6月3日、東京都港区共同住宅12階のエレベータにおいて、 男子高校生が自転車に乗ったまま後ろ向きにエレベータから降りようとしたところ扉が開いたまま上昇し、 男子は内部の床部分と12階天井の間に挟まれ窒息死した。 このエレベータの製造社製のエレベータでは以前から度々トラブルが起こっていたものの多くの欠陥が放置されていた。 【発生日時・場所】 2006年6月3日、午後7時20分ごろ、東京都港区共同住宅「シティハイツ竹芝」エレベータ12階 【経過】 2006年6月3日午後7時20分頃、東京都港区共同住宅「シティハイツ竹芝」12階のエレベータにおいて、 男子高校生がエレベータの床部分とエレベータ入り口の天井に挟まれ死亡するという事故が起きた。 死亡した男子高校生は同マンションの13階に住む女性と一緒に1階からエレベータに乗ったが、 この時自転車を引いて前向きに乗り込んでいた。
1 No.63、2011-9-11 発行 ①冷温停止したから大丈夫? 3.11 事故から半年たって、福島メモもそろそろ終了かな、と思っていましたが、最近、 何人かの方から「福島は冷温停止したので安心」という感想を貰って「やはり、そう思っ てしまうのかな」と感じました。原子力の専門家なら夢にも思わない感想だからです。 ネットの辞典を見ると、 「冷温停止状態:原子力発電所などにおいて、原子炉内の温度が 100 度未満となり原子炉が安定的に停止した状態のこと」とあります。 これだと、TVや洗濯機のスイッチを切れば大丈夫。2 度と勝手に動きだしたりしない、 という印象ですよね。でも、3 月 11 日の事故のとき「燃料は原子炉が停止した後も、なぜ 冷却が必要か」を家人に説明したら「燃料は要するにゾンビなのね。何年経っても絶対に 死なないということね」と返事が来ました。そうです。燃料の崩壊熱は、6 ヶ
1 No.54、2011-7-11 発行 無意味なストレステスト ストレステストとは、EUが、福島事故を受けて導入したシミュレーションによって確 認する再評価の仕組みで、テストとは言っても、実機の試験はしません。ストレステスト では地震や津波の規模を段階的に大きくしていった時に、原発の設備や機能にどのレベル でどんな影響が出るかを計算や解析で出すものです。 今回の福島原発事故では、地震と津波によって、電源が喪失し、かつ、海水冷却機能が 失われ、いわゆる過酷事故に至った訳です。これを受けて、日本の原発は全て、予想され る地震や津波への緊急対策工事をした、とされるので(下記記事参照) 、今更、ストレステ ストをやる意味は全くありません。合格の結果が出るのは自明です。原子力安全委員長が 「ストレステストは再稼動の条件ではない」と国会で説明しているのを TV で見ましたが、 安全性向上には関係しな
1 No.49、2011-6-22 発行 融けた燃料は何処に? 本メモの読者の何人かの方から「メルトダウンした燃料は何処まで落ちているか?」とい う質問を頂きました。 まず、東電と保安院は、それぞれ解析をして 1)燃料は 2800 度になった(いわゆるメルトダウン状態) 2)圧力容器・格納容器に大穴は開いていない としています。 1)が正しければ、鉄の融点は約 1400 度で、1000 度付近から軟化して強度を失うので、 炉心から落下した 2800 度で 100 トンものウランは、圧力容器(約 16cm 厚さ)を破り、さ らに格納容器(約 3cm 厚さ)も破るのは確かです。 一方、2)が正しければ、燃料は 2800 度に達していない、ということです。 つまり、1,2は相互に矛盾するので、東電も本件は「謎」としています。現在まで、こ の謎に答えた人は誰も居ません。 私も、事故当初の数日間は、
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『https://www.shippai.org/』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く