癌のウイルス療法研究が進展してきた。膵癌患者を対象に、変異単純ヘルペスウイルス「HF10」を用いた臨床研究では、生存日数を180日以上延長させるとの成績が得られている。粕谷英樹氏(名古屋大学医学部消化器外科)が先の日本癌学会で報告したもので、問題となるヘルペス抗体量の増加も見られなかった。「HF10」については、既に進行再発乳癌を対象とした臨床試験も行われており、完全寛解が得られるケースもみられている。膵癌でも有効性が確認されたことから、研究はさらに加速しそうだ。 変異型HSV「HF10」に期待 単純ヘルペスウイルス(HSV)などの癌溶解性ウイルスは、強い細胞変性作用を持ち、経時的に癌細胞を破壊しながら増殖する。中でもHSVは、ヒトのほぼあらゆる種類の細胞に対して感染可能なことや、アデノウイルスなどに比べて感染効率がよいこと、ゲノムの全塩基配列が解明されていること、増殖を抑制する抗ウイルス