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これまでの4回で、東電福島原発事故を防ぐ好機を、原子力安全・保安院が逃し続けた様子をみてきた。まず2002年8月には、福島沖の日本海溝で起きる高い津波を東電に計算させることに失敗した。2006年から2007年にかけては、想定超え津波の対策(津波アクシデント・マネジメント、津波AM)を東電に実施させることができなかった。連載のこの回からは、約1100年前に東北地方を襲っていた大津波「貞観津波」の問題に、保安院として東電に対処させることができなかった「最後の大失敗」について、2008年以降の経過を保安院職員や東電社員らが検察に供述した調書などから明らかにする。 2005年以降、貞観津波の研究が進んだ 869年に発生した貞観地震については、『日本三代実録』に「原野や道路はすべて青海原のようになってしまった」「溺死するものが千余人」などの記述があるものの、津波の高さなどについて数値的なデータはなか
東電福島第一原発事故前に東電社内でやりとりされていた電子メールを集めた捜査報告書を、法務省が2021年10月28日付で開示した[1]。東電から提出されたハードディスク(HD)から、メールデータ61通分を復元し、文書にしたものだ。2008年から2011年にかけて、東電内部で津波のリスクについてどのように認識していたか、そして外部の専門家に根回ししたり、他の電力会社に圧力をかけたりして、津波対策の遅れが露見しないよう工作していた状況がわかる。事故の原因を解明するための第一級の資料だ。そして、これらのメールを東電は政府や国会事故調には提出しておらず、さらに検察の初期の捜査でも利用されておらず、強制起訴された後の2017年になって指定弁護士によって発掘されたらしいことも示している。 デジタルフォレンジックで指定弁護士が発掘 開示された文書は、「捜査報告書(メールデータの抽出印字について)」2017
ルポライター・明石昇二郎 大変使い勝手の良くなった全国がん登録データ 全国がん登録のデータは、それまではがん患者が亡くならない限り明らかになることのなかった「がん患者多発」の傾向を、がんの発生段階で把握することで異変をいち早く掴み、治療や原因究明に役立てるためのものである。しかし現状は、その力を十分発揮できるまでには至っていない。 代表的な発がん性物質として知られる放射性物質を大量に撒き散らした結果、原発事故の国際評価尺度(INES)で過去最悪の「レベル7」と認定され、環境をおびただしく汚染していた東京電力福島第一原発事故では、被曝による健康被害を受けた人はこれまで一人もいないことにされている。ありえないことであり、実態を把握しようとしていないだけの話である。健康被害は何もがんばかりではないと思われるが、まずは全国がん登録データを積極的に活用していきたい。 全国がん登録のデータは2015年
1990年朝日新聞社入社。大津支局、学研都市支局を経て、大阪本社科学部、東京本社科学部などで科学・医療分野を担当。原発と地震についての取材を続ける。2011年5月に退社しフリーに。国会事故調査委員会で協力調査員として津波分野の調査を担当。著書『原発と大津波 警告を葬った人々』(岩波新書)他。
検察調書、閲覧可能に 新事実続々 東京電力福島第一原発の事故に関して、東電社員や原子力安全・保安院の職員らが検察に供述した内容をまとめた調書が、東電株主代表訴訟で3月28日に証拠として採用された[1]。そのおかげで、これまで非公開だった調書が、東京地裁で閲覧できるようになった。この中には、政府や国会の事故調報告書や、刑事裁判の公判では明らかにされていなかった情報も多く含まれている。東電や国が事故を引き起こした過程を詳しく調べるための重要な手がかりとなりそうだ。 数多い新事実の中で、この記事では以下の項目について取り上げた。 ・保安院室長が「政府事故調に嘘ついた」と告白 ・東電、東北電力の津波報告書を書き換えさせる ・東電、日本原電の津波報告書にも圧力 ・保安院も東電の「貞観隠し」に加担 ・バックチェックの短縮、保安院首脳が指示 ・溢水勉強会の詳細判明 小林勝氏(撮影・木野龍逸) 「政府事故
高エネルギー加速器研究機構の黒川眞一・名誉教授に聞く 藍原寛子 東京電力福島第一原発事故後、放射能の拡散と汚染に伴う住民の被曝影響を調べるため、福島県伊達市が市民にガラスバッジを配布し、収集した被曝線量データを用いた2つの研究論文が、社会問題に発展している。こうした研究は、人を対象とする医学系研究で、研究者は研究を開始する前に、被験者(研究の対象となる人)に十分に説明をおこなった上で、同意を取得することが義務づけられている。 一つは国際専門誌Journal of Radiological Protection(JRP)に掲載された「第一論文」 “Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP
ルポライター・明石昇二郎 最新の2014年「全国がん罹患モニタリング集計」データが9月15日に公表された。このモニタリングデータは、東京電力福島第一原発事故で被曝した福島県民に、健康面での影響がみられるかどうかを検証するためにも使われるとされている。最新データを使い、さっそく検証してみることにした。 『週刊金曜日』2018年3月9日号に拙稿「福島で胃がんが多発している」が掲載されてから、半年が過ぎた。 この記事は、国の「全国がん登録」(全国がん罹患モニタリング集計)データを検証したところ、東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原発事故が発生した2011年以降、福島県で胃がん患者が多発していることが確認されたため、その事実を報じたものだ。 検証したのは、2008年から2013年までの6年分のデータである。単に患者数が増えているだけではなかった。統計的に有意な多発状態にあった。 当該記事では
ファクトチェック 復興庁の「放射線のホント」を検証する① 「放射線量の増加」と「原発事故」を結びつけて考えることのできない、福島県の子どもたちの存在――。この現実をどう考えるか 福島大学准教授 後藤忍さんインタビュー 福島県の子どもたちの中には、「放射線量の増加」と「原発事故」を結びつけて考えることができない子がいるのだそうです。この現実をどう考えればいいのでしょうか。 福島大学の後藤忍先生にお話を伺いました。 ・政府資料が否定する現在の「リスコミ」のあり方 現在行われている「リスクコミュニケーション」については、原発事故前の政府側の「リスク評価」も、事故後の「リスク管理」も、定義上それらを含む「リスクコミュニケーション」(以下、リスコミ)も、すべて失敗したと思います。その失敗に対して政府側は「受け手(住民)の捉え方が違っている」という認識を通しています。 福島大学准教授 後藤 忍さんプロ
「地震と原発」6月1日の報告資料 6月1日のオンライン報告にご参加いただき、ありがとうございました。 当日のパワーポイント資料を掲載しました。 次回は6月15日(土)午後8時から、白石草さん「甲状腺がん裁判、今、どうなっているの?」で… 続きを読む »
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