【中原】意外に思われるかもしれませんが、私の専門である組織不正や組織不祥事の研究では、実はそれほど変わった指摘ではありません。 「正しさ」は、学術的には「正統性」や「合理性」とも置き換えられます。 不正を起こした企業側の論理では、その行為は「正しいものである」と認識されており、そうであるがゆえに長らく常態化するものと言えます。 しかし、社内ではいくら「正しいもの」であっても、外から見たときに「不正である」とみなされるケースが少なくないのです。 組織不正とは、企業側は「危ういことに手を出している」というよりも、「正しさ」、つまり社内で共有されていることに正統性や合理性があり、外部の組織が持っている「正しさ」との緊張関係にある中で起きた問題だ、とみることができるのです。 ――一般的な組織不正に対する見方とは異なりますね。 こうした見方があまり世の中で行われていないので、あえて問うてみました。