近年メディアで大きな問題として扱われることの多い「ヘイトスピーチ」、そして「ヘイトクライム」。表現の自由を大義名分として行われる差別的言動の数々だが、これらの問題には日本社会の「国語力崩壊」が関係しているのではないだろうか――。 本記事では国語力崩壊が引き起こしたヘイトクライムの一例として、2022年にコリア国際学園で起きた放火事件に、ノンフィクション作家の石井光太氏が迫る。裁判記録から見えてきた「ヘイト思想に洗脳されていくプロセス」とは。 なぜ「何の知識もなかった男」が差別思想に染まって放火まで起こしたのか? 2022年4月5日午前2時過ぎ、大阪府茨木市にあるインターナショナルスクール「コリア国際学園中等部・高等部」に、1人の男がガスバーナーを手にして不法侵入した。太刀川誠、30歳(事件当時)である。 太刀川が同校に踏み入ったのは、SNSで在日韓国・朝鮮人(以下「在日」)への差別発言に触