プロ野球の阪神戦や春夏の高校野球が開催される甲子園球場(兵庫県西宮市)。開場した100年前から、その観客輸送を担っているのが阪神電気鉄道だ。球場最寄りの甲子園駅を利用するのは球場を訪れた観客の約6割。連日、約4万2千人の観衆を集める阪神戦の場合、短い時間に2万5千人以上が押し寄せる。どのように安全に観客を運んでいるか。「神業輸送」のノウハウに迫った。 状況は日々異なる9日、甲子園球場ではナイターで阪神-ヤクルト戦が行われていた。駅長室のテレビで戦況を見つめるのは重森隆二駅長(61)。午後6時から始まった試合は阪神が1点を先制され、なかなか追いつけない重苦しい展開。8時50分すぎ、阪神が八回のチャンスを逃すと、重森駅長は席を立ち、ホームへ上がった。 残念そうな表情の一方、頭の中は、あることでいっぱいだった。帰りの観客を乗せる臨時特急をどのタイミングで出すか。駅長と本社運転課の社員が最終判断す