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アメリカ大統領選
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「みんなが」で語れる時代は終わった かつて僕らは、向こう側にいる絶対的な神が自分を守ってくれると信じていたから、安心して傍観者的に世の中を眺めることができました。 だから僕らは傍観者として、社会を批判する時も、だれかの目線を借りていました。 「僕はいいけど、皆はそれを許さないと思うよ」 「ほら、おじさんに怒られるわよ」 「それを被害者の遺族の前で言えますか?」 絶対的な神に守られた絶対的な傍観者だったからこそ、誰かの目線を勝手に借りて、さも自分が社会や被害者や弱者の代弁者のようにして語ることができたのです。 でもそうやって語る僕らは、決して当事者本人じゃなかった。でも当事者じゃないからこそ、逆に安心して「みんなが非難してるぞ!」と言い放つことができたのです。 絶対的な神が、僕らを守ってくれる。守られなくなったのは、その絶対的な神が暗黒面に転んだからだ。じゃあその暗黒面に転んだ神を、僕らは叩
僕たちは自分たちで神話を語ることを放棄してきた 僕らの祖国。僕らのこの日本は、政治を「風景の向こう側」にある手の届かないものとしてとらえてきました。そして僕らのいる「こちら側」だけで軟弱で幽玄な文化を楽しみましょう、と。そして風景の向こう側にある政治的な「何か」は神が生み出す神話としてとらえ、言ってみればその神々に全部負ってもらって神話を語ってもらい、それによって僕らは自分たち自身で政治を語ることを放棄してしまおう、と。 それこそがこの日本社会の神話の構造だったのです。 僕たちの生活と文化。その生活と文化を支えてくれる神話という物語。その神話を支える神々。 その神々に僕たちは絶対安全のような完璧を求め、安心を託してきました。僕たちひ弱な人間は完璧でも絶対でもないけれども、風景の向こう側に見えている神話の世界は完璧と絶対に彩られた堅固な世界である、と。 だから僕たち自身は、安心してのんびりこ
相克に向き合い続けるということ 教育者として自分の教え子を死地へと向かわせるという相克。 この痛みを、南原繁さんが胸中どのように考えていたのか。自分自身のことについては、彼は戦後多くは語っていません。 南原さんは戦争が終わった直後の四五年十二月に東京帝大総長に就任し、荒廃してしまった大学の再建に努力しながら、「新たな国民精神の創造」を呼びかけ続けました。 そして四六年には、日本の国民が建国以来の完全な敗北と悲惨な状態におちいったことに対する道徳的、精神的な責任をとって天皇陛下が退位すべきだとも語りました。 彼は昭和天皇が、多難な時代の中で歴代の天皇にはなかったような悲惨な運命にさらされていたことに深く同情し、だから政治に翻弄された陛下には政治的な責任はなかったとも語っています。政治・法律としての責任と、道徳・精神としての責任。その二つの責任の狭間で宙ぶらりんになっている天皇陛下。 そういう
「明るい気持ちになんてなれない」 東京大空襲をからくも生き延びた並木路子さん。彼女は遠い親戚の家に身を寄せ、その日から行方不明の母を捜し続けます。行けども行けどもだだっぴろい焼け野原。 そして三日目、警察から母らしき遺体が見つかったと連絡があります。 増上寺にずらりと並べられたお棺。こんなにもたくさんの人が亡くなったのかーー。お棺の中の母は大きな傷もなく、生きていたころの姿のままで横たわっていました。 母は水中に飛び込んだ瞬間に心臓麻痺を起こして亡くなったと知らされました。母がただひとつ身につけていたのは、腹巻きの中に入れていた並木さんの給料袋三通。それを知らされたとき、涙がわぁっと出てきて止まらなくなります。 「やっぱりお母さんだなあ、私から渡したお金を大事に持っていてくれて。これを持っていなかったら、私はいつまでもお母さんがどうなったかわからず、お母さんもそのまま骨になっていたかもしれ
僕たちはいま、かつてない苦難の時代を迎えています。予想もしていなかった災厄と、グローバリゼーションという新たな世界の襲来。僕らはどのように生き延びていくことができるのか。そういう困難な課題に直面しています。 背中を丸めてただ見ないですませようという選択もあるでしょう。犯人を捜し出し、吊し上げることで鬱憤を晴らす人もいるでしょう。それで何もかもが過ぎ去り、ふたたびあの暖かな日差しが戻ってくるのなら、それでもかまわない。 でもあの晴れた午後は、もう決して戻ってこないのです。 だったらいま、僕らはやるべきことは何か。 それは僕らの「これから」を、今こそ探し求めること。 その探し求める過程を大切にし、つねに探し求めてやまないこと。 企業社会が元気だった高度経済成長時代のように、もうそこには答はありません。だれも「安定した人生」のような答は用意してくれていないのです。 しかし僕らは、過去のできごとか
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