2021年10月31日、前回衆院選の投開票日、私はTBSラジオの選挙特番に出演していた。スタジオから日本維新の会の馬場伸幸幹事長(当時)に電話をつないだ際、ヘイトスピーチ対策の公約について尋ねた。その中に、「日本・日本人が対象のものを含む」という文言があったからだ。 どんな立場の人間であれ、言葉の暴力の的にしてはならないが、16年に施行されたヘイトスピーチ解消法の立法事実には、マジョリティーとしての日本人に対する「罵詈(ばり)雑言」などは含まれていない。ヘイトスピーチは差別を扇動し、マイノリティーをより脆弱(ぜいじゃく)な立場に追いやることにその深刻さがある。けれども馬場幹事長の返答は、「(ヘイトスピーチを)幅広くとらえる」と要領を得ないものだった。 維新や馬場氏だけの問題ではない。「在日だって日本人の悪口を言う」「そういう逆差別だって深刻」と、ヘイトスピーチとそうではないものを並列し、差