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この記事は、世界的なベストセラーとなった『21世紀の資本』の著者で、フランスの経済学者であるトマ・ピケティによる連載「新しい“眼”で世界を見よう」の最新回です。 フランスが直面した過去2回の債務危機 公的債務の危機に陥る国々の多くと同じで、フランスで債務危機の懸念が生じるのは今回が初めてではない。ここでは1789年、1945年、2026年の3つの大きな時局に分けて債務危機について考えていきたい。 長い歴史から学べる第一の教訓は、たとえ公的債務危機に陥っても、そこから抜け出す方法は複数あるということだ。しかも、たった数年で、いまよりも公的債務が膨れ上がっていたのに切り抜けられた事例さえある。 ただ、どんなときも、公的債務危機の解消は、大規模な政治的激変をともなうのが常だった。利害の対立がそれだけ大きなものになるからだ。
ピーチ、デイジー、ロゼッタ……マリオシリーズの女性キャラクターたちは長年、「囚われのお姫様」という型に縛られてきた。だが映画最新作を機に、任天堂はそのイメージを塗り替えようとしている。 キノコ王国に女王はいない。いるのはお姫様だけだ。 ピーチ姫はつい最近まで、任天堂が作り上げたその架空の世界の統治者でありながら、実質的にはさらわれ続ける存在だった。ときにはぐつぐつと煮えたぎる溶岩の上に吊るされたかごの中に閉じ込められていた。より複雑な人物像の片鱗は『ペーパーマリオ』シリーズなどのスピンオフ作品に見られ、そこでは誘拐犯に抵抗する姿が描かれていたが、あくまでも添え物にすぎなかった。 「囚われのお姫様」というお約束がようやく姿を消したのは2023年のことだ。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でピーチは、自身の安全よりも市民を優先する歴戦の戦略家として登場した。マリオの助けを待つだけだった
2026年3月の日米首脳会談の際、高市は初めてホワイトハウスの大統領執務室に招かれた。自民党を衰退から救い、圧倒的勝利を収めた衆議院選挙の後のことだ。これを機に日本が憲法改正へ踏み切る可能性はある。 高市はうまく立ち回っていると見る向きもある。日米同盟は、NATOとは異なり、機能している。両国の軍事協力に詳しい識者は、トランプ政権下でも大きな混乱はないと指摘している。 だが日本の政府高官や市民は、高市とトランプの関係は見かけよりも脆弱なのではないかと懸念している。 米国とイスラエルによるイラン攻撃が激化するなかで開催された首脳会談において、トランプは原油の9割を中東から調達している日本の状況を引き合いに出し、高市により積極的な関与を求めた。 さらにその際、「なぜイラン攻撃について日本を含む同盟国に事前に共有しなかったのか」と日本人記者に問われたトランプは、日本による真珠湾攻撃に言及し、「奇
2026年4月6日、ドナルド・トランプ米大統領は記者会見で、イランに対する軍事作戦に加わらなかった同盟諸国を列挙した。 北大西洋条約機構(NATO)、韓国、オーストラリアの名前をあげた後、長年にわたり米国の「最も忠実な友人」だった国へと矛先を向けた。 「我々を助けなかった者が他にもいる。日本だ」 トランプはそう言い、日本には約5万人の米軍兵士が駐留していると強調した。高市早苗首相は3月に開催された日米首脳会談で、まさにその点を追及されないようにあらゆる策を講じていた。 にもかかわらず、トランプは日本を非難したのだ。これは日本が現在直面する危機を象徴する出来事だと言えるだろう。 数ある米国の同盟国のなかでも、とりわけ日本はトランプの心変わりに苦しんでいる。 平和憲法を持つ日本が軍事力を強化したいと思ったら、米国に代わる同盟国を見つけなければならない。中国や北朝鮮に近接している日本にとって、そ
湾岸エリアのマンション市場が転換点を迎えている。アベノミクス以降の低金利と、円安を背景にした海外マネーの流入によって押し上げられてきた価格高騰。しかし内実はすでに限界に達しつつある。その実情を不動産事業プロデューサーの牧野知弘が、動画「湾岸タワマンに起きている大異変」で解説した。 均衡状態の危うい湾岸エリアのタワマン市場 ──そもそも、なぜ湾岸エリアのタワーマンション価格は、これほどまでの高騰を招いたのでしょうか。 牧野 海外マネーの流入が決定的な影響を及ぼしました。都市部の容積率緩和を背景に、共働き世帯の都心居住ニーズが高まるなか、1995年以降に工場の跡地など広大な用地に次々とタワーマンションが建設されました。さらに、2013年以降にはじまるアベノミクスの大規模金融緩和によって価格水準が歪み、極めて低い金利の資金調達環境が整備されたことで、区分所有マンションは流動性の高い「金融商品」に
「人が“ハイ”な状態から脱した後も、違法薬物は環境中に長い間残り続ける」。科学誌「サイエンス」はそう書いている。実際、世界中の湖や河川の水には人間の廃棄したゴミや排泄物などから流れ出た薬物の残留物が含まれている。 「そして、受動喫煙にさらされる子供たち同様に、汚染された水域に生息する生物は──小さな甲殻類から魚類、サメまで──その影響を逃れることはできない」のだと、同誌は続ける。 そんな自然環境における薬物汚染の魚への影響を初めて検証したのが、学術誌「カレント・バイオロジー」に掲載された研究だ。 豪グリフィス大学のマーカス・ミケランジェリとスウェーデン農業科学大学のジャック・ブランドは、アトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)とコカインに注目した。「コカインは現在、世界中の水生環境で最も多く検出されている薬物の一つ」だと彼らは国際メディア「カンバセーション」の記事で説明している。 彼ら
日本では紙の本の売り上げが落ち込んでいるが、世界的には本を読む若者が増えているようだ。読書クラブも盛り上がりを見せている。こうしたトレンドの背後には何があるのか。カナダの心理学者が、読書の効用も含めて解説する。 Z世代とミレニアル世代のあいだで、読書が再び盛んになっている。「ドゥームスクロール(不安を煽るニュースをひたすらスクロールし続ける行為)」や、SNSを常に使うがゆえの気疲れから、それらに代わる何かを積極的に求める若者が増えているのだ。 北米では、Z世代とミレニアル世代のおよそ57〜61%が「読書家」を自認しており、1年に平均3.5〜4.5冊を読んでいる。 紙の本を好む傾向もある。若い読者は書店で本を購入したり、図書館を積極的に利用したりする割合も高い。デジタルメディアが席巻する時代にあって、これは注目すべき傾向だ。 読書は孤独な営みと見られることが多いが、人との意味あるつながりを生
現代の戦争で空中ドローンが強力な兵器になっていることは明らかだろう。ウクライナでの戦争では、そうしたドローンに加えて、地上ロボットも活用されはじめている。その最前線を米紙「ニューヨーク・タイムズ」が取材した。 ロボットたちは、ウクライナ東部にある渓谷を進み、草地を越えて、ロシア軍の陣地へと突撃していく。園芸店で買える小さい緑の台車にしか見えず、土袋でも運んでいるかのようなロボットたちだが、それぞれに30キロの爆薬を搭載しているのだ。 遠隔操作されたロボットたちが、敵兵に近づくと、上空から空中ドローンが飛来し、爆弾を投下して進路を切り開く。ロボットの1台が突進して自爆し、残りは後方で待機しながら陣地を監視している。 やがて塹壕のうえに段ボールの切れ端が現れ、そこには「降伏したい」と書かれている。ロシア兵2人が塹壕から出て、捕虜としてウクライナ軍の陣地へと歩いてくる──。 2025年夏、この突
最新のニュースに登場した時事英語を紹介するこのコーナーでは、世界のニュースに出てくるキーワードを学ぶと同時に、ビジネスの場や日常会話のなかでも役立つ単語やフレーズを取り上げていきます。1日1フレーズずつクイズ感覚で学び、英語に触れる習慣をつくっていきましょう。語彙力の向上には、日々の積み重ねが大事です。 今日の時事英語 2026年4月23日(木)の英「ガーディアン」紙に次の一文がありました。 Liam Bailey, the head of research at the estate agent, said billionaire and millionaire wealth had been “supercharged” by profits from the world of tech, particularly artificial intelligence.
10代の4分の1が学校でポルノを視聴 日本では、文部科学省が2020年から小中学生にひとり一台タブレットを配付するGIGAスクール構想を推進するなど、教育のデジタル化が進んでいる。 教育のデジタル化は、個々の生徒の習熟度に応じた学びを提供できる点や、教師側が業務を効率化できる点などがメリットだと考えられてきた。またテクノロジーがすさまじい勢いで進化する現代において、ITのスキル・知識を身につけることは子供たちのためにもなると肯定的に受け止められている。 だが世界の教育現場では、むしろアナログ回帰が進んでいるようだ。英「BBC」によれば、2000年代後半から教育現場でデジタル機器を使用してきたスウェーデンでは、紙のノートや鉛筆を使った教育が見直されつつある。米国でもカンザス州やバージニア州など少なくとも10州で、学校でのデジタル機器の使用制限などを規定した法案が提出されたと米紙「ニューヨーク
日本はほんとうに「資源大国」になり得るのか ──レアアースは私たちの日常生活において、どれほど密接な関わりがあるのでしょうか。 島峰 レアアースという言葉から、軍事関連や電気自動車といった特定の分野をイメージされる方が多いかもしれませんが、じつは家電製品の大半に使用されています。使われていないのは“電子レンジくらい”と言われるほど、私たちの生活に浸透しています。製造業であればほぼすべての業界が関わっており、それらを利用する消費者の皆さんも、間接的に必ずレアアースに触れています。 人類の歴史をたどると、資源は取りやすいもの、加工しやすいものから利用が始まりました。最初は銅や鉄といったものです。しかし技術が進化するにつれ、精錬に手間がかかるものや、膨大な電力を必要とするものへと移行してきました。レアアースはまさにその「究極の行き着く先」にある資源です。それがないと最先端の製品が作れない。いまの
英紙「フィナンシャル・タイムズ」の投資コラムニスト、スチュアート・カークは、投資業界で数十年の実務経験を持つ人物だ。 彼は長いキャリアを振り返り、これまでに市場を揺るがすとされた地政学リスクや金融危機の多くは、実際には投資リターンにほとんど影響しなかったと語る。 カークによれば、過去30年で市場を揺るがしたのは「2つの出来事」だけ。そして、うち1つについて「その最悪の影響はこれから起きるだろう」と警告する──。 新たな戦争すら影響は限定的 子供の機嫌が悪くて何でも拒否しているときは、選択肢を増やしても無駄だ。 バーガーにする? ピザは? それとも寿司? 何を提案しても「ノー」と返ってくる。解決策はただ一つ、主導権を相手に渡すことだ。 「わかった、じゃあ何が食べたいのか言ってごらん」 何でもかんでも否定するのではなく、ポジティブな答えを出すよう強制されるのは大きな試練だ。そして、恥ずかしなが
中国共産党が「日本の軍拡」を世界に向けて発信するなか、シンガポールのシンクタンクは4月、日本を「東南アジアにおいて最も信頼できる国」とする調査結果を発表した。東南アジアの政府関係者らがEU、米国、中国、インドよりも日本を信頼する理由を、中国メディアにおいては比較的自由度のある香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が探った。 欧米や印中より信頼できる国、日本 平和憲法の改正や軍備増強を目指しているにもかかわらず、日本は東南アジア諸国の間で最も信頼される国であり続けるとみられる。 だが、一部のアナリストは「日本政府が自国の方針についての透明性を担保し、軍事関連の行動が地域の安全保障に寄与することを周辺諸国に保証する必要がある」と指摘する。 「ISEAS ユソフ・イシャク研究所」が実施した2026年の年次調査によると、前年の66.8%からわずかに低下したものの、回答者の65.6%が日本に
両親がどこか痛々しく老いる様子を見て、同じ過ちを避けるための「愚かな行動リスト」を作ってきた筆者は、「良い老い方」に関する本を著し、人気を博した。当時、まだ自分がそんな歳になっていないという自負もあり、「老い」はどこか他人事のようにも感じられた。 だが、70歳を前に筆者は振り返る。自分は果たして、両親と同じ過ちを繰り返していないといえるだろうか──。両親への批判は理解へと変わり、老いとどう向き合うかを自らに問い直すようになった。 老いへの誓い 両親のようには老いたくない。私にはやるべきことがある。 私は20年前、人が年を重ねるなかで犯しがちな「愚かなこと」のリストを作りはじめた。だが、いま、そのリストと自分の人生を以前とは違う眼差しで見つめている──。 月日が流れるのは早いものだ。私は約20年前、50歳の誕生日を迎えて間もないころに、両親や彼らと同世代の多くが老いていく過程で犯した「過ち」
軍事紛争の際によくあることだが、米国ではイランへの攻撃が始まって以来、50年以上前に廃止された徴兵制をめぐる議論が再び浮上している。 そして今回、一部の反戦派はその怒りと不安の矛先を、大統領の20歳の息子バロン・トランプに向けている。 2026年2月下旬にイラン爆撃が始まるとほぼ同時に、迷彩服をまとったバロンを描いたミームやAI生成画像がオンラインに出現。彼を戦場に送るべきだと示唆するこれらの画像は、SNSで広く拡散された。 「#SendBarron(バロンを送れ)」というハッシュタグを伴うこともあり、あるコメディ脚本家は「バロン・トランプを徴兵せよ」というウェブサイトを立ち上げ、バロンを戦場に送ることこそが父親であるドナルド・トランプ大統領の「強さ」の証明になると示唆した。 さらに4月になると、こうした画像や言説が再び盛り上がりを見せた。徴兵登録制度を管轄する選抜徴兵局が、対象となる男性
メガ解雇の時代到来か、AIは「隠れみの」 スナップからブロック、Amazonまで、人員規模を「適正化」する新たなひな型が経営幹部の間で広がっている。 画像共有・メッセージアプリ「スナップチャット」を運営する米スナップは、従業員の16%を削減している。決済サービス大手ブロックは従業員の40%をカットした。一方、オラクルは数千人をリストラしており、 アマゾン・ドット・コム は数ヵ月で約3万人の雇用を減らした。 メガ解雇の時代へようこそ。シリコンバレーをはじめとする米各地で、人員削減をおこなう企業が大なたを振るっている。雇用主は、より段階的で混乱の少ない方法ではなく、一度に大量の従業員を削減することで得られる財務面のメリットを取り込もうとしている。 これは、それほど昔ではない時代からの転換だ。以前は、大規模なレイオフは問題や経営ミスの兆候として認識され、企業が業績を立て直すために抜本的な措置を講
日本の平和憲法がいま岐路に立っていると、米紙「ワシントン・ポスト」が報じている。9条改正へ本格的に動きだした高市首相の思惑、拡大する改憲反対デモを取材。「日本でこれほど抗議運動が高まるのは異例だ」と伝える。 高市が示した改憲タイムライン 安全保障のタカ派として知られる日本の高市早苗首相は、第二次世界大戦以降、同国の軍事力を制約し、国家のアイデンティティを規定してきた平和憲法を改正する計画を打ち出した。 先の衆院選での圧勝と中国の脅威を背景に、高市は改正を推し進めるだけの支持率と政治的資本を持ちうる。だが平和憲法の改正は、この国で非常に繊細な問題だ。 高市が求める具体的な改正内容は、実質的というより象徴的なものであり、戦争放棄の条項自体を変えるわけではない。とはいえ憲法改正に反対する市民の声は高まり、日本では珍しい全国規模の抗議運動が広がっている。 高市は2026年4月12日の自民党党大会で
トランプの米国だけでなく欧州でも反移民政策を支持する声が高まっている。日本も例外でない。だが彼らが指す「移民」に白人は含まれず、「よそ者」はいつも有色人種だ。米歴史学者のイブラム・X・ケンディがその矛盾を突き、いま世界各地の極右勢力が煽る「大置換論」と「再移住」の恐ろしさに警鐘を鳴らす。 禁書処分は勲章みたいなもの 「私が書いた本は、少なくとも7冊が米国内で禁書となっています」 そう語るイブラム・X・ケンディ(43)の口調には恨みがましさがない。むしろ、その事実を誇りに思っているかのようだ。 人種差別を論じるケンディの著作は、重厚で学術的な歴史書もあれば、児童向けに書いたマルコムXの伝記まで幅広い。彼に言わせると、そうした本が禁書扱いされているのは、それが届くべき人に届き、苛立たせるべき人を苛立たせている証しなのだ。 作家の権利を擁護する米国の団体「ペン・アメリカ」によれば、ケンディの著作
4月11~12日にかけてパキスタンの首都イスラマバードでおこなわれた米国とイランの交渉。米国側の代表団を率いたのはJ・D・バンス副大統領だが、その横には政府の肩書きをまったく持たない一人の男が座っていた。 ジャレッド・クシュナー、ドナルド・トランプ大統領の娘婿だ。 2月末、米国とイスラエルがイラン攻撃を開始する2日前にも、クシュナーはスティーブ・ウィトコフ中東特使とともにスイス・ジュネーブで対イラン交渉に臨んでいた。核開発をめぐりイラン側は譲歩の姿勢も見せていたとされるが、周知のとおり米イスラエルは攻撃に踏み切り、最高指導者アリ・ハメネイを暗殺した。
Z世代のあいだで、「バズボールズ(BuzzBallz)」と呼ばれるアルコール飲料が人気を博していると、米「ニューヨーク・タイムズ」紙が報じている。 バズボールズは、蛍光色をしたビリヤードの球のようだ。アルコール度数は約15%と、一般的なビールの2倍以上ある。実は、バズボールズは2009年から販売されているが、持ち運びが簡単でフレーバーが豊富、しかも安いということから、Z世代の定番ドリンクとしての評判を確立しているという。 市場調査企業「ニールセンIQ」によると、2026年1月までの4週間において、バズボールズは売り上げ成長額で第2位の「すぐに飲める酒(RTD)」ブランドとなった。同ブランドは2024年に蒸留酒会社「サゼラック」に買収され、同年、米「フォーブス」誌はその年間収益を約5億ドル(約800億円)と推定している。
ピーター・ティールの視点に立つと、日本の漫画『ワンピース』は単なる冒険ストーリーではない。世界政府という支配構造、空白の100年、そしてルフィの変貌。その背後には、キリストと反キリストをめぐる壮大な神学的モチーフが潜んでいる。連載の最終回にあたる本稿では、『ワンピース』が持つ現代世界への鋭いメッセージが浮かび上がる。 ピーター・ティールの『ワンピース』論 米国アニメ『ウォッチメン』が完結してから4年後、冷戦も終結した。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領によって「新世界秩序」の始まりが宣言され、大国間で紛争が起きないとされる時代が到来した。 ブッシュの後を継いだビル・クリントンは、軍備を縮小して「平和の配当」を受け取り、次々と貿易協定を結んでグローバル化を加速させた。そんな平穏な時代に、豪胆華麗な尾田栄一郎が漫画『ONE PIECE(ワンピース)』を描きはじめる。それから28年、この漫画は11
「誰が見張りを見張るのか」──。漫画『ウォッチメン』が突きつけたこの問いは、スーパーヒーローだけでなく、科学と国家権力にも向けられている。科学の進歩が平和と繁栄を約束する一方で、破壊と欺瞞も拡張してきた近代の歴史をたどりながら、世界政府という危うい夢の正体に迫る。 スウィフトとベーコン論争 スウィフトとベーコンの論争の勝敗を著書の人気で決めるのであれば、軍配はスウィフトに上がる。『ガリバー旅行記』を読んで笑う人の数は、現代でも何百万は下らないだろう。 だが、思想の影響力で勝敗を決めるのなら、最後に笑うのはベーコンである。たしかにスウィフトが懸念を示したとおり、詐欺まがいの科学研究は、現代でも横行しており、こちらが憂鬱になってしまうほどだ。だが、大局を見るなら、ベーコン流の科学によってベーコンの予言のほぼすべてが成就したのである。 スウィフトは、キュウリで世界を明るくしようとする研究者の試み
日本において「年収」への執着は根強いが、シンガポールの富裕層が見ている景色はまったく異なる。彼らにとって重要なのは、時間を売る「給料」ではなく、富を生む「資産」だ。先行きの不透明な時代、円を持ち続ける「不作為の資」のリスクを説き、最終的にたどり着いたのは、株や不動産をも凌駕する「自分という資産」への投資だった。クーリエ・ジャポンの動画『【世界のエリートは暇人が多い】』より、田村耕太郎が語る、真に豊かな人生を送るための資産運用の本質を明かす。 シンガポールの成功者が年収を気にしない理由 ──シンガポールでの生活や現地の成功者たちの振る舞いを通じて、田村さんが気づかれた「資産」の考え方についてお聞かせください。 田村 シンガポールという場所は、投資家になるしかないような社会です。資産に関わる税金が、ほぼ、あるいはすべてが「ゼロ」。資産課税や相続税もありません。キャピタルゲインもゼロ。配当もゼロ
社会を支配するビジネスエリート 「どの大学を出たか」ということが、実際にはどれほど人のキャリアに影響を与えるのだろうか。米国の場合、エリート大学の卒業生は、世間の想像をはるかに超える圧倒的な成功を収めている。 米誌「アトランティック」によると、ハーバード大学をはじめとするアイビー・リーグ8校に、同等の合格難易度を誇るデューク大学、スタンフォード大学、シカゴ大学、マサチューセッツ工科大学を加えた「アイビー・プラス」の学生数は、米国の全大学生の0.5%にも満たない。 にもかかわらず、これらの大学の卒業生は、フォーチュン500企業のCEOの12%以上、ニューヨーク・タイムズ紙のジャーナリストの32%、そして米国の資産上位0.1%の富裕層のうち13%を占めているという。 一部の大学に偏った、この圧倒的成功の要因は何か。彼らがもともと優秀で特権的な若者だったからか、あるいは、トップレベルの教授陣によ
Claudeは「神の子」か? 評価額3800億ドル(約60.6兆円)のAI企業「Anthropic」は、自社のチャットボット「Claude」の成功により、シリコンバレーの優秀な人材を自由に選べる立場にある。 しかし最近、同社はこの分野の相談相手としては珍しい人々に助けを求めた。キリスト教の宗教指導者たちだ。 本紙「ワシントン・ポスト」が取材した4人の出席者によると、同社は3月下旬、本社にカトリックやプロテスタントの聖職者、学者、そしてキリスト教的倫理を経営に採り入れている実業家など約15人を招き、2日間のサミットを開催した。そこではディスカッションに加え、同社の研究者らとのプライベートな夕食会も催されたという。
英語で“It takes a village”という表現がある。「子供を育てるには、ご近所さんや地域全体の協力が必要だ」という意味だ。 アイルランドの小さな町で、それを文字通り実践する取り組みがおこなわれている。スマホが子供の心を蝕んでいることに気づいた保護者や教師たちが、町全体を巻き込んだ異例の運動を立ち上げた。子供たちにどんな変化が起こったか──。 「長生きして健康でいたいから」 ボーディ・マンガン・ギスラー(12)は、スマートフォンが便利なことは知っている。コイン収集が趣味だという彼は、珍しいコインの価値や素材を調べたいときは母親に頼んでスマホを借りることもある。 普通の12歳なら自分のスマホをせがむところだが、ボーディは違う。「長生きして健康でいたいから」と彼は言う。スマートデバイスを持つことが、その妨げになるのではと心配しているのだ。 「ママに『このゲーム、ダウンロードしていい?
人工知能(AI)の迅速な回答に感動するときもあれば、どこからそんな答えを導き出したのかと呆れるときもあるだろう。こうした「ムラ」の原因が明らかになりつつあるようだ。AIの進歩を15年追い続ける、米紙「ニューヨーク・タイムズ」記者が最前線を取材する。 人工知能(AI)がいつの日か人間と同じくらい賢くなるかについては、さまざまな意見があるだろう。 だが、数学の分野でなら、AIはすでに優秀な学生である。2025年の夏、グーグルやOpenAIが開発したAIは、世界トップクラスの高校生が参加する「国際数学オリンピック」で、6問中5問の難問に正答した。 その一方で、常識については、AIはまだ多少欠けているのかもしれない。 国際数学オリンピックから数ヵ月後、スリランカのソフトウェアエンジニアであるアヌラッダ・ウィーラマンは、ひっかけ問題のような問いに主要なAIシステムが苦戦していることに気づいた。 車を
人手不足の日本では、ヒューマノイドロボットの工場などへの投入が今後急速に進むかもしれない Photo: Getty Images 脅威論とのズレ 人間の外見や動作を模倣したロボット、ヒューマノイドロボットの開発競争が世界で加速している。かつては「おもしろいが実用には向かない」とされたヒューマノイドロボットだが、最近のAIの発達によって、「人間と同じように自律的に考え、人間と同じ作業をする」ことがまもなく可能になるともいわれている。 海外では、ヒューマノイドロボットはしばしば「人間の仕事を奪う存在」として語られる。とりわけ米国では、AIとロボットの進化が雇用を代替するとの懸念が強く、技術革新に対する警戒感も一部では根強い。 しかし、ヒューマノイドロボット普及に対する抵抗感は、日本では海外ほど大きくないかもしれない。むしろ日本は、世界に先んじてヒューマノイドロボットの導入が進みやすい環境にある
間違い探しから「実存的パズル」へ 日本でも大きな反響を呼んだ映画『8番出口』が、2026年4月10日より北米でも公開された。海外での反応はどうか──米紙「ニューヨーク・タイムズ」の主任映画批評家マノーラ・ダルギスは「巧みに無駄が削ぎ落とされた作品」と称し、「鑑賞中も、観終えた後も、あれこれと思考を巡らせる時間が楽しい」と書いている。 インディー・ゲームを原作とする本作品では、地下鉄の駅が舞台だ。派遣仕事に向かう途中の「どこにでもいる男」が何気なく駅に降り立ち、通路に足を踏み入れるとき、「最悪の1日」が始まる。 どれだけ進んでも彼は「8番出口」にたどり着けない、そこにあったのは無限に繰り返される駅の通路であった。困惑がパニックに変わるなか、彼は掲示板に記された脱出のためのルールを発見する。
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