常識心理学と法的システム 西脇 与作(慶応義塾大学) 0 はじめに 合理的人間と信念−欲求−行動パターンによる人間理解、これが法的なシステムで人間を扱う場合の暗黙の仮定となっている。 また、法は社会とともに変化するというのも当然の仮定である。これらの仮定を数歩遡ってみると、そこには私たちが日常生活で前提している常識心理学と人間の歴史が見えてくる。この常識心理学はどのように考えることができ、法的知識に対してどのような役割を演じているのであろうか。また、常識心理学は人間の歴史とどのように係わっているのであろうか。次のような前提と疑問が挙げられよう。法的なシステムは多くの常識心理学的な概念に支えられている。信念−欲求形式の行為者の前提がそれを的確に表している。この常識心理学は科学的な心理学とどのような関係にあるのか。認知心理学は科学的な心理学であり、法的システムは認知心理学を一部に含む形で構成