「論争の決着は、自然の表象の原因であり、その結果ではないのだから、この自然という結果を、なぜどのようにして論争が決着したのかを説明するために用いることは決して出来ない」 …(中略)… 後半の「自然」を文字どおりに取り、かつそのすぐ後ろにある「結果」を綺麗に忘れると、(a)科学的な論争の推移や結果は外の世界の性質だけでは説明しきれない(ほかのより微妙な社会的影響に触れないにしろ、少なくともその時点でどのような実験が技術的に可能か決めるというだけでも、何らかの社会的要因が介入するのは当然である)という弱い、そして当たり前の主張か、(b)外的な世界の性質は、科学的な論争の推移や結果を左右するような役割を果さないという強いが明らかに誤った主張が読み取れる。 「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用 作者: アラン・ソーカル,ジャン・ブリクモン,田崎晴明,大野克嗣,堀茂樹出版社/メーカー: