出版社で働き始めて30年以上が過ぎた。本づくり、特に組版が目まぐるしく変化した30年だった。活字、和文タイプ、写真植字、日本語ワープロ、パソコンの編集ソフト……。アナログからデジタルへの劇的な変貌だ。 複製の技術も大きく変化した。そもそも出版の仕事は、著作物を複製して頒布する仕事だ。出版社は著作物を複製する技術者集団のネットワークを組織し、商品として流通・頒布するルートを確保する。複製は特殊技術だった。それがコピー機の普及によって誰でも手軽に複製が可能な時代になった。 著作物の流通も、インターネットの普及でこれまた誰でもが発信可能な時代になった。誰でも複製可能・発信可能でインターネット上にはありとあらゆる情報が溢れている。 この30年で、出版社が握っていた特殊技能は、大概のものが誰でもできる、誰でも利用可能な技術になってしまったわけだ。じゃあ、出版社はなくてもよい時代になったのか。そんなは