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今年の「かわいい」
ponanza.hatenadiary.jp
一ヶ月ほど前の世界コンピュータ将棋選手権で将棋プログラムelmoに負け準優勝でした。あとで検証したところ、Ponanza173勝 elomo89勝 4引分 勝率65.8%でした。(対局条件は10秒秒読み・Xeon24core ・定跡なし・クラスタなし・Deep Learning未使用)なかなか公平な対局条件をつけるのは難しいですが、まだなんとかPonanzaのが強そうと言えそうですね。 ただ、最近のコンピュータ将棋は半年で以前の自分に対して勝率75%くらい強くなるのが普通なことなので、このままなにもしないと半年もしないうちにPonanzaがほんとうの意味でトップではなくなりますね。 世界コンピュータ将棋選手権は優勝ももちろん目指していましたが、実は同じくらい大事にしていたことがあります。それは盛り上げることでした。もちろんこれは私だけの努力でなく、皆さんのおかげなのですが、とにかくよく盛り
私は将棋が弱かった。いやそれは別によかった。しかし何より許せなかったのは真剣に将棋に打ち込めてないことだった。将棋の神は真剣に打ち込まない奴には微笑まない。大学時代の留年した時なのもかもが中途半端だった。勉強をする気もおこらず、将棋も適当に指していた。大学受験を終えた後の自分は何もなかった。 さすがにいけないと思い、なにか新しいことをしようと思った。ふと思ったのはプログラムだった。それからテレビチューナーとかしてたPCでプログラムをした。メモ帳とBorlandCコンパイラというか意味わからん環境で必死に書いた。入門書に書いてあるエイトクイーン問題を解いた。世界が広がった。 エイトクイーン問題はいわゆる探索問題だ。すぐに探索問題は将棋と同じ構造であることに気が付いた。そこで思った。そうだコンピュータ将棋をしようと。最初に作ったプログラムは、私はその知恵を全部入れて作った。私は8枚落ちで勝てた
2年ぶりに将棋倶楽部24にPonanzaを参戦させてみた。 Ponanza側の条件は以下のもので、特に問題がなければ来年の電王戦でそのまま使うものを使用する予定である。 秒読み18秒(入力時間のマージンの為) PCは来年の電王戦で叡王と戦うPCと同じもの 人間対策用に指し手のランダム性を増やしている(そのため若干弱くなっている) 今日は9時から夜中の1時近くまで指して7局できた。対局してくださった方ありがとうございます。幾つか気になった棋譜があるのでせっかくなので紹介していく。 ・satoko1985さん(R3111)戦 いわゆる28角問題をやられて、見事にPonanzaが角を打ってしまった局面である。ただこの状態1筋を先手が突き越せてないので▲16香と逃げれない。実戦では▲18香と逃げた後、馬をとったのだが際どい勝負だった模様である。 ・Super megutan(R3220)戦 ここか
第2譜です。羽生さんが道中の新幹線でほぼ2時間、かなりお話をしてくれたのは相当うれしいことでした。
知り合いが少し前に自殺した。彼とはそこまで親しい関係ではなかったが、しかし隅に置けない仲というのが適切な表現だった。彼と一度だけお酒を飲んだのだが、そこでの会話のネタは「彼の仕事のブラックさ加減」と「彼がこれからする結婚式」の話だった。自殺の原因はわからないけれど、その日彼は休日出勤の帰りで、奥さんが帰りを待っていたはずだ。 SAVING 10,000 - Winning a War on Suicide in ... <追記> あの人どうなのかなと思ったら声をかけよう。忙しいかなとか要らない気遣いだから声をかけよう。その方が絶対にいいから。
第12譜、最終譜です。タイトル戦を実行するのにはこんなに大変ということが今回本当にわかりました。このような機会をくださって、関係者のみなさまには本当に感謝しております。 第11譜はこちら 『脱線気味の話』 対局後の打ち上げで、羽生さんの隣に座って色々お話をしました。この対局のこと、Ponanzaのこと、コンピュータ将棋のこと、コンピュータチェスのこと。あと囲碁についても話が飛びました。羽生さんが「囲碁ってどうやって終局するのですか?」と聞いたので、囲碁のルールしか知らない私が一生懸命、「お互いにパスしあったら終わりです。でも日本式と中国式では死に石の定義が変わるので・・」とほとんど無い囲碁の知識を総動員して話しました。ええ、がんばりました。 この話の終わり頃に、私が「ところで羽生さんは囲碁をなされるんですか?」と聞いた所、羽生「ええ、まあ、初段ほど・・・」と言われて、なんとも言えない気持ち
第62期将棋王座戦最終局の観戦記を私が光栄にも書かせていただきました。日経新聞に載った記事をWEBにも上げたいとお願いした所、今回だけは特別にこのブログに載せても良いとのことでした。お言葉に甘えて今日から12日間連続で観戦記を載せたいと思います。残念ながら元データは載せれなかったので、写真を取って掲載という形になっています。 観戦記を書くにあたって、羽生王座、豊島七段両対局者、解説の遠山五段、編集をしてくださった記者様、並びに主催をなさってくださった日経新聞社様に厚く御礼申し上げあげます。 第2譜はこちら
11月3日(月・祝)に電王トーナメントがあり、新進気鋭のプログラムAWAKEが優勝しました。Ponanzaは残念ながら準優勝でした。 以前記事に書いたように、今回の電王トーナメントで優勝したら羽生名人と戦うためのクラウドファンディングをやるつもりでした。 羽生善治名人と戦いたい - 山本一成とPonanzaの大冒険 しかし負けてしまいましたので、今回は諦めます。新電王のAWAKEさんおめでとうございます。 今日の大会の一部始終はニコニコ生放送で見れますよー 第2回 将棋電王トーナメント 決勝トーナメント最終日 決勝・準決勝 - 2014/11/03 11:00開始 - ニコニコ生放送
皆さんお久しぶりです。Ponanza作者山本一成です。ブログを更新しよう、更新しようと思いつつ、半年くらいサボってました。 第四回電王戦、団体戦最後ということで電王戦Finalが発表されました。開催は2015年3月から4月ということです。今回も選りすぐりのプロ棋士が出てくる模様です。 また電王戦Finalに出場するコンピュータを選定するために、コンピュータ同士の対戦、電王トーナメントが2014年11月1日(土)、2日(日)、3日(月・祝)に行われます。 今回の戦いが終わったら、電王戦は終わりなんでしょうか・・ 羽生善治名人とコンピュータが戦うことは無いのでしょう・・ せっかくここまで来たのですから名人と戦いたいです・・ 今回の電王トーナメントの優勝したら、クラウドファンディングをして名人と戦う道を道を模索しようと考えてます。羽生名人と戦うにはいくらお金が必要かわからないのですが、最強コンピ
皆さんバックギャモンというゲームをご存知だろうか?バックギャモンとは大雑把に言えば、とてつもなく奥深いすごろくのようなゲームだ。ちなみに私にとってボードゲームで将棋の次に頑張った言えるゲームだ。加えて私のバックギャモンの師匠はポーカプレイヤで有名な木原直哉さんだ。それに加えて将棋界だと森内竜王・名人や片上大輔六段が強いことで有名だ。(閑話休題) このゲーム、日本ではあまり有名ではないが、世界では3億人くらいプレイヤーがいると聞いている。ゲームできる数だけではチェスより多いかもしれない。 バックギャモンのボードと駒、ちなみにこのゲーム相当おもしろい 画像はこちらから 今日はこのゲームのトップレベルのプレイヤー(たぶん世界五位以内には入れる)の望月さんのブログ記事を紹介しよう。バックギャモンはすでにコンピュータが人間プレイヤよりも強い状態にあること。またプログラムを強くしていくなかで大変美しい
前回の記事の最後にFail Lowという言葉がでました。コンピュータ将棋はある局面を探索するときに、評価値をある程度予想して、その予想を元に探索をします。予想値の下限をアルファ、予想値の上限をベータといいます。よく聞くアルファベータ探索のアルファとベータはここから来てます。評価値がアルファより下の場合Fail Low、評価値がベータより上の場合はFail Highといいます(第1図)。Fail Lowが起こる時は予想より実際の評価値が大きく下回る場合で、かなり良くない状況です。Fail Lowがおこった場合は、アルファとベータの予想値を再修正して探索し直します。 第1図 難解な局面では予想が難しいので、Fail Low(↓)やFail High(↑)することがよく起こる。評価値に矢印をつけるのはPonanza独自の拡張. Fail Lowは業績下方修正、Fail highは業績上方修正のよ
屋敷九段とPonanzaの電王戦最終局が2014/4/12にあった。場所は将棋の総本山、将棋連盟。屋敷九段はどのようなコンピュータ対策をしてきたのだろうか?Ponanzaはどういう序盤展開に持ち込まれるのだろうか?色々な不安が錯綜したが、もはや作者としてはできることはない。Ponanzaを信じよう。 局面は屋敷九段の▲2六歩から始まった。ここからは推測だが、△3四歩なら▲2五歩としてから、Ponanzaにうまいこと振り飛車にさせる。また△8四歩には本譜のように少し変則的ながら、横歩取りにするという変化を想定したと思う(第1図)。 第1図 やや変則的な出だし、屋敷九段はPonanzaの横歩取りに弱点ありと見たのだろうか? ちなみにTwitter上で将棋の非常に強い有名な方も以下のように言ってたり、第三回電王戦で唯一人間側で勝った豊島七段が勝った戦型も横歩取りなので、コンピュータ対策として横歩
Ponanzaの思考ログを公開します。4万行以上あるので、正規表現で一部のログ(具体的には/^<1:info nodes/)を抜いてます。ログを追うと電王手くんとの通信に少しだけエラーがあったみたいです。このプロトコルの詳細が気になる方はこちらへ 追記 YSSの山下さんが読みやすいようにログを加工してくださったのはこちらへ ポナンザさん、デバッグウインドウでしか見えない生通信ログでひっそり勝利を喜んでた pic.twitter.com/JaDEi2qU65— MIRO (@MobileHackerz) April 12, 2014 >1:usi <1:----- Shogi Agent v1.00 ----- <1:start process <1:MsgPackThread Start <1:Connection Thread Start <1:connecting <1:Connect
ブログを引っ越しました。 今後はこちらでおねがいします! note.mu
長かったこの5週間もついに明日で終わる。棋士とコンピュータが全力で闘う第3回電王戦はついに明日最終局を迎える。明日の対局の前に二人(?)の指し手の中から私が気に入っているものを挙げていこう。 屋敷九段の指し手の中で、私がもっとも気に入っている手は第56期棋聖戦本戦の△2三金である。後手の屋敷九段は、当時は奇襲戦法と見られていた横歩取り△3三桂戦法を使い、独創的な序盤で勝ち切った、まさに忍者屋敷という棋譜である。 なんと相手は森下九段、少し話ができすぎている気がする(笑) どう動かすか謎に見えた後手の左金が五段目に出て、面制圧完了。一方先手は攻撃態勢がまだできない まさに圧勝。後手玉に傷ひとつついてない 対するPonanzaの手は第21回世界コンピュータ将棋選手権決勝、Ponanza対YSSの▲1六歩打だ。 突然虚空に打った歩、どういう意味なのだろうか・・ 皆様考えてみて欲しい この手の意味
今週土曜日(2014/4/12)に第3回電王戦第5局が始まる。プログラマは事前にプログラムを提出しており、もうできることは何もないのだが。まだ決めてなければならないことがひとつある、いつ投了するかということだ。 電王戦で、コンピュータ側が負けたのは合計で二局。どちらもプログラマが局面や評価値を見て投了した。Ponanzaの場合はどうしようか?電王戦で提出したPonanzaそのものには投了機能はついてない、Ponanzaが投了する条件はただひとつ、指し手がひとつも無くなった時だけだ。 投了図というのは色々な意味を持っている。どこで投げるかは敗者だけが持っている特権なのだ。そこには多くの物語が流れる。 真部一男九段の絶局での投了図 絶局とは棋士の最後の対局のこと 負けるときはPonanzaには合法手がなくなるまで指させようと思う。対局者の屋敷九段には悪いのだが、そこは敗者の特権なので付き合って
「電王ponanzaとドスパラなんば店で対局し、勝利できたらノートPCをプレゼント!」という企画を斎藤慎太郎五段と私で昨日はしていきました。最初は挑戦者がまさかの五人しか集まらないというとんでもない状況だったのですが、ゲストでアマ強豪の今泉さんや中川さんが来てくれたこともあって、私としては斎藤五段と六時間とても面白く喋れました。皆様もよかったらぜひ見てください。 参考 この動画を書きおこしてくださった方のブログが面白かったので 斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (1) 斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (2) 斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (3) 斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (4) 斎藤慎太郎五段「森下システム」を語る (5) Ponanzaの現在の課題 (1) コンピュータの持ち時間の使い方について 斎藤慎太郎五段が語る「第3回電王戦 豊島将之七段 - YSS戦
コンピュータ将棋を理解する上で、大事なことの一つにマルチコアというのがあります。皆さんのお手元のPCや最近ではスマホも当たり前のようにマルチコアになってきています。ところで皆さんがマルチコアと言っているものはどんなものなんでしょうか? CPUというのは、コンピュータにとって頭脳と言えるものです。下の画像はCPUの一種類インテルCorei7です。皆さんはこういうものが幾つか繋がってマルチコアとなっていると想像してませんか? CPU Corei7 画像のものは4コアCPU こちらより画像を引用 実はこの中にすべてのコアが含まれているます。中の画像を説明付きの画像を見てみましょう。中にCore(コア)と書かれた部分が4つ見られると思います。4コアと言われていても、別々に分かれているわけでもなく同じ基板上にプリントされているわけですね。 内部アーキテクチャ 共有メモリ(L3キャッシュ)が意外と大き
4/5(土)小田原城で先手ツツカナと後手森下九段の対局が行われた。二人の紹介についてはこの記事を参考にしてみてください。この記事では早速将棋の内容を見ていこう。ちなみに本局はリアルタイムで番組を見れてないので、記事の内容の精度がかなり自信がないです。その点ご了承ください。 ツツカナ、森下九段共に矢倉を趣向して、悩ましい序盤の変化が幾つかあったが、いかにも森下九段が好きそうな手厚い陣形となった(第1図)。プロ棋士の方に聞いたのだが、第1図はありそうで、それほど実戦例が多くないそうだ。 第1図 善悪はともかく後手の森下九段は自身の将棋人生を表すかのような手厚い矢倉に 4筋、5筋を中心に長い長い中盤が始まります。こういった押し引きが矢倉の醍醐味と言えます。しかし遠山先生のブログでの以下の記述でもあるように、長い長い中盤をコンピュータとねじり合う将棋を勝つのはものすごく大変というイメージがあります
本記事は以前、私が将棋倶楽部24のコラムで書かせていた内容を若干修正して転載してます。なお転載に関しては日本将棋連盟様から許可を頂いております。 ■ 将棋とコンピュータ 電王:山本一成 はじめまして皆様、私はPonanzaという将棋プログラムを作成している山本一成と言います。将将棋倶楽部24ではPonanzaは最高Rを2013年の5月に獲得しました。対戦していただいた皆様、ありがとうございます!将棋倶楽部24には色々と縁があり、今回コラムを書く機会をいただきました。最後までお付き合いのほど、よろしくお願いします。 ■ Ponanzaと将棋倶楽部24 毎年、コンピュータ将棋選手権が終わった5月中旬に、Ponanzaは将棋倶楽部24に参戦しています。2013年の5月は100名前後の方に戦って頂けました。そのときの棋譜一覧はこちらで公開されています。皆様ももしよければ、見てください。人間同士の闘
前回は将棋におけるNull Move Pruningのお話をしました。今回はNull Move、つまりはパスをするということが将棋においてどんな性質がある手なのか考えてみましょう。 「将棋のほとんどの手は悪手である」羽生さんが言っていたとされてます。将棋は初期局面で30通りの指し手があるのですが、そのなかで定跡とされているのは▲7六歩、▲2六歩、▲5六歩くらいでしょうか?それ以外の手もなくは無いのですが、▲8六歩とか▲9八香とか明らかに指さないほうがいい手もいっぱいあります。パスをする手って何番目くらいの指し手でしょうか(図1)。 第1図 初期局面でパスをする、すなわち後手になるというのはどれくらい悪い手なのだろうか? 将棋でパスする手の良さは、局面にもよりますが、私の感覚では上位5位くらいには入ってくるイメージです。加えてパスはもっとも良い手となる可能性はあまりないです。*1 パスする手
今日は将棋プログラムの探索について少し書いてます。将棋プログラムは探索と評価という両輪が補完しあって動いています。探索というのは人間でいう読みと同じような操作です。また評価は人間でいう形勢判断に近いものです。少しくらい評価にダメな部分があっても、探索によって補うことが可能ですし、逆もまた然りです。 探索の一つのテクニックにNull Move Pruningというのがあります。Nullの意味は「からっぽ」で、Moveは「指し手」、Pruningは「枝刈り」です。日本語に無理やり訳すと「からっぽの指し手の枝刈り」くらいでしょうか。からっぽの指し手の意味することはパスをするという意味です。パスをすることと枝刈りはどんな関係があるんでしょうか? 具体的な局面を持ちだして考えてみましょう。第1図は有名な局面です。評価値としては、どれくらいが適正か難しいですが、Ponanzaは先手が+50点くらいと言
このブログは電王戦をより楽しんで頂くための一助となればと思い書き始めました。なにか意見などありましたら、twitterで声をかけてください。今日もよくある誤解について解説していきたいと思います。 ■ よくある誤解 将棋の名人を倒したら、次は完全解析? 「将棋の名人を倒したら、次は将棋の完全解析ですか?」とよく聞かれます。確かに将棋には答えがあるので完全解析は理論上は可能でです。現実問題として、完全解析はまったく目処が立ってないです。今回はどれくらい難しいか少し考えてみましょう。 仮に将棋が100手以内に先手が必ず勝てるゲームだとしましょう。そうすると完全解析するために必要な局面数は局面あたりの合法手数を80とすると、以下の数になります。 80を50回かけた数= 14272476927059598810582859694494951363827466240000000000000000000
3月29日、大阪あべのハルカスで第3回電王戦第3局、豊島七段と将棋プログラムYSSの対戦が行われた。人類側の2連敗で迎えて本局、ここで勝たなければ人類の負け越しが決まってしまう。対局に先立って豊島七段のプレッシャーはいかばかりであっただろうか。早速観戦記を書く前に、少しだけ対局する(?)二人の話をしよう。 豊島七段は序盤中盤終盤と隙のない棋風で知られている。私は何度か豊島七段とお話する機会があったのだが、彼の印象はニコニコ動画のPVなどで受ける印象そのものである。純粋さ、実直さ、そして将棋に対する圧倒的な熱意。未来の名人を予感させるには十分なものであった。プロ棋士間の棋力をイロレーティングで表した結果によると、非公式ながらプロ棋界でも片手に入る実力があるとも言われている。 YSSのプログラマ山下さんについてもお話しよう。山下さんは昔から積極的に情報を発信しており、山下さんが作ったこのサイト
菅井五段と習甦の対戦から一週間息つく暇もなく、2014年3月22日両国国技館で、電王戦第2局佐藤紳哉六段とやねうら王の対戦が始まった。様々なゴタゴタがあったこの第二局なのだが、それはまた今度にしよう。今回は将棋の技術的な背景を解説していく。 先手やねうら王の初手▲1六歩で始まった本局だが、迎えてやねうら王が▲7七角としたところだ(図1)。ここで佐藤六段が方針の岐路を迎えている。プロ同士の一局なら△同角成の一手といっても過言ではない。そうでなければ先手に居飛車にされ、一局ながら端の位をとったことを大きく生かされてしまうだろう。しかし佐藤六段は知っていたのだろう、このまま△4二玉とすれば、やねうら王は居飛車にせずに、ノーマル四間飛車にして自分が居飛車穴熊にできることを。 第1図 やねうら王が▲7七角とあがった所 そして作戦は成功して、やねうら王はノーマル四間飛車に佐藤六段は居飛車穴熊に囲うこと
このコーナーはコンピュータ将棋によくある誤解を解消していくコーナーです。常日頃コンピュータ将棋はもろもろの誤解を受けているのでその点を少しでも解消できれば、とこのコーナーを作りました。 ■ よくある誤解 コンピュータは定跡を覚えているから強い? もっともよくある誤解の一つです。有名ブロガーちきりんさんも自身のブログの中でこんなふうに言ってます。 ちきりんは、これも将棋ソフトが強くなった大きな要因なのかなと思っていました。人間は定跡を覚えたり暗記したりするのが大変だけど、機械ならすぐに覚えられ、忘れず、実際の局面で「あっ、これはあの定跡だ!」と思いつくことの漏れもありません。 だから人間より有利そうじゃん? と思ったんです。 コンピュータが定跡を丸暗記できても、将棋が強くならない理由は3つあります。 コンピュータは過去にあった数万局の対局を覚えることができます。でもその程度の量はコンピュータ
2014年3月15日、電王戦第3局 ▲菅井竜也5段-△習甦の一戦が有明コロシアムで行われました。結果は前評判を裏切り習甦の勝利となりました。その試合についてコンピュータ開発者の視点から、観戦記を書いてみます。 図1 25手目 菅井五段が3八銀と美濃囲いを作った所 図1は現在プロ同士の戦いではまず見られなくなった形です。理由は後手の居飛車の進展性が無いとされているからです。ここから後手は仮に穴熊に組めたとしても、5筋を制圧されていることが大きくうまくいきません。一方先手は指したい手がいっぱいあります。この辺りがコンピュータ将棋が序盤が上手くないと言われる理由ですね。 図2 34手目 習甦が3二金としまった所、ゴキゲン中飛車側の岐路 進んで図2は先手が主導権を握っている局面です。ここで問題がないなら▲6八飛と回りたいところです。一見△7三桂でなにも意味がないようにみえますが、後手はこの桂馬を跳
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