Scalaのマクロには、ある程度複雑なマクロを書こうとしたときに立ちはだかる壁があります。それがsymbolとownerです。この壁の厄介なところは、ほぼ確実に引っかかる罠でありながら英語も含めてドキュメントがほぼゼロという点です。これについて簡単に解説したいと思います。 Symbol Scalaのマクロにはsymbolという概念があります。12 Symbolは、変数・メソッド・クラスなどの識別子同士を区別したり、メンバ等のメタ情報へのアクセスを仲介したりするために使われます。Cの字句マクロやLispの構文マクロなどにおいては名前被り・名前空間の汚染等を防ぐこと、一言で言うとhygiene性が大きな問題となっていますが、Scalaのマクロにおいては同様の問題は起きにくくなっています。3 なぜなら、Scalaのtyper(より厳密にいうとnamer)が各定義・参照の構文木に適切なsymbol