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本章では、過去に起きた放射線被曝事故のうち、ふたつほど取り上げてみましょう。このふたつは残念なことに犠牲者を出してしまった事故ですが、せめてそこから教訓を学び取らなければ、犠牲者の方々が浮かばれません。 それぞれ人名が出てきますが、原典の記述に従い、原典が実名のものはそのまま記載してあります。 ひとつめは、1987年にブラジルのゴヤス州の州都ゴイアニアで起こった被曝事故です。 ゴイアニアにあった廃病院(ゴイアノ放射線治療研究所)では、営業していたときに放射線治療も行われていて、コバルト60を用いた治療機器と、セシウム137を用いた治療機器とを設置していました。病院の移転にともない、コバルト60のほうは新病院に移設されたのですが、セシウム137のほうは、そのまま、建物も壊されずに残された廃病院に放置されていました。これからお話しする事故のすべての原因は、まさにここにあります。管理もされていな
いきなり最初から「原子の中身」なんて、ちょっと難しそうで…と思われるかもしれませんが、これから放射線の話をしようというのですから、放射線を出す「もと」のところを知る必要があります。「いやな臭いはもとから断たなきゃだめ」ではありませんが、臭いのもとを知らなければ、臭いの対策ができませんからね。 「原子」は、その名のとおり、かつて、世の中のあらゆるものの基本的な構成要素だと思われていたものです。この原子が組み合わさって分子となり、その分子が集まって細胞となり、その細胞が集まって臓器となり、その臓器が組み合わさってわれわれの身体ができています。 中学校の化学の授業を思いだしてください。そのときは、原子は「それ以上分割できない最小単位」としていました。ところが、以下では、その原子を「分割」して、中身についてみていくことで、放射線が出てくる「もと」を探ってみることにします。 原子の中身が明らかになっ
ブックデザイン:鈴木成一デザイン室 出版社:明幸堂 2000円+税 A5判・並製 312ページ ISBN978-4-9910348-0-0 C0042 これほど丁寧で網羅的に放射線を説明している本をほかに知らない。 この本を書棚に入れておけば、なにか事が起こったときにいつでも引き出して正確な知識を得ることができるだろう。健康診断でCT検査やPET検査を受けるときにも参考になる。しかも、科学に興味のある小中学生なら、最後まで読み終えることができるほどのわかり易さだ。 成毛眞 (HONZ代表) 「週刊新潮」掲載 【書評のつづきを読む】 放射線について正しく理解するためには、 物理学の知識をひとつひとつ積み重ねながら、 自分の頭で考えなければなりません。 どうしたら考えられるようになるのか? これから10回にわたって、 考えていきましょう。
まず最初に、「ゼロベクレル」派の人たちに残念なお報せがあります。 みなさんが立っている足もと、その土や岩盤から、放射線はたくさん放出されています。これは、原子力発電所事故などいっさい関係なく、地球ができあがってからずっと放出されているものです。 みなさんがいつも吸っている空気、その中にも放射性同位体はたくさん含まれています。みなさんは常に放射性同位体を吸い込んでいることになります。もちろんこれも地球に大気というものができて以来、ずっとそうです。原子力発電所事故には関係ありません。 地上は危険ですね。では、地上を離れて、地面も大気もない、大気圏の外に出てみましょう。すると、宇宙から降ってくる大量の放射線を浴びることになります。じつは、宇宙は地上よりもよほど危険で、宇宙飛行士の方々はわれわれよりもはるかに多く被曝しています。われわれが宇宙からの放射線による被曝を低くおさえられているのは、大気が
本章では、いよいよ、人体への影響についてお話しします。人体が放射線を浴びることを被曝と言います。放射線に「曝される」からです。この被曝とその影響の話こそが、みなさんがもっとも気になるところなのではないでしょうか。 最初に、ICRP(International Commission on Radiological Protection)について紹介しておきましょう。これは読んで字のごとく「放射線防護に関する国際委員会」のことで、世界中の放射線の専門家が集まり、その研究の成果から、放射線防護に関して勧告を行う学術組織です。その前身は1928年にもさかのぼる組織で、研究成果をまとめた出版物(ICRP publication)を出しています。日本の放射線防護に関わる法の基準も、その勧告をもとにしています(1)。ですので、以下でも、放射線の人体への影響を定量的に語る場合、このICRP勧告の値を引用し
ここからいよいよ放射線と物質との反応をあつかいますので、多少むずかしくなってきます。しかし、この第4~6章こそが、本サイトでもっとも大切な「山場」ですから、ゆっくりとでよいですので、確実に読みすすめていってください。 放射線はエネルギーが高いから危険だと言いましたが、では、具体的には、どのような危険をわれわれに及ぼすのでしょうか。 第2章で出てきた携帯電話を投げつける話ですと、電話の大きさは10cm程度ですので、われわれの身体にぶつかると、それくらいの大きさの痣ができるでしょう。いっぽう、放射線は原子核や電子の大きさですので、被害をあたえる相手も、その大きさのものになります。 α線やβ線は電荷を持っていますから、多くのものが、原子核に到達するまえに、その周辺を覆う電子と反応します。γ線は電荷を持っていませんが、電磁波ですので、やはり電子と反応します。電子と反応する、しかもエネルギーが巨大な
主な放射線が出そろったところで、放射線について詳しくお話ししていきたいと思います。まずは、用語の説明をしましょう。この章では、大切な用語や概念も登場しますし、いよいよ定量的な話も出てきますので、よくよく頭に入れていってください。 同位体のうち、不安定で放射線を出すもののことを、「放射性同位体(Radioisotope)」と呼びます。たとえば、水素の同位体には、天然に存在するものでは、水素1(1H)、水素2(2H)、水素3(3H)のみっつがありますが、このうち、水素1と水素2は安定で、水素3だけが不安定な放射性同位体となります。 ちなみに、この水素だけは特別あつかいされていて、同位体ごとに専用の名前と元素記号が与えられています。水素2が「重水素(デューテリウム)」で記号がD、水素3が「三重水素(トリチウム)」で記号がTです。 放射性同位体を含む物質を「放射性物質」と呼びます。 放射性同位体や
原子と原子核の中身について知ったうえで、いよいよ放射線の話をしましょう。この章では、主な放射線の種類と、それぞれの放射線がどうやって放出されるのかについてお話しします。 第1章では、安定な原子核は限られているという話をしましたが、では、不安定な原子核は、いったいどうなってしまうのでしょうか。 第1章で安定な核の領域を示しましたが、それは、陽子の数と中性子の数が同じくらいの原子核です。そこから外れるほど不安定になるのですが、あまりに大きく外れた、つまり陽子数と中性子数があまりに違いすぎる原子核は、そもそも存在することが困難です。 ある程度数が異なると(上図の水色の部分)、陽子が持つ電磁力(すべてが同じプラスの電荷なので反発する力)が、原子核を結合させる強い力に勝ってしまって、原子核は分裂してしまいます。それは核分裂と言って、原子力発電や核兵器で用いられますが、本サイトでは対象外とします。 こ
日本で放射線の話をするときには、東北大震災にともなう福島第一原子力発電所事故について避けて通ることはできません。あの事故直後には、放射線に関する言説が、デマも含め、とてもたくさん出されました。いまさら放射線について書くくらいなら、なぜ、そのときに書かなかったのか、と思われる人もいるかもしれません。あのころ僕はちょうど生まれて初めての本を出そうとしていた時期であり、それを自分の勤務先の研究施設の震災復旧のため、連日倒れそうなくらいの激務の合間にやっていたために、ほかの本を出すような無謀なことはできなかった、というのが実情です。復旧が終わり、時間に余裕が出てくると、完全に時機を逸してしまっていました。 ではなぜいまさら書く気になったのかと言いますと、きっかけは豊洲市場問題です。あそこで繰り広げられた「安全より安心」とかいう無意味な話や、それを煽るマスコミ、間違った風評で相手を傷つけても自分のち
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