サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
ドラクエ3
swingybrain.blogspot.com
ネットワークの中で、各ノードの持つエッジ数の確率分布がべき乗則に従うスケールフリーネットワーク(scale-free network)。 スケールフリーネットワークに関するBarabasiたちの論文が報告されて10年。 その論文では、異なると思われていたネットワークたちは、実はこのスケールフリーという共通性を持つことがわかり、このスケールフリーネットワークがどのように出来上がるかそのモデルも示された。 そんな論文の発表10年を記念(?)して、サイエンスでは特集が組まれている。 特集の概略に続いて、Barabasi自身が記事を寄せている。 非常に読みやすい記事で、スケールフリーネットワークの論文がどのような文脈で発表されたか、その後の発展、そして将来展望がまとめられている。 トポロジーだけでなく、やはりシステムとしての振る舞いが重要問題ということで、後半はそれについて触れられている。彼自身は
「逆」引き統計学―実践統計テスト100 Gopal K. Kanji (原著), 池谷 裕二 (翻訳), 久我 奈穂子 (翻訳), 田栗 正章 (翻訳) この本は、100 Statistical Testsという100の統計検定法が収められた、とてもとても実践的な本の訳本である。 訳者の一人である池谷さんは訳者序文でこう書かれている: 「一般に、統計の本は難解な専門書か、あるいは逆に、初心者向けの教科書がほとんどで、大多数の人が期待するような実践的で“使える”解説書はほぼ皆無でした。」 「この本は教科書ではありません。専門書でもありません。」 「実践現場で統計学検定が必要になってから、それに相応しいテスト法を探すという、いわゆる「逆引き」としての活用法が、本書の最大の特徴です。」 例えば、 1.統計の基礎知識をある程度身につけてはいる。 2.普段、統計テストを行うことがある。 3.手持ちの
脳では、多様なニューロンたちがネットワークとして働いている。そんなネットワークでは、どんな活動パターン、「ボキャブラリー」、が使われているか? 最近Neuronに報告された研究によると、音刺激によって聴覚野で生じる活動パターンは、音入力がなく自発的に活動が生じている時のパターンと似ていて、感覚刺激は「自発活動ボキャブラリー集」の中から表現されていそうだとわかった。 ラトガーズ大のLuczakたちが報告している。(って、うちのラボの論文です、、、) --- 研究では、ラット聴覚野(または体性感覚野)から50個前後のニューロン活動を同時に計測し、感覚応答と「自発活動」を神経集団レベルで詳しく調べている。神経活動の時間的なパターンと、各ニューロンが何回活動したかという「発火頻度」、その両方の観点から調べている。 ちなみに、自発活動として、麻酔下、睡眠中、そして休憩中に生じる「up状態」といわれる
顕微鏡と言えば、中学生の時にタマネギか何かの細胞を理科の実習で観察して、大学院生に入って共焦点レーザー顕微鏡や2光子励起顕微鏡なるものがあることを知った。今の大学院生なら、4Pi、STED、PALM/STORMといった顕微鏡を話題にしているのかもしれない。 とにかくここ最近、次から次へと新しい名前の顕微鏡が登場していて、もはやついていけなくなってきた感がある。顕微鏡の英語はmicroscopyだけど、”nanoscopy”という言葉もよく見る。 その中で、STED(stimulated emission depletion)顕微鏡という顕微鏡が神経科学研究に応用されつつあるので、今回は私が重要論文かも?と思った範囲で、STED関連の文献集を作ってみます。 こういう次世代顕微鏡のポイントは、従来の光学顕微鏡では見れなかったものが、見れるようになる、ということか。しかも、組織を生のまま見れたり
最近、The Neurology of Consciousnessという本が届いて、各章の要旨だけ一通り読んでみたので、ここで一度まとめてみます。 neurology(「神経学」という訳が見つかる)、wikipediaによると「神経系の疾患を扱う医学分野」とある。psychiatryなど他の分野との関係もwikipediaで説明(議論)されている。 この本はneurologyというだけあって、医学書的なニュアンスも強い。 昏睡、植物状態をはじめとしたdisorders of consciousness(「意識障害」と訳すことにします)の最新研究がしっかりまとめられている点が特徴的。いわゆるlevel of consciousness(意識レベル)の研究に多くのページが割かれている。 このエントリーでは、まずこの教科書の編集者を紹介した後、全体構成と各章のアウトラインをまとめます。 (またま
最近、コネクトームやコネクトミクスと呼ばれる研究プロジェクトが何かと話題になる。これは神経系の詳しい回路図を明らかにしようとする究極的なプロジェクト、とでも言ったら良いだろうか。 一方で、従来から行われている電気生理学の方法論で、回路図、あるいは神経回路の「サブネットワーク」を探そうという試みももちろん有効で、こちらは機能的な側面を調べながら研究できるから、神経回路研究に大きく貢献してきた。 その後者について、新着のCurrent Opinion in NeurobiologyにSilberbergが総説を書いていた。 彼は、Markram(こちらでも紹介したBlue Brain Projectでも有名)としばらく一緒に仕事をしてきて、昨年のNeuronに良い論文を出している。その論文では、大脳新皮質5層のサブネットワークの機能特性を明らかにしている。(最近、スウェーデンで独立した模様。)
新着のネイチャーに面白い記事が掲載されていた。 言葉の定義そのものが論争になっているいくつかのトピックが紹介されている。 paradigm shift epigenetic complexity race tipping point stem cell significant そして consciousness (*リンクはすべてwikipedia) 意識の項目、訳がわからないといえば訳がわからないけども、Edelman、Chalmers、Koch、Gazzanigaのコメントや主張も紹介されている。 Gazzaniga先生曰く You don’t waste your time defining the thing. You just go out there and study it. 定義することに時間を浪費するな。そこからすぐに出て、研究せよ。 と。 人と議論するための最低限の定義
Nature BiotechnologyにPrimerという企画コーナーがあって、いろんなデータ解析手法が紹介されている。 バイオインフォマティックスに興味がある読者を対象にした内容ではあるけれど、例えば神経科学でニューロン活動の解析をする人たちも、同じ手法を使っていたりする。 「よう知らんけど名前くらいは聞いたことある」 「周りはみんな知ってそうだけど、いまさら知らんとはよう言わん」 「解析プログラムがあるから使ってるけど、実は原理的なこと知らんぞ」 といった手法の概要を知ることができて、このコーナーでこっそり勉強できる。 とにかく、このコーナーは役に立っているので、今回のエントリーでは、過去のPrimerへのリンク集を順不同で作ってみます。(関係なさそうな記事は省きました。) principle component analysis (wikipedia) clustering (wi
今週読んだ論文の中で一番面白かったのはNature NeuroscienceのNirたちの研究。ヒトの聴覚野からニューロン活動、あるいは脳表面から脳波(正確にはECoG)を測ったら、右脳、左脳の聴覚野がゆっくりと同調しながらリズムを刻んでいることを報告している。 この論文、構成やロジックなどいろいろ問題を抱えているけど、以下に述べる最近の論文たちとあわせて考えると、今後の方向を占えそうでツボにはまった。ということで、つぶやきモードで(ちょっと毒もはきつつ)この論文を読みながら思ったことを記録してみます。メール等も含め、コメント・フィードバック・補足などしていただけると非常にうれしいです。 --- さて、そのNirたちが何をやったか見てみる前に、著者の中に前回も登場したブラックジャックことItzhak Friedが名を連ねているので、彼について(さっそく脱線)。 Friedはてんかん患者さん
オバマ?マケイン?どちらを応援するか? もしまだ意思決定していない人がいたら、その人のautomatic mental associationなるものをテストで測れば、その人が将来どちらを応援するか、票を投じるか、高い確率で予測できるかもしれない。それに近いことを、GaldiとGawronskiたちの共同研究グループが新着のサイエンスに報告している。 --- その論文では、大統領選挙ではなく、イタリアVicenzaの住民129人を対象に、米軍基地拡張の賛否に関する意思決定をテーマに調べている。 テストでは主に3つの情報を参加者から集めている。 基地拡張の賛否(choice)に加え、アンケート形式で米軍基地に関する意見(意識的に思っていること、conscious beliefs)を聞き、そしてautomatic mental associationを測るための単純なテストを行ってもらう。 c
4ヶ月前のPLoS Biologyに、Why We Sleep: The Temporal Organization of RecoveryというタイトルでEmmanuel Mignotが非常に良いレビューを書いている。睡眠に興味のある人には超お薦め必読文献。 重要な主張は、Robustness May Favor Temporal Organization of Sleepという項目に書かれている。元の文章も抽象的でわかりづらいけど、自分の理解はこう: 細胞とシステムレベルで、恒常性(homeostasis)を保つために睡眠というものがある。その恒常性の仕組みは、外部環境からのかく乱に対して、システムをより強固なものにする。一方で、強固なシステムというのは、適応という点で不利な側面があるのだけども、その恒常性を保つ仕組みの上に、アドオン的に冗長性を持たせたり、モジュール化したり、正負のフ
個人的に必読と思った最近の論文を三つ。 覚醒中の脳状態と神経集団活動 ネイチャーのオンライン版から。スイスのPetersenグループの論文。 ネズミ(マウス)の「覚醒状態」といっても、ヒゲを活発に動かしている時と、大人しくしている時がある。バレル皮質2/3層ニューロンの膜電位の揺らぎを調べたら、その覚醒状態の違いによって、ニューロン同士が同調していたり、してなかったりすることを明らかにしている。 ヒゲを活発に動かしている時は、非同期的で、膜電位の揺らぎ方が小さくSN比が大きくなることがわかった。(ちなみに、その膜電位の揺らぎはヒゲからの感覚情報ではなく、脳の内部で生み出されているものである、という主張) この論文は技術的にも、コンセプト的にも新しく、ネットワークレベルの活動と脳状態を考える上では必読。in vivo patchもついにマルチの時代へ。。。 文献 Nature. 2008 J
日々、膨大な量の論文が発表される。 すべての情報をフォローするのは、限りなく不可能に近い。ヒトの脳のキャパを超えている。今のGoogleや、wikipediaの力を借りてもやはり限界がある。 AIの手を借りて、もっとスマートに情報収集できれば、と多くの人が願っているはず。そんなAIの開発につながるテキスト・マイニングの記事がCellに載っていて面白かった。 テキスト・マイニングとは、テキスト化(自然言語化)された膨大な情報から、隠れたルールを見つけ出すこと、とでも言ったら良いだろうか。データ・マイニングのテキスト版。このテキスト・マイニングの方法を開発する研究分野は、natural language processing(自然言語処理、略してNLP)という研究分野の一部で、それはさらにAI研究分野の一部でもあるらしい。 生物学(今回の文脈に限れば、神経科学も含めて良いか)でのテキスト・マイ
最近、ワーキングメモリーをトレーニングすると、流動性知能(fluid intelligence)と呼ばれる知能が向上する、と主張する論文が報告され話題になった。日本語でもwired visionの記事などが見つかった。 結果を一般化するのはまだ早いとは思うが、おそらく今回の研究は、今後の知能・知性研究に大きなインパクトを与えそうな気がする。自分は、心理学の知能研究は全然知らないのだけども、その論文の解説記事(commentary)が最近出て非常に勉強になった。 今回は、この解説記事やウェブで見つかる情報を参考にしながらエントリーを立ててみる。 (*誤り・誤解があるかもしれないので、あればぜひ指摘してください) --- 二つの知能 知能(intelligence)は、流動性知能(fluid intelligence)と結晶性知能(crystallized intelligence)の二つに分
「意思決定」のことを勉強したいとき、何から手をつけたら良いか難しい選択に迫られる。 専門家に聞いても、おそらく違う答えが返ってくるか、「どんな意思決定に興味がある?」と逆に質問されそうな気もする。 「意思決定」の研究はどんどん広く・深くなっている。 この1年以内に、複数の雑誌で意思決定に関する特集が組まれている。基本的には「神経科学」という視点で考えているので、他にも特集があるかもしれない。 確認できる範囲では、Science、Nature Neuroscience、そしてJournal of Neuroscienceの特集。今回は、Journal of Neuroscienceの2007年8月1日号の特集をごく簡単にまとめてみる。(ちなみに、掲載から半年以上たっているので、論文はすべてPDFでダウンロード可) --- この特集はいわゆるvalue-based decision(定義は以下
4月6日から9日まで、ジャネリア・ファームでスプリング・カンファレンスが開催され、参加する。 今回のエントリーはその予習が目的。(このエントリーの長さ、おそらく過去最長。) カンファレンスのタイトルはNeural Circuits and Decision-Making in Rodents。 げっ歯類を対象に、神経回路、意思決定や記憶・学習の研究に取り組んでいる人たちが集まるようだ。 ジャネリアのカンファレンスを知らない方のために、自分が知っている範囲で少し説明すると: 春と秋、特定の研究テーマに関するカンファレンスがいくつか開催される。そのテーマの分野でトップクラス、ホットな研究者がジャネリアに招待される。その招待スピーカーに加え、抽選でポスドクや学生さんも参加できる。全体で50~70人くらいのカンファレンスになるのだろうか?細かい雰囲気までは不明。 ちなみに、ジャネリアのカンファレン
この一週間で知った情報を、強引に関連付けてみます。 キーワードは「Aクラスな科学」。 スピン(一般向け) ネイチャーのウェブページ上で「スピン(spin)」の特集が組まれている。 自分は、ポッドキャストを聞いただけだけど、なかなかわかりやすく解説されていてお薦め。 スピンとは、基本粒子のもつ角運動量。英語では、intrinsic angular momentum of elementary particles。(自分は大学教養物理で挫折しているので、これ以上の詳細は不問ということで。。。) では、そのスピンは何の役に立ってるか? 例えばハードディスク。昨年のノーベル物理賞とも関係が深い。スピントロニクスなる言葉を初めて知った。ちなみに、そのスピントロニクスの分野ではスピンを応用した半導体が開発されつつあるとか。脳科学でいえば、今やなくてはならないMRIを支えている物理現象もこのスピン。スピ
最近サイエンスに掲載された論文によると、同じことを反復して学ぶより、思い出す方を重視した方が良いらしい。 研究では、外国語単語の勉強(覚える)と試験(思い出し)をするとき、各単語について、 1.繰り返し勉強・繰り返し試験 2.繰り返し勉強のみ 3.繰り返し試験のみ 4.一回きり勉強と試験 という条件で成績を比較している。 すると、1が良いのは良いとして、2,4より3の条件が良かったらしい。さらに、1と3の結果は同じだった。つまり、一旦覚えたら、再勉強はあまり効果はないと解釈できる(一方、2と4の結果は同じくらいひどかった)。 さらに、1の場合、勉強と試験の両方をやるから、3の方が時間を節約できる。なぜなら再勉強時間はいらないから。ということで、一回勉強したことは、思い出すことにウェイトをおいた方が効率的、ということになる。 もちろん、現実社会では、なかなか「勉強」と「試験」を明確に区別でき
「記憶と分子」というテーマに絡んだ論文で、最近目に留まったトピックを二つ。 メラトニンと夜間学習の非効率性 メラトニンの働きを抑えれば、学習効率が上がるかもしれない。 最近サイエンスに掲載された論文。夜に放出量が高まるメラトニンのせいで学習効率が落ちる、ということを示した論文。メラトニンは脳の松果体(pineal gland)というところで産出される物質で、サーカディアンリズムと同調して放出量が変化する。研究では、昼間に行動するゼブラフィッシュをモデル生物として選び、メラトニンの情報伝達が夜間学習の非効率性を説明するのに、必要かつ十分だということを明らかにした。 人でどれくらい当てはまるかはもちろん不明だし、なぜ・どうやってメラトニンが学習の邪魔をするのかも不明。風が吹けば・・・の「風」の一つにメラトニンあり、という感じか。けど、もし人でも当てはまるとすると、一夜漬けほど効率の悪い勉強法な
例えば何かを体験している時、自分の脳のどこがどう活動しているのか? そんな脳の様子を自分自身で覗くことはできないか? 自分の脳を自力でコントロールできるようにはならないか? そんな疑問・望みに一歩近づけるかもしれない技術がリアルタイムfMRI。 fMRIは、脳活動に伴って起こる血流の変化を検出して、非侵襲的に脳活動を計測できる技術。それを「リアルタイム」でやって、脳のここがこれくらい活動している、という情報をその脳の持ち主に教えてやろう、という技術がリアルタイムfMRI。 現時点では、実際の脳活動が起こってからその結果を知るまでには、10秒近くかかる。原理的にどう頑張っても数秒の遅れは必ず出る。だから、ここでの「リアルタイム」というのは、遅れはあるけど、連続的に脳活動を計測・解析し続ける、という意味に近い。「まさに今」、という意味のリアルタイムではない。 それはともかく、そんな面白い技術が
このブログは活動休止状態になってますが、生きてます(たぶん)。 今回は3つアナウンスメントです。 第一に、9月1日、神戸で開催されるシンポジウム「若手研究者とのクロストーク」でトークさせてもらうことになりました。 このシンポジウムは、Neuro 2010(翌日から開催される神経科学の学会)のオフィシャル・サテライトシンポジウムで脳科学若手の会の方々が企画されたとのこと。 研究の内容についてだけではなく,そこまでの道のりや,キャリアプランについてもお話していただく予定です。質疑応答の時間をたっぷり準備していますので,ノンアカデミックな質問も大歓迎です。講演は英語ですが,質疑応答は日本語もOKです。 とあり、普段のトークとは違うことが要求されているので、何を・誰に向けて・どうトークすべきか、ややプレッシャーを覚えております。。。(「ノンアカデミックな質問」は、他の演者の方々にされた方が良い答え
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『The Swingy Brain -Shuzo Sakata』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く