日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書) [新書] 著者:吉本 佳生 出版:講談社 ★★★★☆ 本屋には「リフレ本」がぞろぞろ並び始めた。昔の本に付録を付け足しただけのものから、急ごしらえの座談会までいろいろあるが、どこにも日銀がお金を配ったらどういう経路で物価が上がるのかというメカニズムが書かれておらず、株価や地価が上がって「期待」が高まれば物価も上がるだろう、という漠然たる期待が書かれているだけだ。 本書はそれとは違って、デフレが起こったメカニズムを定量的に示している。それは吉川洋氏が示したのと同じく、賃下げである。次の図を見ただけでも、強い相関関係は明らかだろう。しかも「デフレが賃下げをもたらした」という因果関係はありえない。平均給与(名目賃金)の引き下げがデフレに先行しており、しかも低下率が大きいからである。賃下げは特に中小企業に著しく、そのコストの8割は賃金だから、これだけで