中部電力が、首都圏で本格的な電力販売に乗り出す。事実上の地域独占を崩し、電力会社同士の競争を加速させる取り組みとして評価したい。 ただ、原子力発電所の再稼働が進まない中で電力需給は逼迫(ひっぱく)しており、電気料金も相次いで値上げされている。こうした電力不足の環境下では、せっかくの競争も、電気料金の引き下げに結びつきにくい。 原発の運転再開などを通じて安定的な電力供給を早期に確立することを抜きにして、本当の競争を促すことはできない。政府には、競争と安定供給が両立する仕組みづくりを求めたい。 中部電は、三菱商事系の電力小売り事業者「ダイヤモンドパワー」を買収し、今秋から首都圏の工場などに電力供給する。三菱商事や日本製紙と共同で静岡県に石炭火力発電所を建設し、新たな顧客企業も開拓するという。 電力の小売り自由化は段階的に進められ、現在では小規模工場までを対象に、自由な電力販売が認められている。