炎上、祭り、バカ発見器……と、ネットの中では今日も他人を非難することに忙しい。他者への憎悪や嫉妬を撒き散らすこの風潮は、いまやネットの世界から現実の社会へと広がっている。しかし、そんな世相に対して疑問を呈するのが、思想家の内田樹だ。昨年上梓した『呪いの時代』(新潮社)では、他人に対する「呪いの言葉」を徹底的に批判する。いったい、「呪いの言葉」とは何なのか。そして、その言葉を退けるためにはどうすればいいのだろうか。現代社会を生き抜くための知恵を聞いた。 ――まず、本書で示す「呪いの言葉」とはどのような概念でしょうか? 内田樹氏(以下、内田) 単独で「呪いの言葉」というと観念的になってしまうので、同じく本書で提示している「祝福の言葉」と対比したほうがわかりやすいと思います。「呪いの言葉」は、人を記号化したり、カテゴライズしたり、一面だけを切り取ってその人の全体を表してしまう言葉です。「反革命」