本書は摑みどころがない。何が新しいか、面白いのかと問われたときに、答えに窮する漠然とした本だ。スペキュラティヴという言葉にヒントがあるだろうかと辞書を引けば、思索的、思弁的、投機的といった意味がある。しかし、どの言葉を当てはめてもしっくりとは来ない。しかし、それでも不思議と紹介したくなる魅力を持っている。スペキュラティヴ・デザインという聞き慣れない言葉の捉えられなさ自体がその魅力となっていると思う。 どうして、スペキュラティヴ・デザインは掴みどころがないかといえば、自らをわかりやすく定義し、定義されることを拒んでいるからだ。単一の価値観に異を唱え、自らも単一化したイメージとして理解されることを拒否する。厄介な問題に対する「ソリューション」ではなく、物事の可能性を思索するための手段として用いる。想像力を駆使して、新しい見方を切り開くことに重きをおいている。 そこで一つ疑問が湧く。スペキュラテ