妻は時々、何気なく名言を口にする。 「メールとかツイッターができてから、中途半端な人間関係が増えたのよねえ」 身内、親友、友人、同僚、隣人、知人、知り合い、他人……。なるほど、インターネットがなかったころはもっと丁寧だった人との微妙な間合いが、がさつになった。 車の運転で人格が変わる(本性を現す?)人がいるように、ネットもあまり安易に発信できるせいか、妙になれなれしかったり、突然敵に変わったり、せわしない。 確かに、交信圏は、速くて、広い。でも、やりとりの中身は、短く、安手で、はかない。その二つの特徴を併せ持つ人の網目が今日、地球上をくまなく覆っている。 去年の今ごろ、カイロの広場にいた。独裁政権を倒した何十万もの人々を街頭に呼び出したのは、ネットの力だという。 歓喜の渦は感動的だったが、片っ端から話を聞くうちに困惑した。人々は軍政を楽観し、民主化や自由の中身を語れない。群衆の強大さと一人