必要があって、芹沢光治良の『人間の意志』を読んでいたら、おかしなことに気づいた。はじめ、昔を回想するエッセイだと思って読んでいたら、「御親様」とか「天の将軍」とかいうのがやってきてお話をする。昭和天皇が死ぬ前に来た御親様は「平成の世」と言って、元号が平成に変わることを予言する。これは何か小説かと思ったら、確かに小説らしいのだが、『人間の幸福』という前作で、大江健三郎の実名を出したのは、天の将軍様の指令だとかいう話になっていく。 この時、芹沢は93歳である。ボケていたのである。キリスト教の人だが、天の将軍から指示を受けたりしたらそれはもうあれである。神の水がどうとかルルドの泉がどうとか書いてある。遠藤周作が晩年オカルトになってしまったのは有名な話だが、芹沢もこんな風になっていたとは、知らなかった。 人間の意志 作者: 芹沢光治良出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1990/07メディア: 単