横浜美術館で開催中の『ノンセクト・ラジカル 現代の写真III』は、非常に筋が通ったグループ展だ(9/20まで)。イスラエルvs.パレスチナ紛争の陰に隠されたベドウィンの日常(アハラム・シブリ)。米兵相手のバーで働く沖縄のフィリピン人ダンサーたち(石川真生)。一見ただの美しい風景に思えるが、実はコソボ戦争の最前線や南北朝鮮国境の地雷原などなど(米田知子)……。トマホークの発射音と着弾音を口笛で表現する青年のビデオの後に、野原でサッカーに興じる少年たちの映像を観ると、シュートの瞬間にその着弾音が脳裏によみがえる(アンリ・サラ)。いずれもが普段は不可視の、あるいは意識に上らない「現実」を生々しく捉えている。だがこの展覧会には、決して埋められない大きな欠落がある。高嶺格のビデオ作品『木村さん』が、開催直前に公開中止となったのだ。 「画竜点睛を欠きましたね」。担当学芸員の天野太郎は、僕の質問を待ちも