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アメリカ大統領選
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慌ただしかった2020年も年の瀬が近づいてきました。年末といえば、やはりNHK紅白歌合戦。先日、今年の紅白に出場する42組が発表されました。初出場は10組。中でも注目は、アイドルグループNiziUとBABYMETALでしょう。大学生の筆者の周囲では、よく話題に上がります。歌もダンスも切れ味抜群のパフォーマンスに期待したいものです。 同時に波紋を呼んだのは、AKB48の落選です。昨年まで11年連続で出場していました。NHKによると、落選理由は「総合的な判断」。AKBグループ総監督の向井地美音さんは、自身のTwitterで「この2年間、先輩方が繋いでくださったバトンを私たちの代で何度も止めてしまいました。そして今日も。それが何より申し訳ないし不甲斐ないです」と悔しさを滲ませました。 一世を風靡したAKBが、ついに紅白まで不出場となると盛者必衰の理を感じざるにはいられません。約8年前、筆者が中学
半年間の留学が終わり、昨日の昼に韓国から帰国した。空港の到着ロビーには、母が迎えに来てくれた。開口一番に言われたのが「あんた、大丈夫だったの?」 韓国の3.1独立運動100周年の影響を心配していたという。「外務省から渡航の注意みたいなのが出てたよ」と気を揉んでいた。言われてみれば前日の2月28日に、外務省からデモなどに関する海外安全情報が届いていた。在韓邦人に対し、大規模な行進や集会をできるだけ避けるように、とのことだった。 「万が一、ご本人が被害に遭った場合や邦人が被害に遭ったとの情報に接した場合には、大使館にご一報ください」 万が一とは言うものの、本当に被害に遭うことはあるのだろうか。側から見れば「韓国が危ない」とも捉えかねない勧告文に、釈然としない思いを抱いた。 韓国は、日本人にとって危険な土地なのだろうか。私は留学中「反日思想」に出くわすことは無かった。むしろ積極的に植民地博物館や
現地時間8日にイギリス下院総選挙が行われました。開票の結果、保守党は定数650の内、318議席を占めるにとどまりました。前回から13議席も失った党首のテリーザ・メイですが、9日、エリザベス女王の許可を受けた後に組閣を発表し、「EU離脱交渉を主導していく」決意を強調しました。ロイター通信によると今回の選挙戦で保守党は、過半数を獲得できなかったため、EU離脱交渉での立場が近い北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)と「重要議決の際に保守党を支持する協力協定(confidence and supply)」を結ぶことを検討しているようです。 今回の選挙で興味深かったのは、対抗馬である労働党が前回から29も議席を増やし261議席を獲得したことです。党首は左派路線の傾向が強い(Hard left)とされるジェレミー・コービン氏です。2015年に労働党党首に就任してから、不信任決議案や党内部
子供の頃、読書好きの父と祖母と共に、毎週のように地元の市立図書館を訪れていました。棚に並ぶたくさんの本を前に、今週はどの本を借りようかな、とわくわくしながら選んでいたのを思い出します。一方で、幼いながらに筆者が感じていたのは、利用者の年齢層の高さです。高齢の方が圧倒的に多く、学生や20~30代の若年層の姿はほとんど見かけられませんでした。 今朝の紙面には、アメリカにおける図書館の挑戦が紹介されています。提供するサービスは、決して本の貸し出しだけではありません。例えば、今、各地の図書館で幼児を対象とした読み聞かせプログラムが人気を博しているようです。パソコン、スマホ全盛期の時勢に逆流するかのようなアナログ企画ですが、紙の匂いや手触り、装丁の美しさといった本の良さを知る母親たちはノスタルジーを感じると同時に、本に触れることで豊かな情操を育んでほしいと願っています。一方で、高齢者や障がい者を対象
言いたいことは表題の通りです。これ以上でもこれ以下でもありません。今日から9月ということもあり、本当はもっと明るいテーマで書きたかったのですが、野党の今後を考える上で、書かずにはいられませんでした。筆者と同じ思いの方、決して少なくないでしょう。今日のテーマは民主党と維新の党の野党再編に向けた連携です。一緒に維新の党の今後について考えてみたいと思います。 31日、民主党の岡田代表と維新の党の松野代表は国会内で会談を行い、選挙や政策で協力するための協議機関を今国会閉会後に設置することで合意しました。この協議機関の設置により、両党を軸とした野党再編を視野に入れている模様です。来年夏に参院選を控え、政策を一致させることで選挙のための「数合わせ」批判をかわし、選挙区での共倒れを防ぐ狙いがあるとも推測されています。また、任期いっぱいでの政界引退を表明した橋下市長が10月、分裂した維新の党の大阪系議員を
オリンパス問題はわれわれの体質?(1/3) オリンパスが1000億円に及ぶ巨額の損失を隠すために、安物企業を不相応な高値で買収していたという。それを指示したのは、歴代の社長や会長である。経営失敗の責任を回避するためだったらしい。すぐ頭に浮かんだのは、太平洋戦争末期の「台湾沖航空戦」だった。 1944年10月10日、米第3艦隊の空母機動部隊は沖縄を襲い、日本軍に大きな損害を与えた。さらに11日にはフィリピン、12日には台湾を襲撃する。これに対し日本は12日、台湾沖の米艦隊に対し、1251機の航空機を投入して大報復戦を行った。 しかし天候が悪く、目視飛行の日本軍航空機には敵艦隊が見つからない。一方で米艦隊はレーダーを持っており、上空で待ちかまえて、やって来る日本軍機を片はじから撃墜した。12日から16日までの航空戦で、日本は航空機312機を失ったが、米軍は巡洋艦2隻が小破した程度で、損害は
<『ビブリア古書堂の事件手帳2~栞子さんと謎めく日常~』三上延著> 25万部を超える人気シリーズの第二巻。物語の舞台は鎌倉にある老舗の古書店で、語り手である主人公の大輔と栞子は店員と店主の関係だ。持ち込まれる古書には持ち主の謎と秘密が詰まっている。それを父親の後を継いだ栞子が解いていく。プロローグとエピローグに「坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)」を置き、「アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)」、「福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)」、「足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)」の三話から構成されている。ライトノベル系の枠を超えた不思議なミステリー。読み始めたらとまらない、癖になりそうな作品だ。 ――このシリーズを書いた背景はなんですか。 ◆古書店のアルバイト経験を生かして 作家になる前に古書店で3年ぐらいアルバイトをしていたん
「自炊」の是非 新しい「紙」(1/4) 電子書籍市場は依然として立ち上がらないが、出版社がもたもたしているうちに紙の書籍や雑誌を裁断して自分でスキャンし電子書籍にしてしまう「自炊」が、すでに隠れたブームになっている。その「自炊」関係では、9月5日に大手出版社や作家が自炊代行業者100社に質問状を出し、それに対して代行業が上から目線だと反発しているという記事を、9月19日の朝日新聞が『自炊代行業と出版社対立』として報道している。 音楽CDからパソコンでデータを読取り、携帯音楽プレーヤーに書き込んで聞けるようにする「リッピング」行為の書籍版が「自炊」だ。しかし自炊の場合、手間をかけないで行うには、元になる本の背を切り落としてページをバラバラにする必要がある。裁断しないでスキャンしようとすると、1ページずつ開いてスキャナーに置いてボタンを押して…という行為を数百回繰り返すことになり、たいていの
事故から14年後、チェルノブイリ汚染地帯を歩いた(1/4) 2000年8月、チェルノブイリ原発に近いベラルーシの高濃度汚染地帯を歩いたことがある。ウクライナ国境まで10キロ、原発まで30キロのベリベラグという廃村だ。原発事故から14年がたっていたが、それでも村の地表からは毎時45マイクロキュリーの高い放射線が検出されていた。 案内してくれたのは菅谷昭医師だった。現在の松本市長だ。チェルノブイリはウクライナ共和国にあるが、国境を接して風下にあったベラルーシでは当時、被ばくによる子どもの甲状腺がんが多発していた。菅谷医師は信州大学医学部助教授のポストを捨てて96年にベラルーシに移り住み、甲状腺がん患者の治療に当たっていた。 ゴメリ市とチェルノブイリを結ぶ幹線道路は、原発から40キロの地点で封鎖されていた。道路封鎖線のわきにトレーラー住宅があり、そこから数人の警官が出てきて通行禁止を告げた。
続・メディアの責任―逆オオカミ少年の危険(1/4) 原発事故についてメディアにどのような報道責任があるかについて、前回に引き続き今回も触れさせていただきたいのです。少ししつこい印象もあることは承知しておりますが、日本が完全な「脱原発国家」に明日から生まれ変わることは困難であり、一定期間(それも10年単位の長さで)原発に一定比率依存せざるをえない現実を見据えるなら、メディアの果たす役割がきわめて大きいと判断するからにほかなりません。同じことが起きてはならないのです。 注意を喚起したいのは、ニューヨークタイムズの記事(3月16日)です。この記事の中で、同紙は福島原発が日本側の公表よりはるかに深刻な事態に陥っていることを指摘していました。それができたのは、米国の核実験監視モニターが正確に放射能の分散を把握していたからで、米第7艦隊は自身のモニターに基づき日本近海の海軍戦艦を退避させました。いま
原発をめぐる思いがけない発見(1/5) 最近の紙面で、私がひときわ興味を引かれたのは、8月6日の朝日新聞朝刊オピニオン面(13面)である。ページを繰っているうちに出会ったもので、思いがけない発見だったといっていい。 この日のオピニオン面には、大型インタビュー1本と、論考「私の視点」2本が載った。 「中国の原発」と題したインタビューの相手は、中国科学院理論物理研究所研究員の何祚庥(ホー・ツオ・シウ)さん。紹介文に従えば、〈国のエネルギー政策に異論を唱えることが難しい国情の中で、「原発大躍進」に警鐘を鳴らす老科学者〉である。 「私の視点」のうち着目したのは明治大学准教授(原子力工学)勝田忠広さんの論。〈原子力の利用 軍事と平和で二分するな〉と見出しが付けられている。 まず、勝田准教授の「私の視点」から。論は、こう始まる。 〈核兵器は原子力の軍事利用、原子力発電は原子力の平和利用といわ
マイナンバーの「安全」を問う(1/6) 「社会保障と税に関する番号」の名称が「マイナンバー」に決まったという報道が、6月下旬にあった。どこかの電話番号サービスの名前みたいだが、これは新たな番号を個人や法人に割り当て、年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務の6分野で使われる予定の管理番号の事。秋以降、国会に法律が提出されて、成立すれば2014年には個人や法人に番号が割り当てられ、2015年にも利用が開始される予定だそうだ。 法人はまだしも個人にもれなく割り当てる番号というと、この国では古くは1980年代のグリーンカード(少額貯蓄等利用カード)や、2003年に本格導入された住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)などが思い出される。どちらも「国民背番号制」とレッテルを貼られ大きな反発が巻き起こった。グリーンカードは実施延期ののち議員立法で廃止。住基カードはセキュリティを強化し、利用
マイナンバーの「安全」を問う(6/6) 真剣な議論を尽くせ なんといっても、こんな複雑なシステムが本当に必要かということに議論が尽くされているかが疑問だ。日本の関係者は住民基本台帳の時のゴタゴタの記憶から、とにかく「ひとつの番号で各省庁のデータを統合して、ある人についての情報がすべて誰かに把握されるような名寄せは原理的にできません」というシステムにしたいのだろう。 しかし、たとえオーストリアのようなシステムにしたとしても、実は住所と名前で多くの個人は特定できる。各省庁が示し合わせて住所と名前で相互検索しデータ統合するようなシステムを走らせれば完全ではなくてもデータの統合は可能だ。それがありえないという保障になるのは、技術でなく各省庁が法律を破らないという制度面の縛りだけだ。 行政サービスを向上しながら公務員を減らすためには、さらなる電子政府化と省庁間データ連携を実現するしかない。しか
悪の中の、よりましな悪の選択(1/5) 「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきたあらゆる政治形態を除けば」 これはウインストン・チャーチルの言葉として知られています。要するに、民主主義はそれさえあれば全てがうまくいくなどという立派な代物ではなく、衆愚政治にもなりかねないし、物事を決めるまでに時間のかかる効率の悪い政治システムかもしれないけれど、さし当たってこれに代わるものが見当たらないという意味でしょう。 民主主義思想の底には、ある種の諦観があるようです。人間は神様ではないのだから、困ったこともするし、悪いこともする。自分のことばかり考えて権力を乱用することもある。だから、いろいろな制度を設けておき、権力者をチェックする。いわば、民主政治は人間性悪説の上に成り立っているのかもしれません。 ところが、東洋の思想は…
「想定」がおかしい(1/3) 6月22日の朝日新聞夕刊「窓」にとても面白い記事が載っている。 『「原や野や道はすべて青海原となり……溺死(できし)者は千人……」 日本三代実録にこう記され、今回の津波との関連で注目される貞観津波(869年)の痕跡が、地質学的な調査で初めて確認されたのは1990年のことだ。仙台平野は内陸3~4キロまで浸水、実録の記述もほぼ事実らしいとわかった。 論文発表したのは宮城県女川町にある東北電力女川原子力発電所建設所のチームである。その一人、千釜章(ちがまあきら)企画部副部長によれば、女川原発2号機の設置許可申請のための調査の一環だった。 1970年、同1号機の申請の際は歴史的な文献の調査により、想定される津波の高さは3メートルとした。その後、古地震の調査技術が進んできたので、掘削して貞観津波の痕跡を探すなどの調査や研究を行った、という。その結果、想定される津
双葉病院 院長が語った(1/6) 小欄で私は前回、福島県大熊町の双葉病院の問題を取り上げました。福島第1原発近くの同病院、系列の介護老人保健施設の入院患者、入所者が、避難中、避難後に相次いで亡くなったことについてです。掲載後、同病院の鈴木市郎院長から「疑問にお答えしたい」と連絡があり、院長や医師に直接取材できました。以下はその内容です。 ▽3月11日 地震発生時、病院の入院患者は339人で、多くは寝たきりや認知症のお年寄りだった。職員は約60人、医師は院長を含め4人いた。女性が多い事務職員は帰宅させたが、医師、看護師、作業療法士、栄養士などは病院に残り、暗闇のなかで夜を過ごした。 ▽12日 「原子炉が危ない」と、防災放送で避難指示があった。患者を町役場に避難させたがパニックとなり、町職員の要請で全員、病院に戻った。その後、救助にきたバスに、歩ける患者209人を乗せた。病院の車に薬や
情報発信はわかりやすく(1/7) 節電とピーク対策の違い 政府の東日本の電力需給対策案が13日に発表された。10日の発表予定が中部電力浜岡原子力発電所停止の影響で延期されていた。福島県広野火力発電所復旧の目処がついたためか、浜岡停止にもかかわらず内容はこれまでの案と特に大きな違いはないようだ。 7月から9月まで、平日の午前9時から午後8時まで、15%節電を行うというもの。当初の案の午前10時から午後9時までに比べて1時間早まった。昨年の消費電力ピークの日の時間帯に沿うようにしたとのこと。 しかし、夏は落雷などで送電網や変電所がやられて発生する停電も多い。発電所がなんらかの事故で停止することもある。現在動いている柏崎原子力発電所1、7号機は8月には定期点検に入る。発電余裕のない送電網は落雷などの連鎖反応で簡単に電力崩壊してしまう。 首都圏ではほとんど報道されなかったが、先に新潟で夕方
震災報道を検証する(1/7) 3月11日から一ヶ月以上が経った。東日本大震災の検証や総括する記事も目立つようになってきた。ここでは、震災自体でなくその報道の方を検証してみたい。 大震災の初の報道は翌3月12日の朝刊。異様だったのは一番厚い日経でも24ページ、他紙は20ページと新聞が皆薄かったことだ。しかし当日はそれとして、それ以降も新聞のページ数が少ない状況が続いている。これからも紙不足やインク不足が心配されているので、この状況は長期化するかもしれないということ自体が今回の震災の影響のケタ違いの大きさを語っているとも言えるだろう。 3月12日の朝刊では、すでに福島第一原子力発電所の問題が大きく報道されているがまだトップ扱いではない。それが12日の午後に1号機で水素爆発が起こり、翌13日には福島第一原子力発電所の記事が各紙とも最も大きく報じられるようになる。そして13日から突然決まった計
復興へ 財政出動でデフレ脱却を(1/4) 復興のマクロ政策議論が始まっている。もちろん、電力問題や放射線拡散の問題は緊急性が高いが、中長期的に復興政策が成功するかどうかは、マクロ経済政策も肝心な要素である。この問題は日本の喫緊の課題である財政再建と密接な関係があり、財政出動に対する慎重派と果敢派がいる。二つの意見は対照的である。 慎重派は、「今の財政を考えると、大きな追加歳出は出来ない。復興費は他の歳出を削るか増税するかしかない。日銀からの資金調達は、インフレ期待を起こし、金利上昇を招き、負債コストを増やすだけだから、止めた方がいい」という考え方。即ち、復興に向けてデフレ解消を目指すと財政を悪化させるだけだ、という見方である。 一方、果敢派は、「今こそ、財政を利用するべき。需給ギャップが大きい中、生産性が高い復興投資案件は山ほどある。民間投資が低迷する期間が長引くので、公共投資を中心と
原発事後が問う「人災」の後始末(1/4) 今度の東日本大震災では、日本は死者、行方不明者27000人以上という津波の被害に加えて、福島の原発事故というダブルパンチを受けている。津波のほうが「天災」であるのに対して、原発事故は安全設計についても、事後発生後の処置についても問題のある「人災」と言える。犠牲者の多さを考えれば、現時点では「天災」のほうがはるかに悲劇的といえるだろうが、長期にわたる経済損失という点では、「人災」のほうがより重大だということが日に日に明らかになっている。 被災者支援だけではない 昨今、議論されている東京電力の「国有化問題」も、「人災」の後始末の困難さを顕著に示す事例である。1995年の阪神・淡路大震災の場合、10兆円といわれる損害額の半分が住宅の倒壊による被害だった。この倒壊した住宅の再建について、国が支援するべきかどうかという問題は、当時の大きな争点だった。台風
IBMのワトソン君――「スパコン、クイズ王に勝利」の意義(1/4) 先週、IBMのスーパーコンピューター「ワトソン」が米国のクイズ番組(注1)で人間のチャンピオンに勝ったと大きく報じられた。知識を問うクイズで人間が電子の速度の機械にかなうわけはないという人もいれば、人間が負けたことにがっかりする人もいるようだ。これにはいったいどのような意義があるのか、どう受けとめたらよいのか考えてみよう。 ○米国メディアは大騒ぎ このニュースはわが国でも各紙とも結構大きく扱っている。2月17日の夕刊で日経は「コンピューター、『クイズ対決』で人間に圧勝」、朝日は「スパコン、クイズ王に圧勝 米国の人気番組」、読売は「スパコン、クイズ王破る IBM製『ワトソン』、知識100万冊分」。朝日はプレス向けの模擬試合を取材して2月11日の科学面で取り上げており、これは「スパコン、クイズ王に挑む」で読める。 日本で
イスラム圏の「民主化」はむずかしい(1/3) ムバラク独裁が大衆行動で崩壊し、エジプトは民主化に向かって動きはじめた。しかしその「民主化」は「イスラム化」になってしまうのではないか。そんな懸念があちこちでささやかれている。 その懸念には、実は先例がある。1991年のアルジェリアだ。 ○アルジェリア自由選挙の結果 フランスからの独立闘争をになったFLN(アルジェリア民族解放戦線)は一党独裁制を敷き、短期間で腐敗した。大衆の批判をかわせなくなり、91年12月、初の複数政党制による総選挙が行われた。無制限の自由選挙だった。その結果、第1回投票でFLNは惨敗し、イスラム建国をとなえるFIS(イスラム救国戦線)が8割以上の議席を獲得してしまった。 政権の座を確実にしたFISは、イスラム主義のスローガンを次々に打ち出した。 「議会と憲法は停止する」「すべてはコーランにもとづいておこなわれる」
中東革命をなぜ手放しで喜べないか(1/2) 名著、「アメリカのデモクラシー」を著した19世紀のフランスの社会思想家、アレクシス・ド・トックヴィルは民主主義の支持者だったが、同時に民主化された国の先行きに不安を抱く、「ガーデド・オプティミスト(慎重な楽観主義者)」であった。 ○トックヴィルの洞察 貴族が政治を支配する君主制の下では、社会はいくつもの階層に分断されるが、個々の階層内での団結は強い。そのため国は「利益集団」の連合体という形態を取り、その集団の抵抗があるため、国全体を君主の意思で自在に動かすことは困難で、君主制が「独裁政治」に転化することは稀である。これに対して、国民の間の身分の差を認めない民主主義の下では階層に基づく利益集団が消滅し、誰もが一個人にしか過ぎない。しかるに、巨大な社会の中での個人の力は僅かだから、国民は「個人」として行動する場合には微弱である。そのため国家、社会の
大相撲八百長:担当記者の「言い分」は?(1/3) 「八百長」という言葉は、もともと相撲に由来する。 〈明治時代に相撲の世界から出たことば〉と「語源辞典」(講談社)にある。〈八百屋の長兵衛、通称「八百長」は相撲の年寄伊勢海五太夫の碁仲間で、碁の実力は長兵衛の方が上だった。しかし商売上の打算から、時にはわざと負けてうまく勝敗を調整していた。のちにそれが露見し、相撲の世界ではわざと負けることを「八百長」と言うようになったという〉 「日本国語大辞典」(小学館)には、「八百長」の項の次に「八百長相撲」という項目が並んでいるほどだ。 「相撲は日本の国技」というのは、これも明治の小説家、江見水蔭の発案による。 明治42年、東京・両国に相撲の常設館がつくられた。それに先だって「初興業御披露」と題する趣意書が「大角力協会・年寄力士行司一同」の名前で発表された。筆者は、自宅に土俵をこしらえ文士相撲を催
昨年と過去10年の科学10大ニュース(1/3) 私のコラムでは、各紙の科学面に載った記事を話題に扱おうと心がけている。しかし、前々回は「各自の専門分野の2011年の注目点や展望」というお題があり、コンピュータ界のこれからの注目点ということで「Linuxの2011年問題」などを取り上げた。前回は、お屠蘇気分で「ワイン」の話。ということで時間が空いて2月になってしまったが、科学に関する2010年末のまとめや2011年の展望を各紙がどう扱っているか見てみよう。 どの新聞でも年末には恒例で『10大ニュース』や『重大ニュース』を掲載するが、あらたにすに参加している新聞で『科学の10大ニュース』を掲載したのは朝日だけ。日経と読売は扱っていないようだ(読売は年が明けてから『2011年の科学界の予定』を紹介している)。あらたにす3紙以外では毎日と産経が、順位をつけずに『科学の重要ニュース』を挙げている。
2年半の日経・朝日・読売(1/3) 2年半にわたって本欄に書いてきたが、今回が最後の私の担当だ。 「あらたにす」が2008年1月に誕生したとき、雑誌の原稿で取りあげた。好意的な原稿でなかったと思っていたが、読み返してみたら、サイトの名前が古めかしいし、そもそも覚えにくい。先行き明るくない、と辛辣なことを書いていた。 そんな原稿を書いた私に本欄の依頼が来たときには、正直なところ、かなり驚いた。 じつを言えばそのころ、ニュース記事との接触をネット中心にして具体的にどのようなメリット、デメリットがあるかを確かめてみようと思い始めていた。 しかし、本欄の依頼を受け、とりあえず新聞をじっくり読んでみるかという気になった。 この2年半3紙を隅々までとは言えないにしても、ともかく全ページめくって目を通した。かつてなく熱心に新聞を読むことになったわけだ。 そうやって3紙とかなりじっくりと付き合
ワインから見る新聞の未来(1/3) 新聞本紙でなく新聞ウエブサイトのワインに関するコラムやニュースが興味深い。読売のヨミウリ・オンラインでの『ドリンク&ワイン』のページの充実は素晴らしい。毎日のように更新される『ワイン・ニュース』やワイン・ジャーナリストの山本昭彦氏による『ワイン漬けDIARY』。朝日のasahi.comでは亜樹直氏(姉弟)の『「神の雫」作者のノムリエ日記』の連載が続いている。ところが、これらのワインの記事は、新聞本紙には掲載されていない。紙の新聞しか読んでいないなら、紙面すべてに目を通すような愛読者でも知らないだろう。 これが日本におけるワインの地位(?)かもしれないが、New York Timesだと今、水曜日の本紙にダイニング面が設けられ、そこでワイン評論家のEric Asimovが月数回ワインに関する記事を書いている。SF作家の故アイザック・アシモフの甥だという。
「正義」が経済の起爆剤になるか(1/3) 格差問題が議論の中心になって久しい。だが、今の格差議論は変わり始めている。「格差縮小を目標とする政策が雇用を破壊する」という現象が指摘され、格差問題を改めて考える必要が生じている。金融危機が終わったとしても、世界経済が徐々に改善をしている中、日本の雇用はまだ暗闇の中である。「貧困だが皆、平等」では社会は成り立たない。再配分を強調したとしても、再配分する所得がなければどうにもならないと理解できよう。 ○米国でも格差論議 格差社会の本拠地と思われる米国でさえ、格差と社会が再検討され始めている。イェール大学のJacob S. Hacker教授とカリフォルニア大学バークレー校のPaul Pierson教授の共著「Winner-Take-All Politics」(勝者独り勝ちの政治)がこの議論を鋭くリードしている。不平等社会の原因は、「技術の進歩、グロ
性描写規制と表現の自由(1/3) 2010年、わが属する出版およびメディアの世界にはいいことはなかった。毎年毎年、自分の本の出版部数も減っていくばかりである。読者から「いつも図書館で読んでいます」というファンレターが来ると苦笑してしまう。 それは仕方がないとしても、立派な社屋をもち、社員には高給をはらっているような大出版社でも著者に対し原稿料や印税率を下げてきたりするのは死活問題だ。最近、インタビュー取材を受ける場合、写真をメールで送ってくれと言われることが多い。これは写真家のしごとがより少なくなっていることを示す。校正、デザイン、イラストなど出版や新聞の周辺で働く人々、嘱託、アルバイトの人々の暮らしも厳しくなっているだろう。会社を守ろうと必死のあまり、外部のフリーの人々を切り捨てていくようなやりかたでは士気は萎え、いっしょにいいものを作っていく気持ちにはなりにくいであろう。同一労働、同
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