「長野東高校に、玉城さんっていう名指導者が来たみたいだよ――」 今からちょうど20年前の2005年のこと。中学3年生だった小田切亜希は、同じく陸上競技に打ち込んでいた4歳上の姉から、そんな話を聞かされていた。15歳の少女は、初めて耳にするその指導者の名前をふんふんと聞いていた。 「玉城先生」とは現在、日体大の駅伝監督を務める玉城良二のことである。 ADVERTISEMENT 当時、玉城は長野県で公立校の体育教諭を務めていた。 1989年から1999年まで諏訪実業高を率いて、都大路に10度出場。一方で、その後は公立校の教員にはつきものである人事異動を受け、他校で2年、県の教育委員会で3年間勤務した。県教委での主な担当は、スポーツ振興や競技力の強化。県下のスポーツ全体を見る立場となり、陸上競技の指導からは離れていた。当時はそこから長野東に赴任したばかりで、中学生だった小田切がその実績を知らない