「アイヌがまなざす」 [著]石原真衣、村上靖彦/「家族、この不条理な脚本」 [著]キム・ジヘ マジョリティはマイノリティが直面する困難に気づけない。自戒を込めていうと、学ぼうとしなければ、意図せずして差別を助長するかもしれない。目が覚めるような読書体験をもたらす2冊を届けたい。 『アイヌがまなざす』は、多数派日本人である和人によって一方的に表象されてきたアイヌ自身が、和人をまなざし返す秀逸の書だ。インタビューを基に、遺骨返還運動、アイヌ女性への差別、学術界にみられる問題を軸に論じていく。 著者の1人、北海道大アイヌ・先住民研究センターの石原真衣氏は、日本人フェミニストは日本人のことしか考えてこなかったのではないか、と問いを投げかける。 北米では、白人女性は黒人女性からの批判を受容しつつ、フェミニズムが発展してきた。一方、日本ではジェンダー論の教科書にアイヌや沖縄、在日を取り巻く植民地主義を