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インタビュー
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「いかなる者も大統領職に2回を超えて選出されてはならない」──米合衆国憲法修正22条にはそう明記されている。 米国大統領は2期8年以上を務めてはいけないと、憲法で明確に禁じているのだ。 だがドナルド・トランプ大統領は「3期目」に意欲を見せ、それを実現するための複数の計画がすでに動きだしていると示唆した。 バンス副大統領を利用するシナリオとは トランプは3月30日、米「NBC」ニュースの電話インタビューで、「多くの人が私にそれを望んでいる」と述べ、3期目を狙う可能性を否定しなかった。 憲法で禁止されていることを踏まえ、それを実現させるための具体的な計画はあるのかと、NBCのキャスターが質問すると、トランプは「方法はいくつもある」と答えた。 さらにキャスターが、2028年の大統領選でJ・D・バンス副大統領を当選させ、「バトンをもらうことか」と詰め寄ると、トランプは「それも一つの手だが、ほかにも
過去の自分へ「あきらめないで」 人口150人ほどが住むその日本の離島には郵便局が2つある。ひとつは普通の郵便局だが、もうひとつはこの30年あまり郵便局としての働きはしていない。 そこは「漂流郵便局」と呼ばれ、日本全国から寄せられる届け先のない手紙やハガキなど6万通以上を保管している。宛先は行方がわからなくなった友人やペット、過去や未来の自分、そして最も多いのが亡くなった人だ。 瀬戸内海に浮かぶ粟島(香川県三豊市)にある漂流郵便局は、ほかに行き場のない悲しみや希望、恋しい思いを届ける場所だ。そうした気持ちを言葉に綴ることで安らぎを得られるし、宛先が故人の場合は、この世とあの世をつなぐ役割も果たしてくれる。
【今回のお悩み】 「誰も自分のことを知っている人がいない新しい環境で、新しい自分になろうとするのに、すぐにいつもの自分になってしまいます。どうしたら、自分の行動(発言)を変えることができますか?」 入学・入社など、新しい生活が始まる4月。新しい環境に飛び込むのはちょっと緊張するけれど、「新しい自分」になって対人関係を一から築くチャンスでもあります。ところが、最初は張り切ってみるものの、時間が少し経つと結局いつもの自分に戻っている。どうしたら、自分を変えることができるのでしょうか? アドラー心理学に詳しい岸見一郎先生に聞いてみました。 入学や入社など新しい環境に入ることを不安に感じる人は多いでしょう。部署の移動、転勤なども、仕事が変わるだけでなく、新しい対人関係を築く必要があると思うと不安にならずにはいられません。 とはいえ、誰もが不安になるわけではありません。むしろ、新しい環境に期待を抱い
戦争の傷跡がいまなお残る沖縄では、米軍基地の負担軽減に向けて長年取り組み続けている。戦争を経験した世代は断固として米軍の撤退を求めているが、その一方で若年層は中国に対する脅威や経済的な事情から、米軍を「守ってくれる存在」とみなしているようだ。分断する沖縄の現状を米「ニューヨーク・タイムズ」紙が報じた。 糸数慶子(77)は1965年、米軍のパラシュートが開かなかったあの日のことをいまも忘れない。パラシュートは、沖縄の糸数家の近くで降下訓練中の落下傘部隊とともに輸送機から落とされた、ジープトレーラーに取り付けられていた。糸数本人は、落下するトレーラーの直撃を免れたものの、近所に住む当時小学5年の女子児童が犠牲になった。 事故当時、高校生だった糸数はこの事故が起きるまで、自分の住む亜熱帯の島に駐留する米軍がいかに巨大な存在なのかを意識していなかった。米国が第二次世界大戦終結後に日本から沖縄を奪取
BYDは完全勝利なのか? テスラのライバルであり、ウォーレン・バフェットが支援する中国のBYDが、世界の自動車業界を揺るがした。BYDは新たな充電システム「スーパーEプラットフォーム」を発表。わずか5分間充電するだけで、400キロメートルの走行が可能になるという。 この発表により、BYDはEV業界におけるバッテリー開発競争の最前線に躍り出た。ガソリン車と同時間で充電を完了できるEVバッテリーの開発は、業界全体の課題となっていた。 これに先駆けて、数週間前、BYDは廉価版を含む大部分のモデルで、自動運転「レベル2+」相当の先進運転支援システム(ADAS)を標準搭載すると発表し、業界を驚かせたばかり。EVの開発競争で、BYDは完全勝利を宣言したと言えるのだろうか。 BYDの新技術とは? BYDが発表した新しいプラットフォームは1000キロワットの充電出力を持ち、最大1000アンペアに対応。これ
研究開発を重要視する人が少ないのは、それなりの理由があるからだ。2006年から2011年にかけて、電気自動車やバイオ燃料をはじめとする新しい気候テクノロジーへの資金提供が試みられたものの、期待外れに終わった。金融危機の影響を受けたベンチャーキャピタルは、その5年間でクリーンテックに投資した250億ドルの半分以上を失った。 ゲイツのチームが事後分析を行った結果、原因はテクノロジーの規模拡大を図れなかったからではなく、クリーンテック企業が採用したシリコンバレーのインターネット関連スタートアップの資金調達モデルが、この新しい分野には適していなかったからだとわかった。 フェイスブックやTwitter(X)のように短期間で市場に投入され、その後改良が加えられるテクノロジーとは異なり、気候変動関連のスタートアップが開発するテクノロジーは、商業利用できるところまで成熟するのに多くの時間を必要とする。 し
デンマークの国営郵便サービス「ポストノルド」が、2025年3月6日、手紙の配達の廃止を発表した。 米「AP通信」によると、ポストノルドは2025年いっぱいで手紙の配達サービスを廃止し、小包の配達に専念するという。デンマーク全土にある約1500の郵便ポストも年内に撤去され、手元の切手は払い戻しに応じる。 デンマーク紙「ポリティケン」は、「かつて、住民と郵便配達員はファーストネームで呼び合う親しい間柄だった。おしゃべりをしたり、ときにはキッチンで一緒にコーヒーを飲んだりすることもあった」と懐かしみながらも、「この展開は自然なことだと言える」と伝える。
「安楽死」「尊厳死」とも呼ばれてきた医療介助死が認められているカナダ。そのなかでも、世界に類を見ないペースで実施件数が増加しているのがケベック州だ。医療介助死をめぐる新法が採択されたばかりのケベックではいま何が起きているのか。英誌「エコノミスト」が現地を取材した。 サンドラ・デモンツィニーは、筋骨たくましかった父が若年性アルツハイマー病のせいで、ボロボロの抜け殻に様変わりするを目の当たりにした。 ひとたび病に冒されると、父はエネルギーを制御できず、歩いて壁にぶつかったり、あてどなく床を這いずり回ったりするばかりだった。父は53歳で亡くなった。死に顔には苛立ちの涙のすじができていた。 デモンツィニーは39歳のとき、父と同じ致死的な神経変性の病にかかっていると診断された。だが、父と同じ尊厳を奪われた死に方には甘んじまいと誓った。 そんな死に方はしないとわかって、いまは安心している。カナダのケベ
韓国政府は3月26日、数十年前に子供たちを欧米の家庭に養子に出す際、韓国の養子縁組あっせん業者内で、書類改ざんなどの違法行為が横行していたことを初めて認めた。これらの不正は、子供たちを引き取ってもらいやすくするためだったという。 韓国の政府機関である「真実と和解委員会」は、子供たちが数十年前、利益追求のために「荷物のごとく」運び出されたと報告した。今回の報告結果は、海外に送られた韓国人の養子たちにとって苦労の末に獲得した勝利だ。 多くの養子が近年、出生国に戻り、韓国がその現代史上で最も恥ずべき負の遺産のひとつと折り合いをつけるよう、辛抱強く活動を続けてきた。 養子縁組あっせん業者は、赤ん坊の親たちを知っていたにもかかわらず、書類を改ざんして孤児として提示していたと委員会は認めた。赤ん坊が海外に送られる前に死亡すると、別の赤ん坊が死亡した赤ん坊の名前で送られたこともあった。
ChatGPTは全世界で約4億人のアクティブユーザーを持ち、個人的な相談や対話目的で利用する人は、日ごとに増加している。 いったいチャットボットは人々の幸福にどのような影響を与えるのか? これについてOpenAIとマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボが実施した新しい研究が注目を集めている。 同研究では、チャットボットの使用頻度や時間と孤独感の深まりに相関関係があることなどが明らかになった。それについて米誌「フォーチュン」や「ビジネス・インサイダー」などが報じている。 一部の研究ではチャットボットとの対話が孤独の軽減に役立つ可能性が示唆されているが、同研究では「全体的に、毎日の使用頻度や時間が長いほど、孤独感、依存心、問題のある利用が増加する傾向」がみられた。
少年の凶悪犯罪を描く社会派作品 3月13日からネットフリックスで配信されている、ドラマ『アドレセンス』が話題だ。ネットフリックスの英語作品における全世界ランキング(3月10日~3月16日)では初登場1位を獲得し、批評家からの評価も高い。海外ではこの作品がきっかけとなり、子供のSNS利用制限に関する議論が改めて注目されている。 『アドレセンス』(直訳すると「思春期」)の題材となるのは、10代の殺人事件。同じ学校に通う女子生徒を殺害したとして、13歳の少年が逮捕されるところから物語がはじまる。子供たちがSNS社会に浸り、過激な思想に傾倒する危険性を訴える作品だ。 この作品が焦点を当てる問題として、ネット上の女性嫌悪(ミソジニー)やインセル文化があると、英紙「インディペンデント」は伝えている。 インセルとは、異性との交際経験を持てないことを理由に女性を敵視するネット上の男性グループ。欧州では、イ
世界最低レベルの韓国の出生率が9年ぶりに回復した。政府のさまざまな少子化対策に注目する向きもあるが、現地取材で見えてきたのは決して楽観視できない実情だ。 2024年12月に尹錫悦大統領が非常戒厳を一時宣言したことによる政治的な混乱が続く韓国で、2025年2月にある統計結果が発表された。 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率が2024年は0.75となり、過去最低だった23年の0.72から微増したのだ。 出生率が増加に転じたのは9年ぶりで、背景には人口構成で30代前半が増えたことや、新型コロナウイルス禍による結婚や出産控えが緩和したことがあるのではないか、とされている。 世界でも類を見ないスピードで進む韓国の少子化は、専門家の間で「戦争や災害時のさなかにあるような状態」「危機的水準」と指摘される状態になっていた。今回、わずかながらも増加に転じたことで、少子化にブレーキがかか
「国家にたかる人たちをなんとかするべき」 ──あなたは公務員を3万5000人以上削減しましたが、街頭で大きな混乱は起きませんでした。どうしてそんなことができたのですか。 それに関しては治安大臣のパトリシア・ブルリッチに負うところが大きいです。かつては毎年、9000件の道路封鎖がありました(註:幹線道路を封鎖して、生活条件の改善を求めるピケテロスと呼ばれる道路封鎖運動のこと)。いまはそれがゼロです。 誰も彼もが大混乱になると言っていたのですが、アルゼンチンはなんとか持ちこたえられました。 ──フランスの政治家は、歳出削減ができず、そのせいで財政赤字の解消策がつねに増税になってしまいます。財政赤字が増税を招くこの悪循環から抜け出すためのアドバイスはありますか。 フランスが歳出の大幅削減に取り組むことなく、増税をしようとしていることに私は黙っていられません。 なぜそんなことになるのか。それはみん
ハビエル・ミレイは異色の大統領である。取材を申し込むと、本人から直接、音声メッセージとともにサムズアップする本人の絵文字が送られてきた。ミレイは、ドナルド・トランプが米大統領選で勝利した後、最初に面会した外国の国家元首だ。イーロン・マスクとも頻繁に意見交換をしているという。 いまや経済再建や官僚制打破の分野で一大スターとなっているのだから、そこには何の不思議もないだろう。トランプはミレイを気に入ったようで、次のように評している。 「短期間で見事な仕事をやってのけている。『アルゼンチンを再び偉大な国にする』は、いい調子で進んでいるな」 かつてミレイを不出来な学生のように扱っていた国際通貨基金(IMF)ですら、いまは手のひらを返したかのように彼を褒めたたえているのだから、まったくもって滑稽な話だ。 「緊縮財政計画を掲げて選挙運動をして、その計画をそっくりそのまま実行した政治家が、ほかに誰か思い
二つの世界に挟まれた「亡霊」 100年前に降霊会がおこなわれた部屋で、私は佇んでいた。建物には電気が通っておらず、窓の鎧戸も閉ざされている。 雨降る10月の夕暮れ時、薄明かりのなかでも、剥がれかけた緑の壁紙や、天井から崩れ落ちつつある装飾が見えた。四方の壁には空っぽの棚が並び、整然と貼られたラベルだけが、かつての収蔵品を偲ばせている。 書斎には他に何もない。窓際の隅は、床板の色が周囲より少し明るくなっている。そこにかつて机が置かれていたのだろう。 100年前、その机に向かって座る少女の周りに、不安げな見物人たちが集まっていた。彼女は死者と交信する力を持つという霊媒師だ。 その夜、少女は特別な任務を担っていた。フランス屈指の著名な天文学者で、熱心なオカルト研究者でもあった、カミーユ・フラマリオンの霊との交信である。生涯をかけて幽霊の真相を探し求めたフラマリオンはいまや、人々が求める霊となって
米国が3月15日にイエメンの親イラン武装組織フーシ派を攻撃する直前に、その計画が米一般誌「アトランティック」の編集長にも誤って共有されていた──。 お粗末すぎるこの事件の詳細を編集長ジェフリー・ゴールドバーグ自らがスクープ記事として3月24日、同誌に掲載し、世界中に波紋が広がっている。 ゴールドバーグは、フーシ派への攻撃が始まる2時間前に、ピート・ヘグセス国防長官からこの攻撃計画についてメッセージを受け取っていたと書いている。その計画には、武器一式、標的、タイミングといった正確な情報が含まれていた。 しかしなぜゴールドバーグは、国防長官からそんな重要な情報を受け取ることになったのか。 3月11日、ゴールドバーグは、セキュリティレベルが高いことで知られるメッセージアプリ「シグナル」上で、マイケル・ウォルツという名のユーザーからつながりリクエストを受けた。 そのマイケル・ウォルツなる人物は、ド
イーロン・マスクの娘であるヴィヴィアン・ウィルソン(20)が、米誌「ティーン・ヴォーグ」のロングインタビューに応じて話題になっている。 記事は3月20日にオンラインで公開された。ウィルソンは現在、日本に留学中であり、滞在先の東京からZoomでインタビューに答えた。一緒に掲載された彼女の写真も東京で撮影されたものだ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」によれば、ティーン・ヴォーグの編集長は2024年秋の米大統領選の頃からウィルソンに注目しはじめ、インタビューは数ヵ月にわたり複数回に分けておこなわれたという。 「私は(Xではなく)スレッズの女王」 ウィルソンはさまざまなトピックについて語っている。ソーシャルメディアについては「私はスレッズの女王よ」(スレッズはよくXと対比されるSNSだ)と言い、家族については「実のところ、兄弟姉妹が何人いるか把握できていない」と話している(マスクは子だくさんで知ら
トヨタのウーブン・シティがついに今秋以降に動きはじめる。世界のEV市場が減速するなか、2024年も世界販売台数首位を守ったトヨタだが、ウーブン・シティや水素戦略をはじめとする脱炭素戦略の本意はどこにあるのか。トヨタ自動車の大塚友美CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)に話を聞いた。 ──ウーブン・シティの実証が秋以降にはじまります。トヨタがウーブン・シティを通して成し遂げたいことはどんなことでしょうか。また、優先事項の一つに掲げるサステナビリティとの関わりについても教えてください。 ウーブン・シティは「モビリティのためのテストコース」です。ヒト、モノ、情報、エネルギーのモビリティに関する課題の解決策など、世の中のサステナビリティに資する技術やサービスの開発をするといった新しい価値を創出できる場所にしていこうと思っています。 たとえば、水素については現在、モータースポーツの現場で水素
世界の機運に乗って 3月、韓国の防衛産業業界幹部と政府関係者の一団が、カナダの首都オタワを訪れた。カナダ軍向けに、榴弾砲やロケットランチャー、潜水艦を売り込むためだ。 世界的な再軍備ラッシュに乗じている東アジアの国は、韓国だけではない。日本の軍需企業にも熱心な買い手が集まっている。 日本と韓国は現在、防衛産業が最も急速に成長している国だ。両国の防衛関連企業の売上高は合計で630億ドルにのぼり、2022年から25%増加しているほか、欧州のそれを上回ってもいる。米国の大手兵器メーカーの売上高は合わせて2000億ドルを超えており、依然として他国を大きく上回ってはいるが、2022年以降の成長率は15%にとどまる。 日本と韓国の防衛産業が好調な理由のひとつは、長らく兵器の純輸入国であった両国の政府が、自国の領土を守るために米軍に頼るのではなく、国産の兵器を増やしたいと考えるようになったことだ。日本3
喜びも苦労も分かちあい支えあうと、結婚式で誓った。だけど思うように体が動かなくなったいま、妻を苦労させるくらいなら手を離すべきか──新型コロナによる深刻な後遺症に苦しみながら、筆者は思い悩む。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 元に戻らない体 「病めるときも健やかなるときも」という言い回しはロマンチックな響きを持つ。しかし、慢性疾患のある場合、話は変わってくる。 窓辺でアイスクリームトラックが来るのを待っていた。それ自体何の変哲もないことだが、僕は裸で、それは午前4時のことだった。 「あなた、何してるの?」。夜明け前のもやのなか、妻のローレンがそう尋ねた。「いや、何かが聞こえた気がして」と言ってベッドに戻る。いまはまだ幻覚を見たと認めるタイミングではないと考えなが
筆者は子供のころ、自分が通っていた学校にジョン・レノンが来たことを憶えている。だが、それは正確にはいつだったのか? 1970年代のこの出来事を記録する資料はほとんど残っておらず、筆者は独自に調査を進める。その日レノンに同行していたメイ・パンもこの件に興味を示し、それが彼女たちにとって重要な1日であったことが明らかとなる──。 ジョン・レノンがやってきた! 1970年代半ばのある朝、フレンズ・セミナリーの校内放送で厳かなアナウンスが流れた。「著名なジョン・レノンさんが礼拝堂にお見えになっています。走らず、歩いて移動してください」 私たちは走らなかった。でも、走りたくてたまらなかった。 ようやく礼拝堂に到着すると、私は2年生のクラスメイトと一緒に、バルコニーの固い木製の長椅子に腰を下ろした。 マンハッタンの東16丁目にあるキリスト教クエーカー系の学校であるフレンズ・セミナリーの礼拝堂は、186
「暖かいコートに身を包み、毛糸の帽子をかぶった数百人が寒さにも負けず行列を作っている。彼らは有名人を見に来たわけでも、展覧会に来たわけでもない。彼らが求めているもの、それは日本のビザなのだ」 2025年3月20日、「ロイター通信」はビザを求めて在ロシア日本大使館の前に並ぶ人々の様子をそう伝えながら、日本を旅先として選ぶロシア人の大幅な増加を報じた。ヨーロッパ諸国とロシアとの緊張が高まるなか、ロシア人たちは新たな旅先を開拓している。 ロシア観光産業連合のドミトリー・ゴリン副会長は、「日本で休暇を過ごすロシア人の数は、2024年の10万人から今年は倍増するだろう」とロイターの取材に語る。その最大の理由として、「複雑なビザ手続きがなく、手頃な価格のフライトがあることだ」と説明する。 日本は現在、ロシア人観光客に対して無料のビザを発行しているほか、日本滞在中のホテル代の支払いを証明する書類の事前提
妹を偲び、未来を育むために クリスティナ・ウルマー(42)の妹、ケイティはウェイトレスだった。2014年10月、仕事を終えて数時間後に、彼女は交通事故で亡くなった。29歳だった。 姉のウルマーと両親はフィラデルフィア北東部の事故現場に呼ばれ、そこでケイティの財布を受け取った。中には、彼女がその日仕事で稼いだ100ドル以上のチップが入っていた。 「ケイティは本当に優しい人で、『このお金は人に親切にするために使われるべきだ』と思ったことを覚えています」とウルマーは言う。「長い間、ケイティを偲ぶためにこのお金で何ができるか考えていました」 2018年、ウルマーはある考えに落ち着いた。彼女はペンシルバニア州の高校で英語教師をしており、当時は未来のディストピアを描いたレイ・ブラッドベリの小説『華氏451度』を授業で教えていた。 「この作品は、(読書を禁じられた)人々がスクリーンに釘付けになり、共感力
ロシアとウクライナの戦争が4年目に突入し、トランプ米大統領が停戦交渉に乗り出したが、ロシア寄りの言動が目立つ。はたして停戦は実現するのか、トランプはなぜプーチン露大統領を慕うのか、そして同盟国を見捨てる米国のやり方が日本の安保政策に与える影響とは──。ロシアの軍事戦略に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠准教授に聞いた。 ──まず3月18日の米露首脳の電話会談で合意したこと、合意できなかったことをどう評価していますか。 基本的には何も決まらなかったと理解しています。というのも、プーチンは先月まではトランプをうまく取り込んでロシア有利の停戦にもっていけると踏んでいましたが、その後にトランプ政権が方針を変えた結果、ロシアはいま停戦に応じる気はないと私は見ています。 2月12日の米露首脳の電話会談では、プーチンがトランプにかなりロシア寄りの立場を取らせることができました。あの時点でトラ
コンビニの人気商品、カツサンド。日本人にとって親しみ深いこのサンドウィッチがいま、世界で人気を集め高級レストランのメニューにも仲間入りするようになっている。とくにスペインでは、カツサンドが飛躍的な変化を遂げているようだ。 美食の世界の空模様はときに気まぐれなものだ。少し前まで、パン粉をまぶした豚肉のサンドウィッチ「カツサンド」は、コンビニの棚に隠されたお宝で、物好きな旅行者やオタクのあいだでのみ認識されていた。 それがいまや、この控えめなサンドウィッチは、世界の美食のアイコンと化し、東京の街角の屋台とミシュランの星付きレストランで、同じように存在感を放っている。白いパンと揚げたカツレツのサンドウィッチが、一体どのようにして、マドリードからニューヨークまで幅広く人々の舌を征服したのだろうか? 輝かしきカツサンドの誕生 すべては「とんかつ」から始まった。これはある意味、この「日出ずる国」が世界
4月9日(水)19:00-20:30(紀伊國屋書店新宿本店 or アーカイブ配信) 【対談】宇野常寛×大澤真幸 「人類はプラットフォーム支配から自由になれるのか?」 私たちは、XやFacebookといったプラットフォームに流れる情報やコミュニケーションに囚われ、深く影響を受ける社会に生きています。「相互承認ゲーム」に閉じ込められ、社会の分断がますます進み、陰謀論が蔓延る世の中になりつつあります。はたして、私たちはプラットフォームによる支配から脱して、豊かさを取り戻すことができるのでしょうか? そうした現代の生き方を考えるヒントとして、「庭」に注目する評論家・宇野常寛さんと、メディアと社会の関係について思考を深めてきた社会学者・大澤真幸さんが、SNS時代を生きる私たちが直面する真の問題と未来について語ります。 『庭の話』(講談社) 税込3080円 『メディア論集成』(人文書院)税込4180円
日本では金利の上昇と生活費の高騰を受け、借金を重ねて自己破産に追い込まれる人がますます増えている。特に若者が抱える負債額の増額は深刻だ。借金苦で自殺者も増える日本について、米メディアがその理由を深掘りする。 借金に苦しむ日本人 日本では、消費者ローンの負債残高がここ16年間でもっとも早いペースで増えている。世帯の負債は2023年に初めて収入を上回った。政府関係者は、超低金利に慣れた多くの人が多額のローンを抱えて苦慮するのではないかと危惧している。 日本だけが負債拡大の問題に悩んでいるわけではないとはいえ、平均賃金はG7で最低だ。それに、日銀が借入コストを引き上げる一方で、ほかの金融機関は引き下げている。 弁護士の試算よると、個人の破産件数はすでにコロナ禍以降で最高に達し、2024年は2012年以降で最高となる見込みだ。さらに悲惨なことに、多額債務が原因の自殺者数も増加している。
富裕層向けのセクシャル・ウェルネス産業が活況を呈している。62歳の英紙記者が、自らを実験台に「性欲開花」治療に乗り込んだ。 セレブたちはよく、更年期について語る。ホットフラッシュからホルモンパッチまで、プライベートな詳細をふんだんに共有してくれる。ところが、ことセックスにおいてはそうはいかない。いや、少なくともグウィネス・パルトロウがそんな流れを見事に変えるまでは、そうだった。 パルトロウが創業したライフスタイルブランド「goop(グープ)」は、Netflixの6エピソードからなるシリーズ『セックスと愛とグープ』などを通して、セックスについて語ることへの抵抗感を和らげ、「ヴァギナ用タマゴ」やバイブレーターといった言葉を日常会話に持ち込んだ。 「バイオハッカー」たちの存在も忘れてはならない。かつて、「生卵を飲むカリフォルニアの過激なボディビルダー集団」として知られていたアスリートと科学者たち
静まり返る元大統領たち 米国のドナルド・トランプ大統領が就任してからというもの、怒涛の勢いでさまざまなことが起きた。 彼は支出削減のために大勢の連邦政府職員を解雇し、他方では、イーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)に機密性の高い情報へのアクセス権を与えた。 また、出生地主義の廃止を命じ、2021年に議事堂で暴動を起こした者たちを赦免し、重要な貿易相手国に関税を課し、ウクライナ戦争ではロシア側についている。このほかにも、世界を驚かせ、混乱させた言動の数はすでに枚挙にいとまがない。 そしてこの2ヵ月弱、こうしたトランプのおこないに対して奇妙なまでに沈黙している人たちがいる。米国の元大統領たちだ。ビル・クリントンにバラク・オバマ、ジョー・バイデン、そしてジョージ・W・ブッシュも、トランプについてほとんど言及していない。 彼らはもともと黙っていたわけではない。選挙期間中、クリントンやオバマ
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