私はアルバイトを探していた。今まで接客業についていたので飲食店がいいかなと漠然と考えていた。自宅から近かったらなおよしと思った。 求人情報誌の細かい文字を眺めすぎて少し目が疲れたので散歩することにした。いつも通っている駅前への道。見慣れた寿司屋にはり紙が貼ってあった。求人だ。どんなバイトをしようかなと考えたままの頭で外に出たので、いつもは目に付かない求人はり紙に目が止まったのかもしれない。 「夕方5時~ 簡単な調理・接客。時給1,500円。まかないあり」 時給の高さと寿司屋のまかないに惹かれて迷わず応募した。 その店は、もう地元に何十年もある寿司屋だった。しょっちゅう前を通っていたのにまるで存在を感じさせないほど地域の風景に溶け込んだ、木造2階建ての古い建物だ。 中へ入ると店内は昭和の香りが漂う雰囲気で、カウンター席が10席、4人掛けのお座敷席が4席ほどのとても狭い店だった。 「お願い、絵