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今回の研究では、ボノボの群れ内における「順位」を、メスがオスとの争いに勝利した回数を数えることで測定した。その結果、たいていメスが優勢だった。(Photograph by Christian Ziegler) チンパンジーなど多くの社会性哺乳類ではオスがメスよりも優位なのが一般的なのに、なぜ近い仲間であるボノボのメスは、しばしばオスよりも優位に立てるのだろうか? 米ハーバード大学の行動生態学者であるマーティン・サーベック氏らは、この疑問の答えを求めてきた。そして、コンゴ民主共和国に生息する6つのボノボの群れを30年近く観察した結果、ある結論に達し、2025年4月24日付けで学術誌「Communications Biology」に論文を発表した。 メスのボノボは、2頭以上(通常は3〜5頭)で結束して連合を組むことで、オスがもたらす危険を減らし、自らの影響力を高めているのだ。オスはメスよりも体
南米エクアドル領のガラパゴス諸島の一つ、フェルナンディナ島近くに広がる冷たく澄んだ海。ガラパゴスペンギンが、アオウミガメやウミイグアナと一緒に泳ぐ。(PHOTOGRAPH BY TUI DE ROY, NATURE PICTURE LIBRARY) 地球上でも屈指の過酷な環境に生きるペンギンは進化の奇跡だ。科学は今、その秘密を次々に解き明かそうとしている。環境の激変にしなやかに適応するその驚異的な姿は、急速に変化する世界で生き延びる知恵を私たちに授けてくれる。 1.新しい環境に飛び込むには? ペンギンは6000万年余りも、天性の探究心にかられて生息地の開拓に挑んできた。今も思いがけない場所に姿を見せている。 生物学者のパブロ・ボルボログルが南米パタゴニア地方東岸の人里離れた土地を初めて訪れたのは2008年のこと。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでアルゼンチン出身のボルボログル
ヒッタイトの神々の行進。ヒッタイト帝国の都ハットゥシャ近郊にある、王家の霊廟と思われる建物の壁に刻まれている。現在のトルコ中部に位置したこの古代都市は、紀元前1180年頃に放棄された。今、その理由を探る研究が進んでいる。(PHOTOGRAPH BY EMIN ÖZMEN) *遺跡および遺物はトルコ文化観光省の許可を得て撮影 現在のトルコとその周辺に洗練された都市群を築いたヒッタイト帝国。あるとき歴史から姿を消し、数千年にわたって忘れ去られていた。しかし近年、新たな発見が相次ぎ、謎めいた古代帝国の伝説がよみがえろうとしている。 現在のトルコ中部に位置する険しい丘陵地帯に築かれた、ヒッタイト帝国の都ハットゥシャ。この都市を最盛期に見た人々は、深い畏敬の念を抱いたに違いない。日干しれんがの高い壁に囲まれ、7000人の人口を擁し、広大な神殿群や、数キロ先からも見える立派な石造りの城壁を備えていた。
野生化したラクダは、大きな群れで移動することも多く、脆弱な生態系にダメージを与える。この写真のラクダは、スキンケア用品の原料にするミルクを搾るために飼われている。(PHOTOGRAPH BY MATTHEW ABBOTT) オーストラリア内陸の乾燥地帯では、19世紀に持ち込まれたラクダが野生化し、増加してきた。だが干ばつが頻発する今、ラクダと人間との不幸な衝突が増えている。 オーストラリア内陸部で牧場を経営しているジャック・カーモディー。彼はこれまで、牛の給水設備の修理やフェンスの補強、“不法侵入者”の駆除など、牧場での仕事の様子をユーチューブに投稿し、多くのフォロワーを獲得してきた。牧場には、野生化した馬やロバのほか、とりわけ破壊力の大きい侵略的外来種、ラクダが侵入してくる。 19世紀の植民者によって、広大な内陸部を調査する際の足として連れてこられたラクダは、今では内陸の乾燥地帯に大混乱
新たに報告された「ボーン・コレクター」のイモムシは、体の周りに吐糸で携帯巣を作り、クモの巣から拾い集めた昆虫の死骸のパーツで飾り立てている。この個体は少々飾りすぎたかもしれない。甲虫の翅のような大きなパーツは残っているが、一部は落ちてしまっている。パーツが大きすぎると、携帯巣が蜘蛛の巣に引っかかってしまうこともある。(Photograph By Dr. Daniel Rubinoff) 昆虫の死骸を集める「ボーン・コレクター」のイモムシが発見された。昆虫の死骸から取ったパーツで「携帯巣」を飾るガの幼虫だ。肉食の彼らはクモの巣に掛かった餌を横取りし、不気味な巣のおかげでクモに気づかれずにクモのそばで暮らせると考えられている。この新種の肉食イモムシと不思議な行動についての論文は学術誌「サイエンス」に4月24日付けで発表された。 イモムシの大きさは体長1センチほど。よく見ると、アリの頭部、ハエの
1億年以上前、恐竜の足元をはい回っていたであろう「地獄アリ」。ブラジルで見つかった新たな化石は、知られている限り最古のアリの化石であることがわかった。(PHOTOGRAPH BY ANDERSON LEPCO) 現在わかっている最古のアリの化石が見つかり、4月24日付けで学術誌「Current Biology」に論文が掲載された。このアリには、前方に突き出た鎌のようなあごがついている。狩りに使われたもののようだ。 発見された標本は、約1億1300万年前の長さ約1.4センチの印象化石(生物の形が堆積岩に残ったもの)だ。ブラジル北東部の石灰岩の中から見つかり、「地獄アリ」という意味のHaidomyrmecinae亜科の新しい属に分類されている。地獄アリが生きていたのは、6600万年前に終わった時代である白亜紀だけだ。 現在のアリは、地球上でも特に数の多い動物だ。南極以外の全大陸で1万7000種
アオザメに乗るタコ。ニュージーランド沖で撮影。(VIDEO: UNIVERSITY OF AUCKLAND) 自然の中で長く過ごしていると、奇妙な光景を目にすることもある。サケを帽子のようにかぶるシャチや、ウォンバットの立方体のふんなどだ。しかし、ロシェル・コンスタンティン氏がニュージーランドのハウラキ湾で調査船に乗っていたとき、これは新たな発見だと確信する出来事があった。目の前を猛スピードで通過した体長約2.75メートルのアオザメの頭に、巨大なオレンジ色のタコがくっ付いていたのだ。 「まさに幸運な一日でした」と、ニュージーランド、オークランド大学の海洋生態学者であるコンスタンティン氏は振り返る。 サメとタコは同じ海の動物だと思うかもしれないが、氏によれば、両者の生息環境は全く異なる。例えば、アオザメはほとんどの時間を海の中層部で過ごすが、この海域にすむマオリタコは生まれてから死ぬまでほぼ
デイノスクスは巨大なワニで、白亜紀後期、湿地の頂点捕食者だった。復元図は、現在の米国ユタ州にある岩石層から発見されたDeinosuchus hatcheri。ハドロサウルスの一種Rhinorex condrupusにかみ付いている。(ILLUSTRATION BY JULIUS T CSOTONYI / SCIENCE PHOTO LIBRARY) 約7500万年前、北米で最も大きくて恐ろしい肉食動物は、恐竜ではなくワニだった。ラテン語で「恐ろしいワニ」を意味するデイノスクスは体長10メートル、体重5トンに達することもあった。骨の化石に残されたかみ跡から、恐竜を捕食していたことは明白だが、デイノスクスがなぜこれほど大きくなり、捕食者として広く君臨したかは謎だった。(参考記事:「恐竜を襲う巨大な古代ワニの生態」) 2025年4月23日付けで学術誌「Communications Biology
2022年のノーベル賞受賞に象徴されるように、いま古代のヒトのDNAの研究が盛んに行われており、新しい事実が次々と明らかになっている。そこで、古代の日本列島に住んでいた人たちについて知りたくて、2025年春に国立科学博物館で開かれている特別展「古代DNA―日本人のきた道―」の監修者である神澤秀明さんの研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)
教皇フランシスコの横顔。(Photograph by Stefano dal Pozzolo, Contrasto) 2013年3月の就任以来、世界中のカトリック教徒を導いてきたローマ教皇フランシスコ(88歳)が、4月21日、バチカンで死去した。彼の教皇選出は「初」づくしだった。南米の出身者として初、ヨーロッパ以外の生まれとしても過去1200年で初、そしてイエズス会の出身者としても初めての教皇だった。 就任後もさまざまな分野で新たな道を切り開き、バチカンに大きな変化をもたらした。教会指導部のエリート層と一般信徒との間に広がりつつあった深い溝に橋を架けることに注力し、長年受け継がれてきたカトリックの伝統や習慣に新風を吹き込んだ。 ブエノスアイレスでの小学校時代。3列目の左から4人目が、のちに教皇フランシスコとなるホルヘ・マリオ・ベルゴリオ。(Photograph by Franco Orig
船泊23号の復顔像。目が茶色くて顔色が濃いめだったことは前回紹介したが、酒の強さや現代のどのアジア人と近縁なのかなども判明した。国立科学博物館の特別展「古代DNA―日本人のきた道―」の展示より。(撮影:編集部) 縄文人の人骨としては、異例なほど保存状態がよかった船泊23号からは、現代人なみの精度でゲノムが得られた。そして、いわゆる一塩基多型の違いに基づいた風貌まで再現された。 人の風貌というのは、非常に印象深いものだから、船泊23号の復顔は、国立科学博物館の特別展「古代DNA」においても、まさに「顔」役として起用されている。 しかし、古代ゲノム研究の射程は、それにとどまらない。船泊23号のゲノムからわかる特徴には、容貌といったものだけでなく、3800年前の礼文島での暮らしぶりに直結するものもあった。引き続き、神澤さんに話を聞く。 「船泊23号は、脂肪代謝に関わるCPT1A遺伝子に特別な変異
「古代DNA―日本人のきた道―」と題された特別展が、国立科学博物館にて開催されている。 古代DNAとは、古い骨などに残っているわずかなDNAのことで、長い年月の間にバラバラに断片化し、また変性していることが多い。それらをうまく増幅して読み、修復して、つなぎ合わせる技術が、ここ10年〜20年のうちに大きな進歩を遂げた。保存状態のよい古代人骨からDNAを抽出できれば、遺伝情報の全体、つまり「ゲノム」を解明できることもある。 この分野で、もっともよく知られている研究は、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所、スバンテ・ペーボさんらによるネアンデルタール人のゲノム解析だろう。数万年前の骨からネアンデルタール人のゲノムを決定することに成功しただけでなく、現生人類(ホモ・サピエンス)のうちアフリカ以外の人々のゲノムに、ネアンデルタール人から受け継いだ部分が1~4パーセント含まれることを示した。これ
ブラジル、リオデジャネイロにあるメンベカ・ラゴス農園のアカエリシトド(Zonotrichia capensis subtorquata)。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 南米に生息するアカエリシトド(Zonotrichia capensis)は、薄茶色または白っぽい体に黒い斑点がある小さな鳥だ。オスはきわめて特徴的な鳴き方をする。その歌は、親世代から子世代へと受け継がれてきた。しかし、生息地が失われたり、個体数が減ったり、教師役の成鳥がいなくなるなどして学びの糸が断ち切られてしまったらどうなるのだろうか。 2020年から2023年にかけて、アルゼンチン、ブエノスアイレス大学精密・自然科学部の研究者たちは、野生から失われたアカエリシトドの歌を、ロボットを使って再導入するという大胆な仕事に取り組み、成功させた。この研
新しい研究によると、渇望はしばしば記憶に根ざしているようだ。科学者たちは、脳が高カロリー食品のことを記憶していて、私たちが空腹でないときにさえ食べてしまうものに密かに影響を及ぼしている可能性があることを発見した。(PHOTOGRAPH BY HEATHER WILLENSKY, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 高カロリーの食べ物への食欲を促すこれまで知られていなかった脳内の回路が、マウスを使った実験で見つかった。1月15日付で学術誌「Nature Metabolism」に発表された研究によると、海馬という記憶をつかさどる脳の部位にある特定のニューロン(神経細胞)集団は、糖分や脂肪分にまつわる感覚や感情を記録していることが分かったという。マウスでは、これらのニューロンが食べ物への渇望を誘発して、食べ過ぎにつながっていた。 渇望は、マウスが空腹でないときにも見られた。しかし
認知機能の低下にはさまざまな原因があることが、認知症の診断を困難にしている。写真のような陽電子放出断層撮影(PET検査)はアミロイドベータのプラークを可視化でき、認知症の診断や種類の判別に役立つ。(PHOTOGRAPH BY ISADORA KOSOFSKY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 米カリフォルニア大学バークレー校の著名な統計学者スティーブ・セルビン氏は、70代になった頃から彼らしくない言動をするようになった。過去の話はできるのに、現在の話は不思議なほどできなかったのだ。娘のリズ・セルビン氏は、「私たちは、退職後の不安やうつ病のせいだろうと思っていました」と語る。 セルビン氏の行動は徐々に変わっていったため他の精神疾患と間違えられやすかったが、これは認知症の症状だった。氏は認知機能の低下を巧妙にとりつくろっていたが、やがて隠せなくなったとリズ氏は言う。知らない
ヒトの神経系。直観を使って意思決定を行う際に重要な役割を果たす。(ILLUSTRATION BY MAGICMINE, ALAMY STOCK PHOTO) 危機的な状況での一瞬の判断であれ、新しい仕事を引き受けるといった大きな決断であれ、人生には、すべての情報がそろわない状態で意思決定を迫られる場面がよくある。このようなとき私たちは、直観に頼ることが多い。無意識の知識が正しい道を選ぶ助けになるかもと期待して。 直観とは、辞書的に言えば、明白な論理的思考や推論を経ることなく、知識を得たり、決断したりする能力だ。学問的には中身をはっきり説明することも研究も難しいとされ、長い間、神秘的なもののように扱われてきた。だが、科学者たちは、直観をより深く理解しようと取り組んでおり、新たな定義さえも生み出している。 「私なりの(直観の)定義は、身についた無意識の情報を、より良い意思決定や行動の助けとなる
禁酒法時代の1930年代、米メリーランド州でウイスキーを分け合う2人の若者。この時代、飲酒は命にかかわることだった。米国政府は、違法な飲酒を抑制するため、産業用アルコールに有毒物質を添加した。それによる死者数は数万人とも言われている。(Photograph By Kirn Vintage Stock/Corbis, Getty Images) 米ミシシッピ州ジャクソンのブルース歌手、イシュマン・ブレイシーが自分の酒をついだとき、米国じゅうの酒のみならず、自分の運も尽きていたことなど知るよしもなかった。数週間後、彼の脚がうずきはじめた。ポリオが流行っているという噂だったので、病院に駆け込んだが、原因はポリオウイルスではなく、毒だった。 なぜそんなことが起きたのか? 政府が酒を違法とするだけなく、致命的な毒に変えていたからだ。 「高貴な実験」と呼ばれる禁酒法の時代には、すべてのアルコールが禁止
1995年4月19日午前9時2分(現地時間)、米国オクラホマ州オクラホマシティのアルフレッド・P・マラー連邦ビルが爆破され、子ども19人を含む168人の命が奪われた。それまでの米国史上、最も多くの犠牲者を出したテロ事件だった。 この事件をきっかけに米国は、自分たちにとって最大の脅威の一つが国内テロリズムであるという、不安をかき立てる事実に向き合わなければならなくなった。犯人のティモシー・マクベイは、外国の工作員ではない。元米陸軍兵士のマクベイは、168人もの犠牲者のことを、連邦政府に対する自分の個人的な戦いの巻き添えに過ぎないと考えていた。 見過ごされていた国内テロリズム オクラホマシティの事件が起こる前の数十年間、連邦政府は主に左翼の過激派による暴力行為に気を取られ、右翼の反政府過激派などの国内の脅威はほとんど見過ごされていた。そこへ、1993年にニューヨークで世界貿易センター爆破事件が
クロスワードパズルに取り組む高齢者。こうしたパズルは脳の活性化を助けるが、実際のところ効果はどのぐらいあるのだろうか。(Photograph by Joel Sartore, Nat Geo Image Collection) 高齢になってもさえた頭を保つには? と聞かれたら、クロスワードパズルをやると答える人は少なくないだろう。数独や単語探しなどを含め、こうしたパズルは長年にわたり、脳の「運動」だと考えられてきた。実際、2020年に学術誌「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載された研究では、脳のトレーニング効果や認知機能の向上を期待して、この種のパズルが特によく用いられていることがわかる。 しかし専門家によると、クロスワードパズルと認知機能の関連性は、一般に考えられているほど単純ではないという。 たとえば、米ハッケンサック大学医療センターの精神医学部長で
南大西洋の水深約600メートルを泳ぐダイオウホウズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltoni)。(解説は英語です) 自然界で最も見ることが難しい動物の一つで、最も重いイカであるダイオウホウズキイカは、マッコウクジラの胃から死骸が発見され、初めて同定された。それから100年がたった今、自然の海洋環境を泳ぐダイオウホウズキイカが初めて動画に収められた。 3月9日、米シュミット海洋研究所の調査船ファルコー2号は、国際的な海洋生物調査の一環として、南大西洋のサウスサンドウィッチ諸島からほど近い極寒の海を調査していた。遠隔操作無人潜水艇(ROV)を水深600メートル地点に送り込んでいたとき、カメラの前をイカが横切った。 調査団と外部の専門家が動画を検証し、驚くべき結論に達した。「これはダイオウホウズキイカを深海の生息地で撮影した初めての動画です」とニュージーランド、オークランド工科
スイッチOTC (オーティーシー)という医薬品をご存じだろうか。読者の方々の中にも、お世話になっている人が多数おられるはずだ。 OTCは「Over The Counter」の略で、OTC医薬品とは薬局やドラッグストアで「カウンター越しに」、つまり処方箋なしで購入できる市販薬のことを指す。OTC医薬品の中には、当初から処方箋不要の医薬品として開発された一般用医薬品のほかに、医師の処方が必要な医療用医薬品として使用された後に、安全性に関する審査を経てOTC医薬品に転用(スイッチ)されるスイッチOTC医薬品がある。 厚生労働省は「自分の健康は自分で守る」をスローガンにセルフメディケーションを推進しており、スイッチOTCはその手段の一つとなっている。現在、約100種類の有効成分がスイッチOTC医薬品として認められており、2000品目以上の商品が市販されている。そのような中、昨年末に開催された厚生労
民間企業コロッサル・バイオサイエンシズ社は、遺伝子編集によってダイアウルフを復活させたと主張している。しかし、彼らが誕生させた「ロムルス」「レムス」「カリーシ」と名付けられた3頭は、本物のダイアウルフというよりも、多少の改変を加えられたタイリクオオカミ(ハイイロオオカミとも)とみなすのが正しいだろう。 コロッサル社は、2つの化石から抽出した古代のダイアウルフのDNAを分析したのち、タイリクオオカミの胚(受精後まもない段階)に20カ所の遺伝子編集を加えて、クローンがより“ダイアウルフらしく”見えるようにした。その姿は、米のテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場する架空のダイアウルフによく似ている。 コロッサル社はマンモスやドードーなど、さまざまな古代動物の復活に取り組んでいる。こうした試みには、常に技術的な課題と倫理面での懸念がつきまとう。(参考記事:「最後の2頭になったキタシロサイ
ビタミンEをサプリメントの形で多く摂取すると、健康被害を引き起こす恐れがあるという。(Photograph by Wolfgang Volz, laif/Redux) ビタミン剤やサプリメントの産業が活況を呈している。特定のビタミンが不足している人や健康上の問題を抱えている人にとってサプリメントはありがたい製品だが、一部の合成ビタミンは肝臓障害、脱毛、関節痛や筋肉痛、視力障害などを引き起こす恐れがあることが研究で示されている。 「誰もが皆、素晴らしい健康を与えてくれる魔法の薬を求めますが、残念ながらサプリメントにそれを期待することはできません。リスクを上回るほどの効果がないことの方が多いのです」と話すのは、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の予防医学部長を務めるジョアン・マンソン氏だ。(参考記事:「DHAほかオメガ3脂肪酸サプリ、健康な人では心臓に害も、研究」) 「私は一般的に、特別な理由
暖かい岩の上で日光浴をするムラリスカベカナヘビ。米国オハイオ州シンシナティの公園バーネット・ウッズで撮影。(Photograph By Jordan West) 米国オハイオ州シンシナティには、ヨーロッパ原産のムラリスカベカナヘビ(Podarcis muralis)が何万匹も暮らしている。記録的な低温と降雪にも負けず、ムラリスカベカナヘビは生き延び、そして増殖した。州の野生生物局から「永住者」とみなされた彼らは、歩道をはい回り、れんがの壁にしがみ付き、原産地とは大違いの環境で繁栄している。(参考記事:「早熟で短命なトカゲ ミヤコカナヘビ」) なぜ地中海地域生まれの爬虫類がシンシナティに根を下ろしたのだろう? すべてはある少年のカナヘビを詰め込んだ靴下から始まった。 1951年、10歳のジョージ・ラウ・ジュニアは家族旅行でイタリアのガルダ湖を訪れ、そこにいた10匹のカナヘビを持ち帰って自宅の
家の中のほこりを掃除するのは健康にとって想像以上に重要だが、はたきは使わない方が良い。専門家によると、溜まっていたほこりを空気中に再び舞い上がらせ、ほこりに含まれる化学物質を吸い込んでしまうことになるという。(PHOTOGRAPH BY STEVEN PUETZER, GETTY IMAGES) 室内に浮遊したり、ソファの下や窓辺に溜まったりしているほこりは、単なる目障りな汚れではなさそうだ。2016年9月に学術誌「Environmental Science & Technology」に発表されたレビュー論文では、家の中のほこりのサンプルから、「永遠の化学物質」と呼ばれる有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)や、フタル酸エステル類、フェノール類、難燃剤など、有害なおそれのある化学物質が45種類も特定されている。 2024年12月に学術誌「Environment International」
噴火は地下のマグマが地表に噴出する現象。マグマが冷え固まったり砕けたりして、溶岩や火山灰、礫(れき)などの噴出物が地上に出る。その一種に、多孔質で黒や赤褐色のスコリアがある。玄武岩質や安山岩質のマグマの噴火で多くみられる。スコリアには青や虹色のように美しく輝く部分が混じることがあるが、それができる仕組みは科学的に解明されていなかった。 そこで産総研活断層・火山研究部門大規模噴火研究グループ付の松本恵子氏(火山岩岩石学)らは、三原山の1986年噴火の「B火口」の堆積物で、美しい虹色のスコリアの表面や断面を、観察などを通じ詳しく調べた。 その結果、虹色の部分は、スコリアの外側が青く透明である一方、内側は黄色や赤で、不透明で金属のような光沢があった。見る角度を変えても色は変わらなかった。電子顕微鏡で見ると、球状の結晶集合体「球晶」が密に存在し、その大きさは可視光の波長ほどで、外側から内側へと大き
アラブ首長国連邦ドバイ首長国のマルガム近郊に広がるアラビア砂漠で、砂丘を歩くヒトコブラクダ。アラビア半島はかつては湿潤で緑豊かな気候であったとする説があるが、研究によりこの説を裏付ける新たな証拠が加わった。(PHOTOGRAPH BY BROOKE WHATNALL, NAT GEO IMAGE COLLECTION) サウジアラビア中央部にある洞窟の研究から、この地域には過去800万年間に植物が生い茂る湿潤な時期が何度もあったことを示す有力な証拠が得られた。こうした時期は「緑のアラビア」として知られるが、これまでは仮説にすぎなかった。論文は2025年4月9日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された。 西のサハラ砂漠からアラビア半島を通って東のインドのタール砂漠まで続く砂漠地帯は、生物を分け隔ててきた世界最大の障壁のひとつだ。今回の研究は、かつてはこの一帯には水が豊富にあり、サバンナのような
フォークの登場によって食事のあり方が変わり、食卓の上に個人の境界がつくられることになった。(Photograph By Rebecca Hale, Nat Geo Image Colleciton) フォークは世界の食卓で広く使われている道具のひとつだ。普段、このありふれた日用品を意識することはほとんどない。しかしこのフォークには、実は何世紀にもわたって退廃、不道徳、傲慢の象徴だったという歴史がある。 歴史の大半においては、指こそが自然の食器だった。肉はナイフで切り、汁はスプーンですくうが、栄養を取るという行為は手を使うことなしに終えることはできなかった。しかし、フォークはそれをすっかり変えてしまった。 「フォークが登場したことで、食文化や食卓の大変革が始まったのです」と述べるのは、ローマの食人類学者ルチア・ガラッソ氏だ。フォークの登場によって、食事が秩序ある洗練された行為になったが、すべ
米海洋大気局(NOAA)の人工衛星が夜に撮影したインドネシア、ジャワ島付近の可視光画像。青く強調された部分は、面積約10万平方キロのミルキー・シーと考えられている。(SATELLITE IMAGE BY STEVEN D. MILLER/CIRA/CSU AND NOAA/NESDIS) 「まるで広大な雪原、あるいは水銀の海を航行しているかのようだった」。1849年1月、アラビア海をムーズファー号で航行中のケプソーン船長は航海日誌にこう記した。「ミルキー・シー(乳白色の海)」と呼ばれる現象だ。ほかにも「これまで見た中で最も幻想的な光景」、夜の海が「濃いミルクやクリーム」のようになり、「海面のすぐ下に緑のネオンライトがあるかのように」光っていたなど、何世紀にもわたって船乗りや科学者を当惑させてきた。 米コロラド州立大学の博士候補生であるジャスティン・ハドソン氏と大気科学者のスティーブン・ミラ
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