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インタビュー
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シンガーソングライター・大石晴子の楽曲は、それぞれの日常を肯定し、そこから生まれる大小さまざまな光が呼応し合う世界を賛美している。決して壮大な物語を立ち上げるわけではないが、いつどこで何が起きてもおかしくない人生と、喜びも悲しみも内包した自らの心を深く見つめることによって、スムースなソウルミュージックをベースとしたアレンジや歌声から、確かな魂の息遣いを感じさせることがとても素晴らしい。 BREIMENの高木祥太やBialystocksの菊池剛などが参加した2022年発表のファーストアルバム『脈光』がASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文主宰の『APPLE VINEGAR -Music Award-』で特別賞を獲得するなど、音楽ファンの中で大きな話題に。昨年10月と12月に発表された新曲“サテンの月”と“沢山”では新たに高橋佑成や細井徳太郎らを迎え、新たなフェーズの始まり
日本のミュージシャンにも人気。ピノ・パラディーノとの共演も 細野:細野晴臣です。今日はね、やっと会えたという感じがします。サム・ゲンデルさんと、隣には奥さんがいます。はじめまして。さっき「どこから来たのか」って聞いたら、静岡の掛川からだということで。何をされていたんですか? サム:昨日は演奏をしていました。 細野:日本で名前が飛び交っていたので、初めてお会いできて嬉しいです。 細野晴臣(ほその はるおみ) 1947年東京生まれ。音楽家。1969年、エイプリル・フールでデビュー。1970年、はっぴいえんど結成。1973年ソロ活動を開始、同時にティン・パン・アレーとしても活動。1978年、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者としても活動。YMO散開後は、ワールドミュージック、アンビエント、エレクトロニカを探求、作曲・プロデュ
細野晴臣の記念碑的作品に再解釈を施した『HOSONO HOUSE COVERS』のリリースを祝した「短期連載:『HOSONO HOUSE』再訪」。 最終回の書き手は、柴崎祐二。カバー集にも参加したマック・デマルコを入り口に、細野晴臣と『HOSONO HOUSE』がどのように国外のリスナーや音楽家に受け入れられるに至ったのか、その経緯とともに、背景にある音楽を取り巻く現状について考える。 【編集部より】本連載、および本記事は昨年末に執筆・制作されたものです。2025年1月、数十万人の被災者を出した米カリフォルニア州・ロサンゼルスの大規模な山火事で、『HOSONO HOUSE COVERS』の共同プロデュースを手がけた「Stones Throw Records」をはじめとするLAの音楽コミュニティーは大きな被害を受けました。本作に参加したジョン・キャロル・カービーも被害にあった旨をSNSで報告
細野晴臣の記念碑的作品に再解釈を施した『HOSONO HOUSE COVERS』のリリースを祝した「短期連載:『HOSONO HOUSE』再訪」。 3人目の書き手は、原雅明。レイ・ハラカミ、サム・ゲンデルの2組のカバーをお題に、そのサウンドが時を越えて示した細野晴臣含む三者の繋がりについて執筆してもらった。 細野晴臣(ほその はるおみ) 1947年東京生まれ。音楽家。1969年、エイプリル・フールでデビュー。1970年、はっぴいえんど結成。1973年ソロ活動を開始、同時にティン・パン・アレーとしても活動。1978年、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者としても活動。YMO散開後は、ワールドミュージック、アンビエント、エレクトロニカを探求、作曲・プロデュース・映画音楽など多岐にわたり活動。2019年に音楽活動50周年を迎え
江東区森下の渋い商店街の一筋脇に建つ、かわいらしい外装のカフェ。往年のジャズを中心としたレコードが流れているが、ジャズ喫茶のものものしさは無い。 2024年にオープンした「parade」、その「新しいセンス」を音楽評論家・柳樂光隆が紐解く。連載「グッド・ミュージックに出会う場所」第11回。 通訳さんから教わった、東東京の新店 主にアメリカやイギリスのアーティストについて文章を書く音楽ライターをやっている僕の最も身近な仕事相手に、通訳さんがいる。ひとくちに通訳と言っても、いろいろな通訳がいて、僕らがお願いするのは音楽専門の通訳さん。音楽の知識が豊富で様々な文脈を把握しているので、時に僕らライターを助けてくれることもある。僕らが最も信頼する仕事相手でもある。なぜ、そんな書き出しかというと、paradeというカフェを勧めてくれたのはある通訳さんだったからだ。 取材後、彼女が「柳樂さんが好きそうな
『イカ天』やそれに類似するムーブメントなどについて3回の連載で紹介する本連載。第2回は、『けいおん!』『ぼっち・ざ・ろっく!』から『ふつうの軽音部』までを題材に2000年代以降のバンドブームについて考察する。 ※本連載に大幅加筆を加えた『イカ天とバンドブーム論(仮)』(DU BOOKS)より2025年2月に刊行予定。 アニメ『けいおん!』はカッコよさと簡単さの共存で「自分も弾いてみたい」と思わせた 筆者がフィクショナルな理想のバンドの筆頭として挙げたいのが、アニメ『けいおん!』の劇中バンド・放課後ティータイムである。アニメの舞台は女子校の軽音学部。バンドの練習や演奏シーンは殆ど登場せず、放課後に紅茶を飲みながらたわいもないおしゃべりに興じる女子たちの友情が作品の主軸を成している。ドラマティックな展開はほぼ存在せず、部室での無邪気な日常が延々と繰り返される。その作風は「日常系」「空気系」など
「これはあなたのためのフェスです」──そう語るのは、ロッキング・オンとサマソニが共同で立ち上げた、100%洋楽ロックだけにこだわる新フェス『rockin’on sonic』の仕掛け人・山崎洋一郎だ。 2024年1月4日(土)5日(日)、千葉・幕張メッセ国際展示場に集結するのは、PULP、Weezer、Primal Scream、Death Cab for Cutieといった豪華ラインナップ。さらに、若手バンドのWEDNESDAYやセイント・ヴィンセントといった幅広い世代のアーティストも登場する。全16組のステージは「タイムテーブルの被りなし」で展開され、洋楽ロックの「今」と「これから」を存分に堪能できるだろう。 洋楽不振と言われて久しいなか、このラインナップはある種のノスタルジーを感じさせながらも、時代を超えたロックの力を改めて問いかけている。ロックとは、単なる進化ではなく、受け継がれ、混
「あれなら自分でもできそうだ」「ああいう恰好がしてみたい」「あんな舞台に立ってみたい」――お笑い芸人でもYouTuberでもボカロPでも、自分なりの表現を発信したいと欲する時、誰しもがまず、このような希求を抱くのではないだろうか。音楽の領域でもそれは顕著だ。3コードと8ビートさえ弾ければステージに立てたパンクロックも、ターンテーブルとマイクさえあればゲーム感覚でプレイできたヒップホップも、そうだった。パンクなら素肌に革ジャン、ヒップホップならアディダスのジャージ。それまでなら白眼視されていた奇矯なファッションも、新しいもの好きの若者にはヒップに感じられた。 1989年から1990年に放映された『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』は、『イカ天』と呼ばれたアマチュアバンドのコンテスト番組。出演するバンドは、イロモノやキワモノから実力派、前衛系まで玉石混交だったが、結果的に『NHK紅白歌
1989年から1990年に放映された『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』は、『イカ天』と呼ばれたアマチュアバンドのコンテスト番組。出演するバンドは、イロモノやキワモノから実力派、前衛系まで玉石混交だったが、結果的に『NHK紅白歌合戦』に出場した「たま」のような隠れた才能を、いくつもフックアップした。その狂騒は、衝動や情熱をガソリンに突っ走ったお祭り騒ぎだったとも言える。そして、何かをやりたいけど、何をやっていいのか分からない、そう鬱屈した若者が『イカ天』を見てバンドをやり始めた。 かくして、家にひきもって深夜番組の『イカ天』を見ていた(当時の言葉で言うなら)ネクラな少年少女たちの逆襲が始まる。受動から能動、いや、行動へ。のちの『けいおん!』や『ぼっち・ざ・ろっく!』が誘発したのと同質の現象、そう、バンドブームの到来である。バンドブームはバンドを聴くブームじゃない。「バンドをやる」ブ
グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。 6月27日は、デザイナー / アーティストの小田島等さんからの紹介で、イラストレーターのスージー甘金さんが登場。電気グルーヴのロゴの制作秘話や、ヘタウマブーム当時の話などについて伺いました。 弟子・小田島等さんデザインのTシャツを着用して登場 タカノ(MC):スージーさんはラジオにはあまり出演されないと伺っております。 スージー:ほとんど出ていないですね。昔、えのきどいちろうさんがJ-WAVEでされていた番組に誘われて出たことはありますが、それくらいです。 タカノ:ということは2回目でしょうか? スージー:そうですね。2回目になります。 Celeina(MC):貴重な時間となりますけれども、早速プロフィールを紹介させていただき
『岸辺の旅』(2015年)で「第68回カンヌ国際映画祭『ある視点部門」監督賞」、『スパイの妻』(2020年)で「第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞」を受賞、そして今年、フランスの芸術文化勲章オフィシエを受章した黒沢清監督。2024年は『蛇の道』『Chime』『Cloud クラウド』と新作が立て続けに公開されている。 黒沢監督は、著書『黒沢清の映画術』で「人間の本質は幽霊である」と語った。善悪のある人間と、幽霊の恐ろしさはまったく性質が異なるものだが、得体のしれない恐さは近しいものがあるのかもしれない。映画『Cloud クラウド』では、転売業で日銭を稼ぐ吉井(菅田将暉)が、インターネット上で集った実態のわからない集団から標的にされてしまう。取り憑かれた人々によって見えない悪意が暴走するさまを描いた黒沢監督へのインタビューを通して、恐怖の根源がどこにあるのか考えさせられる。 ※本記事には映画
作家の「意図」と、その作品における「実現」が完全に一致しているものを目にしたとき、興奮や熱狂を覚えることがある。でも一方で、「なぜこんな作品を作ったのか」「どうしてこんな作品になったのか」を作家自身が説明できないタイプの作品があり、それに大きく心を揺さぶられることもある。 OGRE YOU ASSHOLEからのラブコールで実現した研究者の郡司ペギオ幸夫との以下の対話では、そんなことが話されているように思う。正直にいうと、私も編集者としてこの記事がどんなものであるのか、把握しきれてはいない。 自分にとって意味のあるものだけを取り込み、自らの世界や身体を拡張する知性を「人工知能」としたとき、その対極に浮き上がる「天然知能」の考え方。本稿はその入り口に触れながら、創造体験の深淵を覗き、考えさせられた約100分間の対話を記録したものだ。まずは、取材執筆を手がけた評論家の柴崎祐二による序文から。 O
映画監督・山中瑶子。生前の坂本龍一も激賞した『あみこ』(2017年)で一躍、注目を浴びた才能だ。そんな才能に心惹かれた人物がもう1人。それがドラマ『不適切にもほどがある!』や映画『あんのこと』『ルックバック』に出演し、大活躍する俳優・河合優実である。 高校時代の河合は『あみこ』を観て、山中監督に直接ファンレターを渡したと多くの媒体で語っている。そんな河合の山中監督への愛がついに実現したのが2024年9月6日公開の『ナミビアの砂漠』。河合は、自分を大切にしてくれる恋人を平気で裏切り、仕事も惰性で続けているような主人公カナを演じている。一見すると、理解しづらい人物であるカナの物語を、どんな思いでつむいでいったのか。監督本人に聞いた。 はじまりは、一通の手紙だった。主演・河合優実との縁 ―主演・河合優実さんが高校時代、山中監督の『あみこ』を見て、監督の映画に出たいと言われたそうですね。 山中:ポ
韓国インディーの大注目バンド、OBSG(オバンシングァ)が初来日を果たす。毎週のようにアジア各地のインディーアーティストが来日公演を行う現在であっても、10人もの大所帯編成である彼らが日本にやってくるとは。まさに奇跡の初来日といっていいだろう。 中心人物は京畿民謡の歌手であり、韓国インディーの異端児であるイ・ヒムン。かつては民謡グループであるSsingSsing(シンシン)のフロントマンとして、NPRの人気企画「Tiny Desk Concert」に出演したことで世界的な注目を集めた。同グループの解散以降はさまざまなプロジェクトで活動し、昨年は3人組ジャムバンドのCADEJO(カデホ)を伴って来日公演も行っている。OBSGはそんなイ・ヒムンのプロジェクトであり、昨年リリースされた最新作『SPANGLE』を携えた初来日となる。 バンドの音楽面を取り仕切るのは、ベーシストのノ・ソンテク。韓国の
なぜ音楽家たちは「ライブ」をするのだろう。なぜ私たちは「ライブ」に足を運ぶのだろう。そのとき、その場所で起こる奇跡、あるいは事件を、その唯一無二の「時間」を複製することは、今後どれだけ録音技術、映像技術が発達してもきっと不可能だ。ceroが作り上げたライブ作品『Live O Rec』を聴くと、過去・現在・未来を自由に行き来し、あらゆる可能性を内包する、その「時間」について考えさせられる。 『Live O Rec』という作品は、2日間にわたって行われたライブ録音を下地にしているが、いわゆる「実況録音」的なものではない。編集、録り直し、オーバーダビング、あらゆる音響操作が積極的に施されたこの作品には、いくつもの時間と空間が混在している。しかし、それでいてceroの三人の意識は、あの日、あのとき、あの場所の「ライブ」に収斂しており、それが作品としての独特な手触りを担保している。 ドキュメンタリー
8月30日(金)よりアニメ映画『きみの色』が劇場公開中。何より注目は、監督・山田尚子×脚本・吉田玲子×劇伴・牛尾憲輔という、映画『聲の形』のクリエイター陣による最新作であることだろう。 若者の感情やコミュニケーションという共通のテーマを持ちながら、『きみの色』は穏やかで心地よい空気に満ちた「溢れ出る感情」を肯定する映画だった。 『聲の形』と共通する「感情」や「コミュニケーション」というテーマ 映画『聲の形』はたくさんの絶賛の声が届いた一方で、原作マンガから小学生時代のいじめを発端とした物語でもあり、観るのがつらい、拒否反応を覚えたという声も少なくなかった。 そして、同じクリエイターチームが手がけた『きみの色』は、若者たちが傷つけ合う様を捉えた『聲の形』のアンサーともいえる。後述する「溢れ出る感情」を肯定的に捉えた作品で、いじめが描かれることもなく、関係がギスギスしたりもせず、穏やかで心地よ
ファッション業界随一の有識者である栗野宏文に「現代ファッションにおけるオルナタティブ」をテーマに縦横無尽に語ってもらった、約10,000字ものインタビュー(前編はこちらから)。 後編ではさらに話が広がり、ファッションとアートの関係から、パンデミック後の業界動向について、そしてファッションの価値についての話へと続く。 本稿で栗野は、「脱エリーティズム」を自身の大きなテーマとしてトピックに掲げた。そこでは、資本主義によってビジネス優位になった業界の問題点を真っ向から上げている。それと相反するオルタナティブな事象として挙げられたのが「coconogacco」。栗野はどんなファッションショーよりも、ここで出会う作品に気持ちの昂りを感じるそうだ。その視線に、ファッションの本質を見た。 ファッションは一見、消費的で表層的なもの、と思われがちだが、記事を一読すれば、その奥深さと無限に広がる可能性に気づく
広く「テクノ」を志し、メンバーそれぞれがDJとしても活動、「友達と二人で音楽をはじめた」という共通点を持つパソコン音楽クラブとLAUSBUB。互いのイベントでの共演、楽曲へのゲスト参加などを経て関係を深めた2組の初対談が実現した。 明確にダンスミュージックとして打ち出された決定打的アルバム『Love Flutter』をリリースしたパソコン音楽クラブ、さまざまな音楽を貪欲に取り込み、実験精神を胸にサウンドとビートをさらに拡張した1stアルバム『ROMP』を作り上げたLAUSBUB。互いの第一印象と最新作、ローカルで育まれる音楽の可能性、テクノ / ダンスミュージックを生業に生きていくことについて、4人の対話は止まることがなかった。 以下、ミュージシャン / 映像作家としても活動し、パソコン音楽クラブのリリースライブのアフターパーティーにも出演する小鉄昇一郎がお届けする。 ※「高橋芽以」の「高
山口つばさによる『マンガ大賞2020』受賞の同名漫画を原作とする実写映画『ブルーピリオド』が8月9日(金)より公開中。同作の「この夏いちばん熱い映画」という公式の触れ込みは伊達ではない。美術をテーマにしながらも万人におすすめできる「王道スポ根映画」であり、甘さなんてない「青春の戦い」を描いた傑作だった。 空虚な日常を過ごしていた少年が、藝大受験を志す物語 主人公の高校生・矢口八虎は、同級生たちと渋谷の街を出歩きサッカーの試合を見て騒ぐ日々を送っていたが、美術の授業の課題「私の好きな風景」で悩んだ末に「明け方の青い渋谷」を描いたことをきっかけに、美術に興味を持ち、のめりこんでいく。 そして、彼は「日本一受験倍率が高い学科」「東京大学よりも受かるのが難しい」とさえいわれる、東京藝術大学の絵画科の受験に挑む。現役生の倍率はなんと約200倍、受かるのは毎年5人ほどで、三浪、四浪は当たり前。しかも、
マルコ・ベロッキオ監督『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』が8月9日(金)より公開となる。1978年のイタリア元首相誘拐暗殺事件を、犯人グループの一人、被害者の妻、ローマ法皇など関係者の多角的な視点から、ときに幻想やあからさまな虚構をも交え、虚実の境界を曖昧にしながら描いていく大作だ。 評論家の柴崎祐二は、本作の「虚構」について、単に幻惑的な演出であるのみならず、歴史的事件を物語として扱うことについての内省的な問いになっているのではないかと指摘する。連載「その選曲が、映画をつくる」第17回。 ※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。 イタリア元首相誘拐事件を「外」から多面的に描く 1978年3月16日、午前9時2分、ローマ市中心部のマリオ・ファーニ通り。元首相でキリスト教民主党党首のアルド・モーロが、何者かによって誘拐された。 当時のイタリア社会で
和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー映画『マミー』が公開された。映画では、犯人と目された林眞須美が、夫・林健治とともに犯した保険金詐欺事件との関係が読み解かれ、確定死刑囚の息子として生きてきた林浩次(仮名)は、母の無実を信じるようになった胸中を打ち明ける。私たちは「あの事件」の何を知り、何を知らないのか。ライターの武田砂鉄がレビュー。 ポップに消費されるように仕向けられた、和歌山毒物カレー事件 映画の推薦コメントを書いたり、こうしてレビューしたりする時には、基本的に「観て欲しい」との気持ちを込める。でも、記事を読んでくれても大半の人は観ない。この記事だってそうだろう。これを読んだところで観ない。別の映画を選ぶかもしれないし、これだけ暑いんだから、家でじっとしているかもしれない。無理はさせられない。 映画の中でもドキュメンタリー映画のコメントを書く機会が多いが、コメントをい
36歳の女性が13歳の少年と不倫関係となり逮捕、獄中出産し出所後に結婚—— 実際にあった衝撃的な事件をモチーフに、『ベルベット・ゴールドマイン』『エデンより彼方に』『キャロル』などで社会的な題材を巧みに扱ってきたトッド・ヘインズ監督がメガホンを取り、ナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーアが共演した映画『メイ・ディセンバー ゆれる真実』が、7月12日(金)に公開となる。 音楽ディレクター / 評論家の柴崎祐二は、本作の特異な音楽使用や、作中にも登場するキーワード「認識論的相対主義」に着目。本作から垣間見える製作陣の誠実さと批評性を読み解く。連載「その選曲が、映画をつくる」第16回。 ※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。 象徴的な、「feel seen」という慣用句 「I want you to feel seen」。本作『メイ・ディセンバー ゆれる真
藤本タツキ原作の劇場アニメ『ルックバック』が今週金曜から公開。同作を、よしもと漫画研究部の部長で年間1,500冊以上の漫画を読む漫画大好き芸人・吉川きっちょむが解説 クリエイターに激震が走った漫画『ルックバック』公開の日 映画『ルックバック』が6月28日から劇場アニメとして公開される。原作である漫画『ルックバック』は、2021年7月19日0時に集英社の漫画誌アプリ・サイト『少年ジャンプ+』にて無料公開された藤本タツキによる143ページに及ぶ長編読み切り作品である。公開されるやいなや爆発的な反響を呼び、閲覧数は初日に250万、2日目に400万を突破した話題作だ。そして同年に発表された、宝島社『このマンガがすごい!2022』オトコ編第1位に輝き、『チェンソーマン』に続いて2年連続の1位となった。 © 藤本タツキ/集英社 学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野は、同級生から絶賛を受け
近年のCorneliusのアンビエント的楽曲を収めた作品集『Ethereal Essence』。そのリリースのアナウンスに触れた際、意外な驚きがあった。 アンビエントポップを意識したアルバム『夢中夢 -Dream In Dream』(2023年)や、『AMBIENT KYOTO 2023』への参加、あるいは近年のアンビエントリバイバルの背景を考えれば自然な成り行きとも思えるけれど、Corneliusはアンビエントに対して慎重な距離感を保っていたようにも感じていた。 本稿では、Cornelius=小山田圭吾がどのようにアンビエントミュージックに親しみ、その音楽性に取り込んできたかについて話を訊いている。そしてそれは同時に、ミニマルミュージックを通過した独自のサウンドデザインの美学を紐解くことにもつながっている。インタビューは旧知の間柄で、『STUDIO VOICE』の元編集長・松村正人を聞き
キッチンの一角に佇む折坂悠太の姿をとらえたアルバムジャケット。暮らしのワンシーンを切り取ったその写真からも伝わるように、コロナ禍のヒリヒリとした空気をまとった前作『心理』(2021年)から一転、ひさびさの新作『呪文』には穏やかで心地のいい風が吹いている。 昨年末に先行リリースされた“人人”(BS-TBSドラマ『天狗の台所』主題歌)で示されていたように、収録曲の半数には静かな歌の風景がゆったりと広がっている。その一方で、“凪”や“努努”にはsenoo ricky(Dr)、宮田あずみ(Cb)、山内弘太(Gt)を中心とする骨太なバンドのグルーヴが渦巻く。ラストを飾るのは希望に満ち溢れた“ハチス”。いずれの楽曲からも現在の折坂の好調ぶりが伝わってくる。 多様な歌の数々をまとめているのは、『呪文』という意味深なタイトルだ。2023年に音楽活動10周年を迎え、新たな10年へと歩み出した折坂が綴る生活の
『アバウト・シュミット』『サイドウェイ』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペイン監督による最新作『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』が、6月21日(金)より公開となる。 美術や衣装から撮影手法、音楽まで、徹底して「1970年代らしさ」を演出した本作。しかし、そこには単なるヴィテージ風のシミュレーションにとどまらない、歴史や過去を通じて現在を考えることへの「信念」が見て取れると、評論家の柴崎祐二は指摘する。 ある作中人物が好きだったアーティストとして、1930〜1940年代に活躍したクラリネット奏者アーティ・ショウの名前が挙げられる、その意味とは。連載「その選曲が、映画をつくる」第15回。 ※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。 1970年代の寄宿学校を舞台にしたヒューマンドラマ 細部へのこだわりと、品の良いリアリズム。ドラ
音楽家・北村蕗の頭の中にはどんなイマジナリーが広がっているのだろうか。2023年に『FUJI ROCK FESTIVAL』「ROOKIE A G-GO」に出演、2024年も「GYPSY AVALON」への出演決定が話題を呼んでいる現在21歳の北村は、これまで童謡、クラシック、ジャズ、フューチャーソウルといった幅広い音楽を吸収し、それをピアノ弾き語りや同期を用いたエレクトロニックセットなど、多彩な表現方法でアウトプット。新作EP『500mm』ではダンスミュージックをコンセプトに掲げ、トラックメイカーとしても非凡な才能を見せつつ、さらにはそこにシンガーソングライターとしての個性も加わって、実にオリジナルな作品に着地している。歌も楽器演奏もトラックメイクも並列に行い、アートワークも自ら手掛けるマルチぶりは非常に現代的だが、やはりそのすべての源泉になっているのはイメージの海。現在も好奇心に突き動か
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