コロナ禍での文化芸術活動を支援する文化庁の補助金制度で、ある団体が企画したイベントが不交付の決定を受けたことを巡り、民事訴訟に発展している。経緯をたどると、文化芸術への公的補助金が「あいまいな基準」で選別されるリスク、また行政の行き過ぎた対応に歯止めをかけるはずの「行政不服審査制度」が軽視されている実態が浮かんだ。(太田理英子) 「政治的または宗教的な宣伝意図のある活動とみなされたため」。2023年1月、芸術団体の代表、小川正治(しょうじ)さん(57)=東京都=の元に届いた助成元からのメールには、不交付理由についてそれ以上は書かれていなかった。「これでは何が問題なのか分からない。納得いかない」 小川さんが補助金申請をしたのは、文化庁の新型コロナ対策事業「ARTS for the future(アーツ・フォー・ザ・フューチャー)!2」。文化芸術団体などを対象に、2022年中の公演や展覧会に補