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私は、ウクライナの穀物輸出ルートの問題をずっと追ってきたわけだが、戦時下の状況に関しては、断片的なデータが飛び交うばかりであり、網羅的なデータにはなかなかお目にかかれなかった。 NHK「100分de名著」ブックス アレクシエーヴィチ 戦争は女の顔をしていないposted with ヨメレバ沼野恭子 NHK出版 2024年06月 楽天ブックスAmazon そうした中で、今般見付けたのは、ウクライナの経済戦略センターというところが定期的にとりまとめているらしいグラフである。こちらのフェイスブックページに、2024年6月までのルート別穀物・採油作物輸出量の最新版が出ていたので、凡例に日本語をかぶせ、上掲のとおりご紹介することにする。 いやホント、個人的にここまで全体像が良く分かる資料というのは、初めて見た。要するに、元々ウクライナの穀物輸出は圧倒的に黒海港湾(大オデーサ港およびミコライウ港)から
ルクオイルは1月12日、ニジェゴロド製油所でプラントの事故があったことを発表した。事故はガソリンを生産する2基の接触分解装置のうちの1基で発生した。事故の原因は、外国から調達したしたコンプレッサー設備の故障であった。少なくとも春までの停止は避けられないと見られる。 ニジェゴロド製油所はロシアにおける最大級のガソリン生産基地の一つで、2023年には月平均41万tのガソリンを生産した。故障したキャットクラッカー・ユニットは2015年に試運転が開始された。プロジェクトへの投資額は当時10億ドル規模と見られた。 ロシア政府は、この事故に関連してガソリンの輸出禁止を検討したが、その後エネルギー省は、小売価格がインフレ以上に上昇する前提条件がないため、輸出を制限する必要はないと発表した。 輸入設備の使用に伴うリスクは、欧米の制裁導入後、ロシアの製油所にとって著しく増大した。2022年初頭の時点で、ロシ
記事によると(元ネタは全ロシア漁業加工協会によるこちらのポスト)、2023年1~10月のロシアのイクラ生産は22,288tに上り、これは前年同期の約2.6倍に相当する。これは、統計数値の存在する2010年以降、最高の数値である。従来は2021年の21,569tが最高だった。2023年通年では、25,000tに達する見通しである。 協会のG.ズヴェレフ会長によると、極東海域におけるサケ・マスの漁獲が60.9万tと好調であり、これがイクラの豊漁にも繋がっているということである。 (魚については「豊漁」という言葉を使うが、獲ったサケ・マスからイクラを取り出すことについても「豊漁」と言っていいのかな? 分からん) ブログランキングに参加しています 1日1回クリックをお願いします
8月のロシア連邦財政では、非石油・ガス歳入を軸に歳入が堅調に推移する一方、歳出はそれほど膨らまなかったので、収支は単月で黒字となった。 1~8月の累計では、歳入は16兆9,900億ルーブル(うち石油・ガス歳入が4兆8,360億ルーブル、非石油・ガス歳入が12兆1,550億ルーブル)、歳出が19兆3,510億ルーブル、収支は2兆3,610億ルーブルの赤字(対GDP比1.5%)であった。 赤字には違いないが、本年の連邦予算は元々GDP比2.0%の赤字で編成されており、当初の計画よりも大きく乱れるような現象は、今のところ表面化していない。例の、「軍事費が当初の倍に膨らみ、歳出全体の3分の1を占めるに至っている」という話もあるわけだが、どうやって持ち堪えているのか、本当に不思議である。 ブログランキングに参加しています 1日1回クリックをお願いします
こちらの記事によると、米国がロシアからの肥料輸入を拡大しているということである。もとより、肥料は欧米による対ロシア制裁の対象外で、むしろ米国などは食料安全保障の観点からロシアからの肥料輸入を積極的に認める姿勢を示しているわけだが、実際に輸入量が拡大しているということのようだ。
昨日有効期間が切れることになっていた黒海穀物イニシアティブだったが、その当日にロシアナショナリズムの琴線に触れるクリミア橋が攻撃を受けるという事態となり、ロシアが「延長に反対する」と表明する事態となった。私の理解によれば、ロシアは瀬戸際戦略に出ており、まだ完全に協定から離脱したということではないはずだが、いずれにしても雲行きは相当険しくなってきた。 論点は色々あるが、とりあえず、ロシア外務省が昨日発表したこちらの声明を参照してみよう。プーチンは昨年来、最貧国を救うために合意された黒海穀物イニシアティブだったはずなのに、現実には同スキームでウクライナ産農産物はEUをはじめとする豊かな国にばかり向かっているとクレームをつけてきたわけだが、今回の外務省声明でもそれに沿った批判がなされている。 すなわち、昨日の外務省声明では、黒海穀物イニシアティブが実行された期間中に、3,280万tの農産物が輸出
結局、2022年は、2,274億ドルの黒字。以前からあちこちで申し上げてきたとおり、まさに「制裁下の焼け太り」の様相である。ちなみに、12月は石油市場の異変で苦しんだロシアだったが、一応12月単月でも黒字は維持した模様である。とはいえ、カネはあるのに、国際的な制裁網で、必要なものを輸入できないがゆえの大幅黒字であり、まさに悪い黒字としか言いようがない。 今般、ロシア中銀が発表したのは、下に見るような、本当に簡略な統計である。ロシア統計局、税関局が貿易統計を発表しなくなったので、それに近い統計が得られるものとして、中銀の国際収支表に期待したいところだ。だが、中銀が現在発表しているのは、商品だけの輸出入額ではなく、商品+サービスの輸出入額なので、やはり不満しか残らない。 一応記しておくと、2022年の商品+サービの輸出は6,281億ドル、輸入は3,458億ドル、収支は2,823億ドルの黒字であ
記事によると、8月に170万tが、9月に380万tが積み出され、これまでに計550万tの農産物(注:穀物およびひまわりの種がほとんどと思われる)の積出に成功した。 3つの港が活用されており、計241隻を港から送り出した。内訳は、チョルノモルシク(旧イリリウシク)港が111隻で210万t、オデーサ港が74隻で150万t、ピウデンヌィ(旧ユジネ)港が56隻で190万tとなっている。すでに235隻は目的港に着き荷卸しに着手している。 241隻の目的地別内訳は、113隻がアジア、95隻が欧州、33隻がアフリカ(うち17隻がエジプト)となっている。 とうもろこしの58%は欧州に向かい、小麦の70%はアフリカ、アジアに向かった。 ブログランキングに参加しています 1日1回クリックをお願いします
こちらに見るように、ロシアの政治評論家A.マカルキン氏が、世代論の観点から思想家A.ドゥーギン氏について論じているので、以下要旨をまとめておく。 ドゥーギンの主な政治的役割は、世代的な性格を帯びている。 1990年代、社会のかなりの部分は、イデオロギー的な空白に陥った。共産主義は公式に放棄されただけでなく、信用を失った。この社会層は、リベラル思想も断固拒絶した。 こうした状況下で、ドゥーギンは大衆受けするような形で地政学の受容を提案した。実のところ、ロシアの反欧米思想の多くは、欧米からの概念の拝借を基盤としている。地政学は、ソビエト人たちにとって、西側に権威が存在したこと(それらは1990年代には多くの反西側主義者にとっても尊敬に値した)と、難問(モロトフ・リッベントロップ協定やフィンランド戦争、アフガン戦争など)に回答を示してくれるその倫理相対主義によって、新しいものとして魅力的に映った
最近、ロシア出身のオリガルヒ数人が不審な死を遂げる事件が相次いでいる。それに関し、こちらが伝えるように、有名な反ロシア派のエコノミストであるアンダース・アスルンド氏が、The New York Postのインタビューで見解を述べたということなので、その発言を紹介する。 アスルンド氏いわく、自分がロシアの情報源から聞いたところによると、2021年末と、2022年3月初頭に、ロシア連邦保安局(FSB)は2つのリストを作成した。そこには、ロシアのエネルギー部門のトップマネージャーたちの名前が記されていた。FSBは、これらの人物がロシアの軍事侵攻計画の機密情報、ウクライナにおけるロシア連邦軍参謀本部情報総局の秘密工作の資金に関するデータを、ウクライナ側に伝えたとの疑いを抱いたのだ。そこで、すべてを抹殺する指令が下された。ロシアは秘密工作の多くをガスプロム社、ガスプロムバンクを通じて行っている。とい
ロシア入国を禁止されてしまった中村逸郎先生へのお見舞い企画として、私が過去に書いた先生の著作の書評を再録するシリーズ。2回目の本日は、『虚栄の帝国ロシア ―闇に消える「黒い」外国人たち』(岩波書店、2007年)を取り上げる。 最近ロシアで外国人労働者を見かけることが本当に多くなった。そうしたなか、周辺諸国からロシアに押し寄せる出稼ぎ労働者に焦点を充て、この問題を通じて「内なる帝国」としてのプーチンのロシアに迫ろうとしているのが、本書『虚栄の帝国ロシア』である。 一体ロシアにはどれくらいの数の外国人労働者がいて、民族別の内訳はどうなっているのか? こうした点について、信頼できる情報はなかなか得られない。それもそのはずで、ロシアで働いている外国人の9割以上は不法就労者だという。本書では、まず第1章において、現地の報道などにもとづき、この問題を定量的に整理し、全体像を描くことを試みており、有益で
昨日ロシアが、制裁への対抗措置として、今後ロシア入国を禁止する人物リストを発表したことが話題になっている。リストの末尾に掲載されていたのが、中村逸郎・筑波学院大学教授だった。 テレビの面白コメントの印象が強すぎ、色眼鏡で見ておられる方もいるかもしれないが、中村先生はものすごく立派なロシア研究者である。綿密な現地調査に基づいた迫真の研究書を何冊も上梓されており、特に岩波書店から出た一連の書籍は必読である。私などが逆立ちしても書けないような本ばかりだ。個人的には、岩波の書籍での中村先生こそが本物であり、テレビの中村先生はサイボーグではないかと疑っている。ああいう調査手法からして、ロシアに渡航できなくなるのは大打撃のはずで、気の毒でならない。 岩波書店で中村先生を担当した編集者は、私もお世話になった方だった。その縁で、中村先生の著作の書評を3回ほど書いたことがある。そこで、過去に書いた書評を当ブ
我々としては「プーチン・ロシアはもうギブアップ寸前」と思いたいところだが、こちらの記事は、それとはだいぶ異なる様相を伝えている(政府系ではなく独立系のメディア)。以下、主要部分を抄訳しておく。 ロシアには、「特別軍事作戦」を継続する資金があるだろうか? 結論から言えば、ある。制裁を考慮しても、ロシアは社会保障を支出しつつ、軍事作戦を遂行するのに充分な資金がある。ある大銀行のアナリストは、資金は充分にあり、問題は国民がどれだけ忍耐するかだとコメントした。 米企業の石油・ガスアナリストの指摘によれば、ロシア経済にはまだ大きな余力があり、金融部門は有能な人材によって運営されている。問題は、資金というよりも、軍需産業など、部品が調達できるかという点にあるという。 ロシアの大手銀行のシニアアナリストは、次のような見通しを示す。ロシアの石油・ガスが即座に拒絶されることはないという基礎シナリオを仮定する
上掲地図はこちらから拝借。 今回の戦争が始まってから、しばしば問われたのは、「ロシアはどこまで侵略の範囲を広げるのか? ウクライナだけでなく、たとえばモルドバ、ジョージア、バルト三国にも触手を伸ばす可能性はあるのか?」という問題だった。 それに関し個人的には、プーチンがさらなる版図拡大を目論むにしても、最大で帝政ロシアの領域、もっと言えばソ連の領域に限定されるはずで、いずれにしても、ウクライナ・ベラルーシに向けている熱情に比べれば、モルドバやジョージアといった国に関しては熱量がだいぶ下がるはずだと考えていた。 しかし、ロシアには、Аппетит приходит во время еды.ということわざがある。そんなに食欲がなくても、食べ始めると、どんどん出てくるといった意味だ。私は当初、「モルドバまで手出しするようなことはあるまい」と思っていたのだが、正直言うと、だんだん不安になってきた
今日、ロシアで戦車を生産しているのは、スヴェルドロフスク州ニジニタギル市にあるウラルヴァゴンザヴォードと、その系列に入っているチェリャビンスク・トラクター工場だけと言われている。余談ながら、個人的に、ニジニタギルに調査出張に行った際に、街角からふと戦車だか装甲車両みたいのが表れて、ビックリしたことがある。たぶん、工場で作られた車両が、出荷されていくところだったのだろう。 そして、ウクライナ侵攻が始まってから話題となったのは、実はウラルヴァゴンザヴォードでは部品不足から戦車の生産ができなくなっているのではないかという問題だった。それに対し、3月22日付のこちらの記事は、同社の広報がそうした観測を否定し、平常どおり軍需品の生産を続けていると強調したということを伝えていた。 それに対し、今般4月15日付でウクライナ側のメディアに出たこちらの記事は、ウラルヴァゴンザヴォードの戦車生産はやはり停止し
先日、「黒海からの穀物輸出はどうなっているのか?」という話題をお届けしたが、その続編のような話である。こちらの記事が、黒海からのロシアの輸出は意外と持ちこたえており、ウクライナ産を駆逐しつつあるという気になることを伝えているので、以下要点をまとめておく。 2月24日に紛争が勃発して以来、世界の小麦価格は、主要な穀物輸出国であるロシア・ウクライナからの供給に障害が生じるのではないかという懸念に端を発し、急騰している。 ただ、ロシアからの小麦の輸出は、ウクライナ紛争の開始後、当初は減速していたが、競合国よりも安い価格が売上げ確保に貢献し、回復している。 確かに、港湾閉鎖が続くウクライナでは、懸念が現実となった。それに対し、ロシアは決済問題にもかかわらず好調な販売を記録し、ウクライナの供給が途絶えたことで生じた世界の小麦市場の空白を埋めることに成功しつつある。 欧州のトレーダー関係者は、「ロシア
こういうことを書くと、「ロシアによるウクライナ侵攻はやむを得なかった」みたいな話に受け取られかねないけど、そうではなくて、単なる経済地理オタクのマニア話なので、ご容赦いただきたい。 伝統的に、クリミアへの水供給は、「北クリミア水道」というものを通じて行われてきた。その良い地図がないかなと思って探したところ、こちらのサイトに良いものがあったので、それを上掲のとおり拝見する。 地図の太い赤線が北クリミア水道であり、要するにウクライナ本土のヘルソン州タウリースクでドニプロ(ドニエプル)川から取水して、それをクリミアまで運び、途中ポンプでくみ上げたりしつつ、最終的にはクリミア半島東端のケルチまで伸びるというものだった。水道からはいくつかの支線が伸び、各地域や都市に水を供給していた。実はクリミアは旧ソ連では珍しいコメの産地であり、その稲作も同水道による灌漑の賜物だったわけである。 ところが、2014
なんだかんだで、現在までのところルカシェンコのベラルーシは、ロシアの対ウクライナ戦争への参戦を回避し続けている(領土を進撃拠点としてロシア軍に提供したことは看過できないが)。ベラルーシ軍はそれほど規模は大きくないとはいえ、もしベラルーシ軍が合流してロシア軍が厚みを増していたら、キーウ攻防戦の状況も多少変わったかもしれない。 はっきり言って、「この戦争に加わりたくない」というのは、独裁者ルカシェンコと、ベラルーシの一般国民との、唯一と言っていい共通項だろう。それだけ、「戦争だけは勘弁」という意識が、ベラルーシ国民には染み付いている。 そのあたりの事情につき、こちらの記事の中で、ロシアとベラルーシの有識者たちがコメントしている。ここではそのうちベラルーシ側の2名のコメントを以下のとおり抄訳しておく。 G.コルシュノフ(「新思考センター」分析家、ベラルーシ科学アカデミー社会学研究所元所長):ロシ
本日は、ちょっとこんなデータをお目にかけようと思う。ウクライナの港湾別取扱貨物量である。 ちなみに、ウクライナの地名はウクライナ語で読みましょうキャンペーンがあるが、ウクライナの港では名前自体が変わったところも多い。昔ユジネと呼ばれていたところがよりウクライナ風にピウデンヌィに変わり、イリチウシクと呼ばれていたところがレーニンにちなんだ名前はまずいということになりチョルノモルシクに変わり、オクチャブリスクと呼ばれていたところが10月は禁句ということでオリヴィアに変わった。なお、オデッサに関しては「オデッサはロシア語読みで、ウクライナ語読みではオデーサ」という的外れな解釈に基づきオデーサに統一されようとしており、個人的にも今後はそうしようと思うが、今回は以前作った地図を再利用するので、オデッサのままでご容赦いただきたい。 さて、最新の2021年の港湾別取扱貨物量が、下図のとおりとなる。201
何が困ると言って、ベラルーシで世論調査の類がほとんど行われず、民意がどこにあるのかが掴めないのは非常に困る。そうした中、2020年8月の大統領選後、英チャタムハウスが不自由な中でも時々ベラルーシで世論調査らしきものをやってくれているのは、助かる。 それで、こちらのサイトに見るとおり、ロシアによるウクライナ侵略を受け、チャタムハウスでは3月5~14日にベラルーシ国民896人を対象に本件に関する意識調査を行い、それをベラルーシの社会構造に応じて補正、その結果を発表した。 色んな設問があるが、やはり一番注目されるのは、ベラルーシ自身がこの紛争に関しどのようなスタンスをとるべきかという問いだろう。その結果を示したのが、上図となる。日本語にすれば、以下のとおりとなっている。対ウクライナ戦争にロシア側に付いて参戦することを支持するのは3%だけとなっている。 ロシアの行動を支持するが、ベラルーシ自身は紛
日本人からするとピンと来ないところだが、現在危機に陥りつつあるロシアで今、真っ先に品不足になっているのが、砂糖である。元々ロシアは砂糖の消費量が多く、経済危機になったらまず砂糖の買い溜めに走るような消費行動があると言われる。 ただ、ロシアは近年、砂糖の純輸出国となっている。また、こちらのレポートに見るとおり、かつてロシアは砂糖生産のためにサトウキビを輸入しており、上図のとおり生産の半分ほどはサトウキビ(青の部分)由来の年もあったが、最近ではほぼ全面的に国内で栽培されるテンサイ(サトウダイコン)に移行していた。なので、消費者の一時的なパニックで品薄になったりすることはあるものの、砂糖を自給すること自体には問題がないと、個人的には考えていた。 ところが、それには盲点があったようだ。こちらの記事によると、ロシアの多くの作物は輸入品の種に依存しており、テンサイはその典型例なのだそうだ。テンサイの種
プーチン政権に批判的な(ウクライナのメディアにもよくコメントを寄せる)ロシアの政治評論家D.オレーシキン氏が、こちらの記事で、ロシア・ウクライナ情勢につき論評しているので、以下要旨を紹介。 プーチンを止められるのは、ウクライナだけだと思われる。ロシアのオリガルヒに期待しても意味はない。彼らはプーチンをとても恐れており、報復を怖がっている。プーチンと密接に付き合う人は、彼が冷酷な人間であることを理解している。 ロシアの中流階級は、戦争で経済的に打撃を受けているので、今すぐにではないが、戦争に反対するという希望は持てる。当局は沈黙しているが、もう少ししたらロシア兵の遺体が無言の帰国を果たす影響が出てくるし、さらにその後には物価の影響が出る。1ヵ月もすれば、人々は今回の制裁が本当に自分たちを苦しめているのだと感じるだろう。 人々は、過去15年、「ロシアは屈辱から立ち直り、軍も最強になった」という
こちらのページに、「世論基金」がロシアで実施した最新の全国世論調査結果が出ている。直近の調査は、プーチン政権がウクライナ侵略を開始した2月24日の後の25~27日に実施されたそうである。独立系の機関であるレヴァダ・センターよりは信頼性が劣り、数字を鵜呑みにはできないだろうが、ロシア世論の大まかな風向きを反映しているとは考えられるだろう。 それで、この調査によれば、プーチンの仕事振りを良いと評価するか、悪いと評価するかという設問の回答状況は、上図のように推移している。プーチンがウクライナ侵略を始めてから、肯定的な評価が71%に高まる結果となっている。 自称ドネツク、ルガンスク人民共和国の国家承認をロシアが行ったことについて、すでに知っていたか、それとも今回の調査で初耳かと尋ねたところ、知っていた63%、それらしきことを聞いた28%、初耳だ7%、分からない1%。
中央アジア、特にカザフスタンの研究で活躍し、我が国における第一人者だった岡奈津子さんが急逝されたとのことです。つい1ヵ月ほど前に連絡をとりあった時には変わった様子はなかったので、信じられない思いです。 岡さんと言えば、中央アジアの民衆のひだに分け入ったような研究スタイルを持ち味とし、特に2019年に上梓された『〈賄賂〉のある暮らし:市場経済化後のカザフスタン』(白水社、2019年)は大きな評価を獲得しました。 以前当ブログに掲載した紹介文を再掲載させていただきます。心よりご冥福をお祈りいたします。 これはとんでもない本が出た。カザフスタンだけでなく、ロシア・ユーラシア諸国にかかわる者全員にとっての、必読書と断言できる。岡奈津子『〈賄賂〉のある暮らし:市場経済化後のカザフスタン』(白水社、2019年)である。Amazonから内容紹介を拝借すれば、以下のとおり。 ソ連崩壊後、独立して計画経済か
個人的にオリンピックはサッカー以外一切観ていないので事情に疎いが、ベラルーシ情勢に関連して、たとえばメダルを獲ったベラルーシ人選手が白赤白旗を掲げてみせるとか、何か事件が起きるかもしれないという関心は抱いていた。 そうしたところ、陸上のK.チマノフスカヤ選手の問題が勃発し、国際的に注目を浴びている。安直に朝日の記事を引用させていただくと(この記事では名前がベラルーシ語読みになっているが)、 東京五輪陸上の女子200メートル予選に出場を予定していたベラルーシのクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手が同日、コーチを批判したとしてチームを外され、帰国させられそうになったと報じた。羽田空港で帰国便への搭乗を拒否し、警察に保護されたという。 ロイター通信によると、ツィマノウスカヤ選手はSNSで「(5日の)女子1600メートルリレー予選の参加に必要なドーピング検査を複数の選手が十分に行わなかったことで出場
私がよく引用させてもらうベラルーシの政治評論家V.カルバレヴィチ氏が、こちらのサイトで、ベラルーシとキルギスの違いについて語っているので、以下のとおり抄訳しておく。 キルギスがベラルーシとまったく異なっている点は、キルギスでは国民の民族・文化的な背景にもとづく2つの政治グループの間にバランスがあることである。ざっくり言えば、北部人と南部人というグループだ。両者間では、常に闘争があり、合意とバランスの保持が政治システムの重要な要素である。時折、そのバランスが崩れて、紛争に至り、武力を伴うこともある。 ベラルーシでは権力維持のメカニズムがまったく異なり、派閥という仕組がない。派閥間、政治グループ間、オリガルヒ間の闘争というものが欠如している。民族的にも、地域的にも、かなり同質的である。ベラルーシの分裂は別のところにあり、それは政治的価値観、世界観によるものである。 ベラルーシの政治体制は非常に
ベラルーシ情勢は、ほぼほぼ決着がつき、あとは窮鼠猫噛みが心配なのと、ロシアの出方が不透明なことくらいかと思う。 しかし、それはあくまでもルカシェンコ体制をアンインストールするというだけの観点であり、ルカシェンコなきあと国をどうしていくかというのは、まったく異なる難題である。 私個人は、ベラルーシの民衆に共感するのは当然のこととして、研究者としての専門上、今後この国を待ち受けるであろう経済的困難に、思いを致さざるをえない。生来のひねくれ者ゆえ、世の大勢に反し、「多々問題はあれど、ルカシェンコは経済的には頑張ってきた」という論陣を張ろうかと思っている(笑)。 周知のとおり、(バルト3国を除く)旧ソ連圏においては、エネルギー資源を持てる国が豊かで、持たざる国が貧しいというパターンがある。ただ、その例外として、ベラルーシはエネルギー資源を持たざる国なのに、所得水準がそんなに悪くないという国だった。
私の幻の著作『ウクライナ・ベラルーシ・モルドバ経済図説』に、上掲のようなモルドバの地域区分を掲載した。モルドバの国土が北部、中部、南部、ガガウス自治区、そして首都キシナウ都市区域に分けられている。しかし、実を言うと、その時点では、この地域区分がモルドバ当局が採用している正式なものであるかどうかの確信がもてないまま、見切り発車的に掲載した次第だった。 そして今般、モルドバ統計局の刊行物で、地域統計集が発行されているのを発見した。こちらのページからダウンロードできる。中身を確認したところ、まさに私が経済図説に掲載したのと同じ地域区分に立脚したものとなっており、安堵した。 統計集の中に、下に見るように、地域総生産のデータも出ていた。どんな国にも首都と地方の格差は存在するものだが、モルドバにおいては2015年時点で富の実に58.4%が首都キシナウに集中していることが分かる。また、1人当たりの総生産
少々古い話になってしまったが、ロシアの元下院議員であるデニス・ヴォロネンコフ氏(写真)が3月23日にキエフで暗殺された。私自身はきな臭い話が苦手で、当ブログは経済を中心とする人畜無害な情報が主だが、ヴォロネンコフ氏の事件については少々事情があって簡単に調べたので、要点だけ整理しておく。 デニス・ヴォロネンコフ氏は1971年生まれで、司法、軍事、ネネツ自治管区行政などの仕事をしたあと、2011~2016年に共産党所属の連邦下院議員を務めた。2016年の下院選ではニジェゴロド州の小選挙区で落選、選挙運動の際に「自分はアフガン従軍帰りだ」といった偽りの主張をし(実際にはソ連がアフガンから撤退した時にはヴォロネンコフはまだ未成年だった)、どうも虚言癖のある人物だったようだ。奇矯な言動の一つとして、2016年には「ポケモンGoユーザーはスパイや、さらにはテロリストになりかねない」と唱え、ロシアにおけ
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