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アメリカ大統領選
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近年アカデミズムでもネット論壇でも、「実証に基づく議論」が主流になっており、旧来のような価値や「イデオロギー」に基づく議論はすっかり影を潜めている。1980年代や1990年代には哲学者や社会学者の社会批評が隆盛したが、現在は実証性に乏しいとしてかつてほどの読者を獲得できなくなっている。では実証に基づく社会分析や政策論が増えたことで、議論の質が向上しているのかと言うと、必ずしもそうとは言えない現状がある。むしろ、意見の異なる者同士の論争がますます成立しなくなっているという、より深刻な事態をもたらしているように見える。 「イデオロギー」の時代は、議論の質はともかくとして、少なくとも対立や闘争という形の「対話」が最低限成立していた。昔の保守派は批判するためにもマルクス主義の文献や左翼知識人の論文に目を通していたし、全共闘の学生はつるし上げの対象である大学教師の本をよく読んでいた。佐高信と西部邁が
前にも言及した、著名な社会学者による新書だが、アマゾンのレビューで批判的なものが多い。個々の論点はそんなに間違ったことを言っているわけではない。明らかにこれは文体の問題である。そういう意味で、宮台氏も時代の空気からズレはじめたんだなということをつくづく感じる。 宮台氏の頭の中には、どこかに「知の最先端」の世界があって、それを知らないと「恥ずかしいこと」になっているらしい。しかし今は、こういう読者に対する無知への劣等感や強迫観念を動員して人を説得しようとする手法自体が、もはや完全に効力を失っていると考えるべきである。むしろ、高度な知の世界の憧れが完全に消失してしまったどころか、それを顕示すること自体が非常に「恥ずかしい」ことになっている。宮台氏ともあろう人が、そのことに全く気づいていないのが正直がっかりである。 レビューで「わかった上での戦略的振る舞い」という擁護があったが、そもそも今はそう
ナショナリズムと福祉国家の関係 「福祉国家」や社会保障の問題を学んでいる人は、それがしばしばナショナリズムと結びつくという問題に直面する。古いところでは、スウェーデンの経済学者であるグンナー・ミュルダールが提起した、「福祉国家の国民主義的限界」問題が有名である。ナショナリズムと福祉国家の関係は、一般的に言うと、以下の二点にまとめることができる。 第1には、国家が再分配活動を行うためには、社会サービスの給付の権利を有する成員資格を、明確に定義しておく必要がある。たとえば企業の場合、株式を購入する権利は原理上万人に開かれており、成員資格を事前に定義しておく必要は基本的にないが、国家は保険証や年金手帳を給付する範囲をあらかじめ決定しておかなければならず、その際の定義の根拠として「民族」が持ち出されることになる。 第2に、税や社会保険の負担を国民全員が等しく共有するための、連帯と共同性の基盤として
前々回の話題の続き。 『経済成長ってなんで必要なんだろう』における飯田泰之氏と湯浅誠氏の対立点は、私の考えでは「溜め」の具体的な内容に対する理解に求められる。飯田氏は湯浅氏の「溜め」の理解に全面的に賛同しつつ、それをベーシック・インカム(最低所得保障)によって回復させるべきだとという立場をとっている。 しかし根本的な問題は、ベーシック・インカムが本当に「溜め」につながるのか、ということにある。飯田氏の言う「負の所得税」という方法は、確かに論理としては明快である。しかし注意しなければいけないのは、湯浅氏の言う「溜め」というのは、仕事を紹介しくれる知人がいるとか、いざとなったら食事をおごってくれる先輩がいるとか、そして雇用保険や生活保護といった公的な社会保障制度とか、そういう「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」全般を含むものであることである。 ベーシック・インカムというのは、最低限の給付
濱口桂一郎氏のブログでharuto氏という人がコメント欄に興味深いことを書いていた。 「引き下げデモクラシー」を現在主に提唱している、戦争を待望する元コンビニバイト、放送局勤務を経て現在大学院教授、メーカー勤務を経て人事コンサルタント、といった「男性」に共通するのは、「正社員経験がありその後何らかの理由により退職した」という「事実」ですね。その詳細をケーススタディとして分析することはアクティベーションを考えるうえでも必要ではないかと思います。 思うにこの「男性」たちは「自分と自分が所属していた組織とのあいだの軋轢、確執」を「自己対象化」しながら考えることができていない。「個人的な怨恨」と「社会的な問題」の区別がついてない。なので、「引き下げ」が自己目的化する。 こうした「男性」たちの存在が逆に、労働組合による労使間の関係調整の必要性を照射しているとも言えますね。この「男性」たちはみんな「雇
この1年の間に、「ベーシック・インカム」の議論が急速に盛んになっている。ここでも何度か言及したが、まだまだ一般的な認知は低いものの、明らかに一つの議論として市民権を得はじめている。 私も流行に流されて色んな本を手にとってみたが、個人的な立場はどちらかというと否定的な方向にある。まず既存のベーシック・インカム論を簡単にまとめた上で、それに否定的な理由について論じておきたい。 ■三つのベーシック・インカム ベーシック・インカムの手法としては、具体的には以下の三つがある。 (1)完全ベーシック・インカム: 属性や所得の壁を完全に取り払い、国民全員に一律に同等の金銭給付を行うもの。この立場は、ベーシック・インカムを純粋に政治哲学として議論している人に多い。 (2)負の所得税: 所得税の累進課税を強化した上で、課税最低限を下回る所得の人には、所得水準に応じて金銭を直接給付するというもの。この立場は、
再び勝間和代氏ネタであるが、彼女が毎日jpで行っている「クロストーク」における読者のベストアンサーから。 貧困率が世界最下位の北欧の国、デンマークで働いている者です。 デンマークでは、法人税を一律25%と低く据え置く一方で、所得税は最低でも45%、最高で67%と世界でも最も高い水準に保たれています。課税最低限も低く置かれているため、短時間労働者も含めてほぼすべての労働者が45%以上の所得税を支払っています。 課税は世帯単位ではなく個人単位で、配偶者控除や扶養控除などの世帯を前提にした控除もありません。この個人単位の課税は、労働参加率が高い(共働き率は90%以上)ことにより可能になっています。 消費税は一律25%で食品や子供用品などに対する減免もありません。新車に対する課税(本体価格の190%)、ガソリン税、たばこ税なども他の先進国に比べ非常に高い水準にあります。 健康保険料や年金、失業保険
国家戦略室への提言「まず、デフレを止めよう~若年失業と財政再建の問題解決に向けて」 勝間和代公式ブログ ・・・・・・・・・ 上記の説明について、菅大臣との主たる質疑応答は、以下のとおりでした。 Q1 非常に魅力的な提案だが、それは要は、貨幣発行量を増やし、国債を発行すると言うことか A1 そうです。モノに比べて、貨幣が足りない状況なので、国債と引き替えに貨幣を発行し、その国債を日銀が引き受けて、市場に供給する。その収入を、環境、農業、介護など、いま投資が必要な分野に投入します。 Q2 日銀に明日からやれ、といったら、やるのか A2 はい、できます。必要だったら、私も一緒に行きます。日銀は国民から選ばれたわけではないので、迷いがありますから、選ばれている政府のリーダーシップと、今回の署名のような、国民の声の後押しが重要です。 Q3 こういうことを行いたいという声は党内にもなるが、国債を発行
■所得税中心主義は正しいか いまだに日本では、増税そのものが言語道断という雰囲気がまだまだ根強いが、増税による再分配の必要性を理解する人たちの中には、その手段として、所得税の累進率を引き上げればいいという議論もある。立岩真也氏と飯田泰之氏がこの立場である。 所得税累進率引き上げ論は、まずマスメディアでは消費税だけしか俎上に上っていないような硬直した議論へのカウンターとして、そして富裕層から貧困層への所得再分配にとって最も理にかなった手段として、かなり共感できるところも多い。しかし私は、所得税の累進率を上げるということ自体には全く異論はないものの、所得税中心主義にはどちらかというと批判的で増税の中心は消費税のほうがよいという立場をとっている。ここでは、そのことについて簡単に述べたい。半分くらいは権丈善一氏の受け売りではあるが。 ■所得税よりも消費税のほうが現代の社会経済的な構造にマッチしてい
日本の自殺率の高さについては、WHO精神保健部ホセ・ベルトロテ博士はこう言っている。「日本では、自殺が文化の一部になっているように見える。直接の原因は過労や失業、倒産、いじめなどだが、自殺によって自身の名誉を守る、責任を取る、といった倫理規範として自殺がとらえられている。これは他のアジア諸国やキューバでもみられる傾向だ。」こうした点は当の国の人間では気づきにくい見方かと思われる。(自殺許容度と実際の自殺率との相関を図録2784に掲げた。) ロンドン・エコノミスト誌(2008.5.3)は女子生徒の硫化水素ガス自殺(4月23日)の紹介からはじまる「日本人の自殺-死は誇らしいか」という記事で日本の自殺率の高さについて論評している。経済的な要因についてもふれているが、記事の主眼は日本人の文化的な要因、あるいは社会的特性であり、上記の見方と共通している。「日本社会は失敗や破産の恥をさらすことから立ち
「小さい政府は票にならない」からだ。 それは普遍的な事実だ。あまりに論理的な帰結だ。 小さい政府は、誰にも利権を分配できない。小さい政府とはコントロールできる資金量が“小さい”政府、という意味だ。その定義からして、利権を生みにくい。 そして、利権を生みにくいということはすなわち、票にならないということなのだ。 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090726 謎のアルファブロガー「ちきりん」氏の文章。この人を批判したいのではなく、この文章のように、「大きな政府」になることをやたらに懸念している人への雑感である。「大きな政府」を懸念しているのは特にエコノミスト系の人に少なくないのだが、いったい何を懸念しているのか正直よくわからないことが多い。「大きな政府」を公務員の数やGNP比における税収の割合から定義できるとすると、日本は世界の中でも明確に「小さな政府」のカテ
日本で最右翼の増税論者である権丈善一氏が、国民負担率と相対的貧困率が綺麗に相関していることを指摘している。 <a href="http://maishuhyouron.cocolog-nifty.com/.shared/image.html?/photos/uncategorized/2010/04/06/kokuminhutan.gif" class="mb"><img alt="Kokuminhutan" title="Kokuminhutan" src="http://maishuhyouron.cocolog-nifty.com/blog/images/2010/04/06/kokuminhutan.gif" width="300" height="191" border="0" /></a> http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/kor
山口二郎氏が社民党についてやや辛口に論評している。 社民党のこれから ―― YamaguchiJiro.com ・・・・・・・・・・ もちろん、民主党のこれからについて、私は楽観していません。鳩山、小沢、菅、岡田の4人について、私は基本政策を共有できると考えています。しかし、次の世代となると、いささか心もとない感じがします。平岡秀夫など、リベラル勢力も存在しますが、いまひとつ迫力不足です。まして、今回誕生した大量の新人議員が何を考えているのかは、見当がつきません。生活第一、平和主義の路線を持続するためには、民主党の中のリベラル勢力がもっと大きくなる必要があります。 そのためにジリ貧の社民党は何をなすべきでしょうか。残念ながら、社民党は東京の比例代表選挙でも議席を取れないまでに衰弱したことを正面から認めてほしいと思います。今回、現状維持ができたのは、民主党との選挙協力のおかげです。ここで私は
【左翼ボコボコ】9・27外国人参政権断固反対!東京デモ http://www.youtube.com/watch?v=tTyANPKCczc&feature=player_embedded 不明を恥じるようだが、日本でこうしたわかりやすい排外主義運動を見るとはつい最近までは思ってもいなかった。この運動が今のところ、ごく一握りの人々による脆弱なものであることは明らかだが、主張している内容そのものは『嫌韓流』やネット上を中心に語られてきたものであり、一定のシンパサイザーを背景にしていることは確かだと思われる。排外主義にシンパシーを抱きやすいのはどのような層なのか、ここで簡単に仮説を構築してみたい。 ・コスモポリタンな富裕層・新中間層 90年代末以降の「構造改革」の中で力を伸ばした富裕層・新中間層は、現在の政治・経済をリードしているので、そもそも国家の制度的な支援や保護に依存する必要性が少なく、
柄にもなくフーコーの本を読んでいたら、「負の所得税」の話が出てきて、それで負の所得税のグロテスクさがなんとなくわかってきた。 前のエントリで、負の所得税が労働インセンティヴを制度的に操作しようとしている点を批判したが、より根本的な問題点は、負の所得税が現行の経済システムそれ自体については全面的に肯定してしまうことである。今の労働・雇用問題の大部分は、あきらかに不適切な規制緩和による過当競争と雇用の流動化にあるのだが、負の所得税論はそれ自体を問題にしようとしない。つまり、経済システムのあり方を問題視するのではなく、そこから必然的に発生するネガティヴな効果への金銭的な手当をすればいいだけ、というわけである。 雇用の流動化は避けられないからベーシックインカムと負の所得税を、というのは理屈としては明快そのものだが、本当にそれでいいのだろうか。流動性を止めることはできないし、またすべきでもないのかも
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