美術史書のAmazonレヴューを眺めていると本文の内容には満足しているけれどカラー図版が少ないことに不満を漏らしている人をよく見かける。百聞は一見に如かずと言われるように、ある作品についていくら言葉を並べても一度それを見る経験とは比べようもない。だからカラー図版を見せながら講釈をしてほしいということだろう。たしかにその気持ちはよくわかる。現状、ネットで検索すれば簡単にその作品の画像が見られるような環境でないこともそうした不満が出てくる背景かもしれない。私が美術と著作権の関係性にこだわる理由もそこにある。 美術史は近代に入ってから西洋で誕生した学問であり、大学での講義では幻燈などを用いて作品の複製を聴講者たちに見せることが初期から行われていた。目の前の光景を忠実に写し取った像を定着させる写真技術も近代に入ってから発明された技術であり、美術史はこの最新の複製技術を学問の基礎として活用したのだっ