「悪辣」であるかないかを区分するまえに 過日、CSで瀬々敬久監督の『護られなかった者たちへ』(2021年)を観直す機会があった。 中山七里のミステリ小説を原作とするこの映画は、ある連続殺人事件の真相をめぐる物語に、東日本大震災がもたらした惨禍や生活保護制度など現実の社会状況を巧みに織り込んだ作品で、僕は2021年度キネマ旬報ベスト・テンの第6位に選出し、「週刊文春シネマ」2021秋号では瀬々監督にインタビュー取材もおこなっている。 そうして近年の力作であることを認めつつ、公開時から引っかかっていた点がある。それは千原せいじ演じる生活保護不正受給者の描写だ。 この国枝という男は、利き腕が不自由で就労できないと虚偽の申請をして保護費を受給し、その金で高級車を購入、それを指摘したケースワーカー円山(清原果耶)の胸ぐらをつかんで恫喝するという、まさしく絵に描いたように悪辣な不正受給者である。 この