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衆院選
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植田かもめの「いま世界にいる本たち」第34回 "Explaining Humans: What Science Can Teach Us About Life, Love and Relationships"(人間の説明書) by Camilla Pang(カミーラ・パン)2020年3月発売 「地球に生まれて5歳になったとき、生まれてくる場所を間違えてしまったと私は思った。」 (It was five years into my life on Earth that I started to think I'd landed in the wrong place.)本書"Explaining Humans"(人間の説明書)は、そんな書き出しから始まる。著者のカミーラ・パンは母親に「人間について説明したマニュアルは無いの?」と尋ねたことがあるという。人間という生き物が見せる行動を説明するガイ
「篠田真貴子が選ぶすごい洋書!」第16回 "The Fearless Organization: Creating Psychological Safety in the Workplace for Learning, Innovation, and Growth" by Amy C. Edmondson Wiley 2018年11月出版本書は、「心理的安全性」(psychological safety) について、研究と事例を豊富に用いながら述べた本です。著者のエイミー・エドモンドソンさんは、ハーバード・ビジネス・スクールで教える心理学者です。彼女は心理的安全性という概念を提唱して博士号を取得し、以来、長年にわたり研究を続けています。 「心理的安全性」という言葉を数年前からよく耳にするようになりました。2015年、グーグル社が「パフォーマンスの高いチームの特徴」を分析し発表しました。その
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第30回 "If Then: How the Simulmatics Corporation Invented the Future"(イフ・ゼン:サイマルマティクス社はいかに未来を創造したか) by Jill Lepore(ジル・ルポール)2020年9月発売予言の歴史は、古くさかのぼる(Prophecy is ancient)。 太古の神秘主義から近現代のコンピュータ計算まで、人は将来を予測することに情熱を傾けてきた。 けれども、自然科学や物理工学に比べると、社会や人間の振る舞いを定量的に分析し予測しようとする試みは比較的歴史が浅い。 本書"If Then"は、1959年に創業して1970年に破産した米国企業サイマルマティクス社をめぐるノンフィクションである。ハーバード大の歴史学者である著者のジル・ルポールは、人々の行動データを分析して投票行動を操作し
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第29回 "Too Much Information: Understanding What You Don't Want to Know"(情報過多:知りたくないことを理解する) by Cass R. Sunstein(キャス・R・サンスティーン)2020年9月発売言うまでもなく、私たちは情報が多い時代を生きている。ベン・パーの2015年の著書『アテンション』で紹介されている研究によれば、1986年の人は一日平均で新聞約40部に相当する情報にさらされていたが、2006年の時点で既に、それが4倍以上の174部相当になっていたという。毎日誰かが玄関のドアの前に新聞を174部置いていくような状態だ。現在はもっと増えているだろう。 本書"Too Much Information"は、ハーバード大学ロースクール教授であり数々の著作を発表しているキャス・サンスティ
太田直樹「未来はつくるもの、という人に勧めたい本」 第6回 『モビリティーズ――移動の社会学』 著:ジョン・アーリ 訳:吉原 直樹、伊藤 嘉高 作品社 2015年発売 "Mobilities" by John Urry Polity 2007年12月出版 『トレイルズ(「道」と歩くことの哲学)』 著:ロバート・ムーア 訳:岩崎晋也 エイアンドエフ 2018年発売 "On Trails: An Exploration" by Robert Moor Simon & Schuster 2016年7月出版 Stay Homeが何ヶ月も続いていたり、移動が制約されている人は多いだろう。自分もそうだ。先日、ワーケーションで訪れた奥会津の地で、里山を歩きながら、風や水の流れを感じ、土地の物語を聞く機会があった。五感に受ける刺激が豊かで、その後しばらくの間、思考の質が明らかに変わった。 歩くことは大切だ
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第27回 "This Could Be Our Future: A Manifesto for a More Generous World"(私たちにありえる未来:より寛容な世界のためのマニフェスト) by Yancey Strickler(ヤンシー・ストリックラー)2019年10月発売これは勇気をくれる良い本だ。現代社会はどこかがおかしいと感じている人も、未来の社会は変えられると信じている人も、具体的にどう変えたらいいかを考えたい人も、本書"This Could Be Our Future"を必読である。 著者のヤンシー・ストリックラーは、元祖クラウドファンディングサービスとも言えるKickstarter社の共同創業者だ。本書は大きく二つのパートから構成されていて、前半では現代の課題を分析し、後半では未来に向けた解決策を提示している。 「金融の最大化」
渡辺裕子「鎌倉暮らしの偏愛洋書棚」 第4回 "Daily Rituals: How Great Minds Make Time, Find Inspiration, and Get to Work" by Mason Currey 2013年出版 『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』 著:メイソン・カリー 訳:金原瑞人、石田文子 フィルムアート社 2014年発売世界人口の約半数が外出制限の対象となるという未曾有の事態の中(2020年4月現在)、どうしたって気になるのは「人は家でどんな風に仕事して、どんな毎日を送っているのか?」ということだ。 いや、こんな事態でなくても、人の食べている朝ごはんとか、お弁当とかを見るのがもともと大好きで、雑誌の特集があればつい買ってしまうし、Instagramでいろいろ見てしまう。 朝起きて、最初の一杯は、コーヒーなのか紅
「篠田真貴子が選ぶすごい洋書!」第12回 "You're Not Listening: What You're Missing and Why It Matters" by Kate Murphy(ケイト・マーフィー) 2020年1月出版1年と少し前、私は次の仕事を決めずに前職を離れました。何人もの友人・知人が連絡をくれて、じっくり語り合う時間を持つことができました。たいてい「次はどうしようと思ってるの?」と尋ねられ、都度、その時の私の考えを話しました。すると相手も、その方が人生の大きな岐路に立ったときのことや、下した大きな決断のことを話してくれたのです。長い付き合いのある相手から、初めて聞かせてもらった話もありました。お互いの深いところに触れあうことができた、この語らいの日々は、宝物のような時間でした。 このような良い対話ができる理由はなんだろう、とその頃から考えています。私が大きな決断
太田直樹「未来はつくるもの、という人に勧めたい本」 第4回 "Boundary Spanning Leadership: Six Practices for Solving Problems, Driving Innovation, and Transforming Organizations" by Chris Ernst, Donna Chrobot-Mason 2010年11月出版 『組織の壁を越えるー「バウンダリー・スパニング」6つの実践』 著:クリス・アーンスト、ドナ・クロボット=メイソン 訳:加藤雅則、三木俊哉 英治出版 2018年12月発売越境人材は得をする「バウンダリー・スパナー(境界の連結者、越境人材)」とは、異なるコミュニティ間の結節点にいる人のことを言う。 (図:太田直樹作成) 図で表すと一目瞭然で、AさんはBさんより、バウンダリー・スパナーの度合いが高い。便利なソフ
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第22回 "Loonshots: How to Nurture the Crazy Ideas That Win Wars, Cure Diseases, and Transform Industries" by Safi Bahcall 2019年3月出版 『LOONSHOTS クレイジーを最高のイノベーションにする』 著:サフィ・バーコール 訳:三木 俊哉 解説:米倉 誠一郎 日経BP社 2020年1月出版前回の記事で昨年のベスト本を紹介したけれど、もし昨年のうちに読んでいたら必ずリストに加えていたであろう一冊。 「ルーンショット」とは著者の造語だ。多くの人に無視されるような、バカげていてクレイジーな(loon)考えでありながら、月に宇宙船を飛ばすくらい(moonshot)野心的で重大なアイデアを指す。 人命を救う薬や、産業を変えてしまうようなテクノ
「篠田真貴子が選ぶすごい洋書!」第11回 "Call Sign Chaos: Learning to Lead" by Jim Mattis(ジェームズ・マティス) 2019年9月出版今回取り上げる”Call Sign Chaos” (コールサインは Chaos(カオス))は、ジェームズ(ジム)・マティスさんの回顧録です。マティスさんは、海兵隊を40年間以上務め上げ、一兵卒から海兵隊トップの大将かつアメリカ中央軍司令官にまでなって2013年に引退。その後、2017年から2019年初めまで2年間、トランプ大統領のもとで国防長官を務めた人物です。 私は軍事に関する知識はなく、たいした興味もありません。また「軍隊的な」風土の組織──たとえば上官の命令は絶対服従で理不尽な目にあっても仕方ない、というような組織は趣味に合わない。個々が自由意志で動いているけど全体の統制も取れてるフラットな組織があるな
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第21回いつもは新刊を中心に「まだ翻訳されていないけれど、こんな面白い本があるよ!」という解説をしているこの連載。今回は番外編として、これまで取り上げた作品を中心に2019年のオススメ本5冊を紹介したい。 後半で詳しく語るけれど、読書というのは、自分の世界を広げる窓であると同時に、世界のノイズから自分を守ってくれるシェルターでもある。2019年に特に印象に残った本はこちら。 劉 慈欣『三体』 Parag Khanna "The Future Is Asian" Malcolm Gladwell "Talking to Strangers" Christopher Wylie "Mindf*ck" カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト』 ついに日本上陸した中国の巨大SFまずは1冊だけフィクションで、中国の劉 慈欣(りゅう・じきん)によるSF小説『三体
倉田幸信 「翻訳者の書斎から」第8回 "Rethinking Consciousness: A Scientific Theory of Subjective Experience" (“意識”再考:主観的経験の科学的仮説) by Michael S.A. Graziano(マイケル・S・A・グラツィアーノ) 2019年9月出版 目を閉じて、リンゴの赤さを思い浮かべてほしい──。 コンピュータで色指定するような数値データではなく、「あの赤さ」としか言いようのない主観的経験として、我々はリンゴの赤さを知っている。光の特定の周波数という物理現象ではなく、生々しい体験として「あの赤さ」を知っている。それは、赤さを主体的に味わう“意識”が我々にあるからだ。 AIやコンピュータがどれだけ発達しても、意識は持てない。どれほど精緻に脳を再現しても、そこに意識は生まれない。なぜなら我々は「意識が生まれる仕
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第20回 "Mindf*ck: Inside Cambridge Analytica’s Plot to Break the World"(マインドファック:世界を壊したケンブリッジ・アナリティカの内幕) by Christopher Wylie(クリストファー・ワイリー) 2019年10月出版ケンブリッジ・アナリティカ事件を覚えているだろうか。同名の政治コンサルティング会社(以下、CA社)が、膨大なFacebook上の個人プロフィールを取得し、ブレグジットやドナルド・トランプを支持する政治広告に利用していたとされるスキャンダルだ。 この事件が世界的な注目を浴びたきっかけは、2018年に当時28歳であった同社の元社員クリストファー・ワイリーが行なった内部告発である。 本書"Mindf*ck"は、ワイリー本人が、自らの生い立ち、CA社の誕生から終焉、内部告
太田直樹「未来はつくるもの、という人に勧めたい本」 第3回 "Designing With and Within Public Organizations" by André Schaminée 2019年3月出版 『行政とデザイン 公共セクターに変化をもたらすデザイン思考の使い方』 著:アンドレ・シャミネー 訳:白川部君江 ビー・エヌ・エヌ新社 2019年7月発売”ほとんどの組織では、あることをしようとすると、たった5分で「それは無理だ」と言ってくる人が3人いる。” ”ファシリテーターが、プロセスをあらかじめ決められた結果に導いてくれると期待してはならない。” ”自分たちに与えられた任務は、素晴らしいソリューションを考え出すことだった。だがクライアントは、共創的なプロセスを構築してもらいたいとは考えてもいなかった。”著者は、行政組織を中心にした3種類の読者を想定しているが、僕は「未来をつ
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第19回 "The Warehouse"(倉庫) by Rob Hart(ロブ・ハート) 2019年8月出版Amazonをモデルにした、ディストピア小説。 ロブ・ハートによる本書"The Warehouse"をひと言で紹介するとそんな本である。舞台は近未来のアメリカ。気候変動の影響で沿岸の都市が浸水した世界では、ドローンによる配送技術を政府から承認されたことをきっかけに発展した超巨大企業「クラウド」が、あらゆる産業を支配している。 生活を丸抱えする企業 本作の主な登場人物は3人。かつて小さな会社を起業したが、クラウドによって廃業に追い込まれて職を失い、皮肉にもクラウドに就職する事になったパクストン。企業スパイとしてクラウドに潜入した女性のジニア。そして、クラウドの創業者であり、膵臓ガンによって余命宣告を受けている大富豪ギブソン・ウェルズ(ちなみにこの病気
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第18回 "Talking to Strangers: What We Should Know about the People We Don't Know" (他人との会話:見知らぬ人について私たちが知っておくべきこと) by Malcolm Gladwell(マルコム・グラッドウェル) 2019年9月出版 *日本語版は2020年4月刊行予定 光文社マルコム・グラッドウェルは、現代の米国を代表するジャーナリストのひとりだ。 『ティッピング・ポイント』や『第1感』などのヒット作で知られる彼の最新作が、今回紹介する本書"Talking to Strangers"である。本作のテーマは「見知らぬ他人と話すことがなぜ難しいか」だ。 グラッドウェルの著作の魅力は、一見無関係に見える豊富な事例の中に共通する法則を発見して、現実を見る新たな視点を教えてくれることだと
岩佐文夫「キッチンと書斎を行き来する翻訳書」第2回 “More Work For Mother” by Ruth Schwartz Cowan 1983年出版 『お母さんは忙しくなるばかり』 著:ルース・シュウォーツ コーワン 訳:高橋 雄造 法政大学出版局 2010年10月出版 工業化が進んで楽になったのは男性ばかり?先日、妻が一週間の旅行に出かけたので束の間の一人暮らしだった。以前であれば、できるだけ会食の予定を入れていたのだが、今回は家にいて極力家事をやってみることにした。買い物、食事づくり、洗濯、ゴミ出し、掃除はちょっと。やってみて改めて、日々やることが多いのに驚く。朝起きて家を出るまで、頭の中には無数のチェックリストが浮かび、家に戻ったらソファに座る前に片づけることが諸々ある。 本書『お母さんは忙しくなるばかり』は、1800年代の半ばから1980年代までの米国における家事労働の
山崎繭加の「華道家のアトリエから」第3回 “Bad Blood: Secrets and Lies in a Silicon Valley Startup” (悪い血:シリコンバレーベンチャーの秘密) by John Carreyrou (ジョン・キャリールー) 2018年5月出版 *日本語版は集英社より刊行予定 「そうなるまで、そうであるふりをせよ」“Fake it, until you make it.”は、「そうなるまで、そうであるふりをせよ」という意味の言葉だ。できているふりをしているうちに本当にできるようになる、だからできるようになるまで待たずに今からやればよい、とポジティブな意味合いで使われることが多い。 中でもシリコンバレーにはFake-it-until-you-make-itの文化が根強くある。起業家が今の時点ではとても実現しそうにない、だが世界を変えうるというビジョン
指揮者・伊藤玲阿奈「ニューヨークの書斎から」第3回 “Discours de la Méthode” by René Descartes 『方法序説』(岩波文庫) 著:ルネ・デカルト 訳:谷川多佳子 岩波書店 1997年7月時は16~17世紀、日本では戦国時代から江戸時代初期にかけてのことである。 1510年(論文出版は1543年)にコペルニクスが地動説を初めて公にしてからというもの、ヨーロッパ人がこの世界の仕組みについて再考を迫られたのは改めて説明するまでもないが、それは知識を獲得するという行為、すなわち学問の方法においても同じであった。 それまでは天動説によって、神による天地創造の過程で最後に創られた人間は、他のあらゆる被創造物の魂よりも上位であり、かつ宇宙の中心である地球に存在することから、特権的な精神と位置をもって世界を見渡せるものとされていた。つまり、人間がこの世界に関する客観的
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第16回 "Trillion Dollar Coach: The Leadership Playbook of Silicon Valley's Bill Campbell" (1兆ドルのコーチ:ビル・キャンベルのリーダーシップ戦略書) by Eric Schmidt(エリック・シュミット)他 2019年4月出版 スティーブ・ジョブス、エリック・シュミット、ラリー・ペイジ、シェリル・サンドバーグ……。シリコンバレーの著名な経営者たちには、実は共通の「コーチ」がいた。 『ハウ・グーグル・ワークス』を著したグーグル会長のエリック・シュミットらのチームによる本書は、フォーチュン誌が「シリコンバレー最大の秘密」と呼んだという知られざる伝説のコーチ、ビル・キャンベルについての本である。 2016年に亡くなった彼を知る80名以上のリーダーたちへのインタビューを基に、
「篠田真貴子が選ぶすごい洋書!」第8回 “The Moment of Lift” by Melinda Gates 2019年4月出版 『いま、翔び立つとき』 著: メリンダ・ゲイツ 訳:久保 陽子 光文社 2019年11月19日発売 マイクロソフト社創業者にして世界有数の大富豪のビル・ゲイツさんは、2000年に慈善団体を設立しました。財団の名前はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団。メリンダさんはビル・ゲイツさんの妻です。設立当初、財団名を知って、私は「ふーん、奥さんの名前も入れるのか。税務対策かな……」とぼんやり思っていました。その後、TEDにご夫妻で登壇された動画を見て、初めて彼女の人物像に触れ、「メリンダさん、素晴らしい! 財団名も、ただ名前を冠してるだけじゃなかったのね」と印象を改めました。そして先日、メリンダさんが初めての著書を出版したとSNSで知り、どれどれ……と興味本位でオ
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第15回 "Upheaval: Turning Points for Nations in Crisis" (大変動:危機にある国家のターニングポイント) by Jared Diamond(ジャレド・ダイアモンド) 2019年5月出版ピュリッツァー賞を受賞した大名著『銃・病原菌・鉄』。その著者であるジャレド・ダイアモンドの新作が、本書"Upheaval"(大変動)だ。ビル・ゲイツも「2019年の夏のオススメ本5冊」に選出している。 ……が、正直言って個人的には、これは失敗作だと思う。ダメな本がダメな理由を考えるのも読書の楽しみのひとつなので、この記事では筆者がそう感じた理由を書く。 個人の危機と国家の危機まず、どんな本であるかをざっくり紹介する。 本書は「危機」に瀕した国についてのケーススタディだ。取り上げられている事例はすべて近現代の19世紀以降の事例
山崎繭加の「華道家のアトリエから」第2回 “Educated: A Memoir” by Tara Westover (タラ・ウェストオーバー) 2018年2月出版New York TimesのベストセラーのリストをチェックしKindleで買って読む、ということをたまにしている。リストに数十週間以上ランクインしている本は、やはりひと味違う。この1年ぐらいだと、ミシェル・オバマ夫人の回想録“Becoming”、野生動物の著名な研究者デリア・オーウェンズが60代後半にして初めて書いた小説“Where the Crawdads Sing”(『ザリガニが鳴くところで』)あたりが不動のランクインをしており、どちらもあらゆることをなかったことにして読みふけってしまう面白さであった。 タラ・ウェストオーバーの回想録“Educated”も、その方式で知った本である。2018年2月出版なのに、2019年5
「篠田真貴子が選ぶすごい洋書!」第7回 “Atomic Habits” by James Clear 2018年10月出版 『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 』 著: ジェームズ・クリアー 訳:牛原 眞弓 パンローリング 2019年10月12日発売 Atomic は「原子の」、またそれが転じて「ごく小さな」といった意味の単語です。本書タイトルのAtomic Habitsは「ごくごく小さな習慣」という意味になりますね。良い習慣を身につけ、好ましくない習慣を断ち切るためのアプローチを解説した本で、この半年ほどアメリカのベストセラー上位にランクインし続けています。 習慣に関する本、たくさんありますよね。私は毎日決まったことを行うこと、新たな習慣を身につけることにかなり苦手意識がありまして、こういう本は避けてきました。気まぐれにちょっと読んでみてもストイックすぎる感じがして、途中で
指揮者・伊藤玲阿奈「ニューヨークの書斎から」第2回 “Flowers for Algernon” by Daniel Keyes 2012年 『アルジャーノンに花束を』 著:ダニエル・キイス 訳:小尾芙佐 早川書房 ハヤカワ文庫 (新版) 2015年出版 知的障がいを持つ主人公チャーリイ・ゴードンの数奇な物語を描いた『アルジャーノンに花束を』(以下、『アルジャーノン』)は、一般にはSF小説の金字塔として知られている。寡作のアメリカ人作家ダニエル・キイスによって、1959年にまず中編としてSF雑誌に発表され、7年後に長編に改作された。 最初に、これから読まれる方に支障が生じない程度で、ストーリーの発端を簡単に紹介しておこう。 32歳になっても幼児並みの知能しかないチャーリイ・ゴードンは、他人を疑うことを知らず、常に笑顔を振りまいて、誰にでも親切であろうとする。そんな彼に夢のような話が舞い込ん
翻訳者自らが語る! おすすめ翻訳書の魅力 第7回 " Factfulness " by Hans Rosling, Ola Rosling, Anna Rosling Rönnlund 2018年4月出版 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』 著:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 訳:上杉 周作、関 美和 日経BP社、2019年1月11日発売2019年1月の発売当初から大きな話題となり、30万部以上を売り上げるベストセラーとなった『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』。「翻訳書ときどき洋書」では、2018年6月に植田かもめさん、同年11月に共同翻訳者の関美和さんが同書を紹介するなど、いち早く注目してきました。 同書を関さんとともに訳した上杉周作さんはシリコンバレー在住のエンジニアで、今回が初の翻訳書となります。そんな上杉さんを迎え、
倉田幸信 「翻訳者の書斎から」第5回 "The Coddling of the American Mind" ( 甘やかされるアメリカン・マインド ) by Greg Lukianoff, Jonathan Haidt (グレッグ・ルキアノフ、ジョナサン・ハイト) 2018年9月出版 いきなり私事で恐縮だが、私は主夫として2人の子供を育てたことがある。1人目の長男のときは、屋外だろうが室内だろうが、一度でも床に落ちたおしゃぶりはすべて煮沸消毒していた。バイキンが怖かったからだ。だが2人目の長女のときは、多少の泥がついたおしゃぶりでも、適当に服でぬぐってそのままくわえさせていた。赤ちゃんはけっこう頑丈だとわかったので、面倒くさいことはしなくなったのだ。 その後、医学の世界で“幼少期の環境があまりに清潔だと免疫力が低くなる”とする「衛生仮説」の考え方が広まっていることを知り、我が意を得たりと思
植田かもめの「いま世界にいる本たち」第10回 "How to Change Your Mind: What the New Science of Psychedelics Teaches Us About Consciousness, Dying, Addiction, Depression, and Transcendence" (心を変える方法:意識、死、依存、うつ、超越体験について幻覚剤の新しい科学が教えてくれること) by Michael Pollan 2018年5月出版 『幻覚剤は役に立つのか』 著:マイケル・ポーラン 訳:宮崎 真紀 亜紀書房 2020年5月26日発売シロシビンという化学物質をご存知だろうか。 もし知らなくても、マジックマッシュルームに含まれる成分だと言えばイメージがわくかもしれない。シロシビンやLSDなどの幻覚剤は日本でも違法薬物であるが、実は米国や欧州で、終
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