「なぁ、うちの社員は凄いんやぞ」 親父がそう自慢してくる度に、僕は心の中で「こんな地方の小さい会社に凄いやつがいるわけないやん」と小馬鹿にしてました。 親父は石鹸会社の社長です。社員数名。典型的な地方の零細メーカー。社長といっても、親父自身が製造もやるし営業もやる。いつも作業着を着て、油でどろどろになるまで働いてました。 (20代の頃の親父) 僕にはその姿はものすごく格好悪く見えたんです。そういう姿に憧れて、父と同じ道を歩みたい、と思う人もいるのかもしれませんが、僕は全く逆でした。周りの友達の所謂「サラリーマン」のお父さんに憧れがありました。スーツを着て出社していくお父さんが羨ましかったんです。 (昭和50年頃 コインランドリー用洗剤) 住まいと工場が同じ場所にあったということもありますが、親父はいつも目の前の工場にいて、石鹸を焚いたり、箱詰めしたり、工場の修理に溶接したり、鉄を切ったりし