「蛙(かえる)鳴く蝉(せみ)鳴く和尚お経読む」(2日付朝日川柳)。選者の注は「世の中こともなし」だが、そうではあるまい。民族鎮魂の重い一連の行事が終わり、ほっと一息つく盛夏の静けさを伝えているのだ。 そして、8月の後半は心身静養の時であろう。夏休みの楽しみは好きな本を読めることだ。別荘も避暑地もないから入院しての人間ドックなどが格好の納涼読書タイムとなる。日頃は“実務書”が優先する。読売の加藤隆則記者の「『反日』中国の真実」とか朝日の牧野愛博(よしひろ)記者の「北朝鮮秘録」などである。しかし“いい小説”を読みたい渇望は常にある。日曜日各紙の書評欄は大好物である。 以前、作家の赤坂真理氏が「終戦後の有名な写真でマッカーサーの隣の日本人は誰? と聞く若者がいるんですよ」と語っていたのに驚愕(きょうがく)して彼女の「東京プリズン」を読んだ。米国の片田舎に留学した16歳の女の子が「開戦と終戦を宣言