今週のメルマガにも書いたが、「イスラム国も悪いが安倍首相も悪い」という人が多いのには驚いた。代表的なのは、朝日新聞社のウェブサイトに出た小林正弥氏の「人質事件、首相は『和』の心を取り戻して発信せよ」という記事だ。 彼は「もともと日本は、聖徳太子が17条の憲法で『和を以て貴しとなす』と定めたとされているように、国号を『大和の国』としており、『和』の心を文化的に大事にしてきた。[…]戦後日本は再び『和』の心を取り戻し、平和憲法のもとで、平和主義を貫き、海外の戦争には軍事的に加わらない方針を貫いてきた」という。 これがサンデルの訳者で、政治思想史の専門家を自称しているのだから、丸山眞男も嘆くだろう。彼はこうした「和の心」こそ儒教の残した負の遺産だと論じたからだ。彼や山本七平が高く評価したのは貞永式目のコモンローだったが、本書はその後の武家法の変遷を追い、喧嘩両成敗という日本独特の規範が成立する過