新作小説をiPad向けに配信すると発表する作家の京極夏彦さん(左)と、野間省伸副社長=5月20日、東京・音羽の講談社 「電子書籍元年」といわれた今年は、著名作家が小説の電子版を次々と投入し、出版社をはじめ印刷業界、日本の電機メーカーまで相次いで電子書籍事業に進出して関連ニュースが絶えなかった。ただ、主な電子書籍端末が出そろったのは年末になってから。関係者から「電子書籍バブル」との声が出始めているように、話題先行の1年だった感は否めない。電子書籍に揺れた出版界の状況を概観してみる。(溝上健良、海老沢類) ◆iPadで号砲 電子書籍が一気に注目を集めた背景には、米アップル社の多機能情報端末「iPad(アイパッド)」が5月に国内で発売されたことが大きい。この直前、講談社は作家の京極夏彦さんが、新作小説の電子版を出すことを発表。国内大手出版社がiPad向けの新刊配信に乗り出すのは初めてだった。発表