世界中の研究者が成果を上げることにしのぎを削っている人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究を、「落ち着いて」考える研究会が、来月発足する。がん患者を精神的に支える「がん哲学外来」を開設した樋野興夫(ひの・おきお)・順天堂大教授(病理・腫瘍<しゅよう>学)が世話人代表に就任、iPS細胞を発明した山中伸弥・京都大教授が顧問を務める。 会の名称は「iPS細胞を用いたがん研究について落ち着いて考える会」。樋野教授が今春、山中教授側に会の創設を提案した。学者の世界は「世界初」を競う競争主義だけに、異例の存在になりそうだ。 樋野教授は08年から、がん患者と家族、医療関係者が語り合う「がん哲学外来」を開いている。治療の成否だけではなく、がん患者の悩みに耳を傾け、生きる本質を考える試みに、全国から注目が集まる。樋野教授は、競争激化でiPS細胞研究が目先の成果を追いがちな現状を憂慮。「iPS細胞研究もがん研