第二次世界大戦勃発直後にユーゴスラビアで生まれ、晩年は家族でロマ音楽のバンドを結成して活躍した著者のミショ。 本書は「ジプシー」と呼ばれ、差別と排除を受けながら20世紀を逞(たくま)しく生き抜いた、彼の家族の物語だ。 一族がたどった道のりは中央ヨーロッパの激動の歴史そのものだ。ミショの出生直後にユダヤ人とロマに対する迫害が始まり、逃げた先で連行された父親は奇跡的に銃殺から逃れる。しかし戦禍を乗りきった父は、その後彼の人望と商才を嫉(ねた)むロマからあっさりと刺殺されてしまう。成長したミショは、ヨーロッパ中を転々と移動しながら将来の妻と出会い、やがてはウィーンに定住する…。 ミショは自分や家族が生きるために犯した徴兵拒否、密出入国、不法滞在、無免許運転、窃盗、嘘(うそ)八百を並べた占い、ぼったくり商売などの違法行為を、すべて赤裸々に告白する。迫害も放浪も、ロマ同士の抗争も美しい妻との出会いも