80 ヘテロトピアとしての端島/軍艦島 –––「負の記憶」をめぐる言説の配置をてがかりに––– Hashima/Battleship-Island as a heterotopia ––– By reference to the disposition of discourses on its “negative memories” 葉柳 和則(HAYANAGI, Kazunori) 長崎大学 はじめに 長崎市の中心部から南西約 20 ㎞の海上に、端島という名の小さな島が浮かんでいる。 面積 0.06km2 のこの島は明治期から 1974 年まで、三菱系企業1 が所有する海底炭鉱として 栄えていた。近隣の高島炭鉱とともに良質の燃料炭を産出することで知られ、近代日本の 下部構造の一端を担っていた。島影が戦艦「土佐」に似ていたことから、一般には「軍艦 島」という通称で知られている。1974 年