国立民族学博物館研究報告35(3): 399–470 (2011) 399 捕鯨に関する文化人類学的研究における 最近の動向について 岸 上 伸 啓* Recent Trends in Cultural Anthropological Studies on Whaling Nobuhiro Kishigami 文化人類学者は,さまざまな時代や地域,文化における人類とクジラの諸関 係を研究してきた。捕鯨の文化人類学は,基礎的な調査と応用的な調査からな るが,研究者がいかに現代世界と関わりを持っているかを表明することができ るフォーラム(場)である。また,研究者は現代の捕鯨を研究することによっ てグローバル化する世界システムのいくつかの様相を解明し,理解することが できる。本稿において筆者は捕鯨についての主要な文化人類学研究およびそれ らに関連する調査動向や特徴,諸問題について紹介し,検討